詩 - 詩人｜720

人は好きだが悩ましい
虫は好かんが単純だ
たまに虫を見ていたくなる
美しい作品のように思われてくる

残暑のころ
夏をさがしに行きたくなる
その残り香をかぎたくなる
ついつい
田舎の川原へ向かっている
夏草のしげみを割って
石の合間に落ちつくだろう
最後の入道雲を眺めながら
涼しい流音に
心地よい夕暮れを感じる

秋は
現実が快適で
わずらうことの少ないので
何をするのも容易

空想にふけろう

秋の朝
ふだん衝立のように
黒黒と扁平な山かげが
霧をまとえば
どっしりと迫ってくる
一枚絵のトリックがとけて
それぞれの面様が顕になる

何もかもが
ようやく始まったかのように
思われてくる

詩