メンタルヘルス不調・疾患名の分かりにくさ、について②

以前の記事では、精神疾患(メンタルヘルス疾患)・メンタルヘルス不調の分かりにくさについて、重複が多いことと、状態名での呼称が多いことを挙げました。

今回は、診断プロセスにもつながるのですが、メンタルヘルス不調・疾患名の分かりにくさ、について疾患特異的な症状が少ない事について解説していきます。

「特異性」という医学的概念があります。
これは、あらゆる医学分野(ヘルスケア)で重要な概念なので解説しておきますが、症状や検査結果と診断が1対1の場合、特異的な症状・検査値といえるわけです。

たとえば、熱が出ている、だけですと、疾患が絞り込めません。
感染症なのか、自己免疫疾患なのか、癌によって免疫力が下がっているのか、はたまた、熱中症なのか、といった具合です。もちろん、感染症も山ほどありますよね。
このように、発熱、というのは疾患特異的な症状ではなく、「非特異的」な症状といえます。
一方で、新型コロナウイルス感染症(COVID19)の抗原検査・PCR検査は当然ながら特異性が高く、その確率(特異度)も90%以上のものとなりますので、診断の決め手となりえます。

気持ちが落ち込みます、不安です、などといった内容は、身体疾患で言うと、熱が出ています、といったように疾患に非特異的な症状なのです。うつについての解説記事も読んでもらえるとお分かりいただけるかと思います。

ややこしいことに、精神症状の殆どが、疾患に対して「非特異的」であることです。上記の通り、「うつ」症状もその一つです(過去記事参照)。

ただし、Aという症状とBという症状が併存すると、Cという診断である可能性が高い、といったデータは膨大な蓄積がなされています。それらのデータに基づく知見によって、複数の症状の有無から、精神疾患(メンタルヘルス疾患)・メンタルヘルス不調の大まかなカテゴリーを絞り込んでいく作業を専門医は行っているわけです。

また、精神症状はあからさまに周囲から見て取れる症状もありますが、言葉にして出してもらえないと分からないものも多いです。例えば、その方が「死にたい=希死念慮」と思っていても(主観的症状)、その思いを言葉や行動に出さないと、周囲は分かりません(客観的症状)。

そして、多くの身体疾患と異なり、主観的症状が診断上重要となります。
一方で、ご本人は複数の症状や悩み事に困られているのですが、診断上の優先順位と困りごとの優先順位が一致しません。

診断上、有用な症状 ≠ 本人にとって深い悩み、辛いこと

したがって、精神科専門医が、診断プロセスでお聞きする内容と、ご本人のニーズがマッチしないことが生じてくるかと思います。

一方で、臨床心理士/公認心理師は心理学的評価(アセスメント)を行いはしますが、医学的診断は行えません。それもあり、本来の「本人にとって深い悩み、辛いこと」にフォーカスして、じっくりとお話を聞くことになります。

以上、診断プロセスにもつながる話なのですが、精神疾患(メンタルヘルス疾患)・メンタルヘルス不調の分かりにくさについて、精神症状の特異度が低い、という観点から解説しました。

また、コメントいただければ、解説記事に活かしていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

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