業界レポート 道路貨物運送業

今回は弊社独自で行っている業界レポート「道路貨物運送業」を取り上げたいと思います♪
業界レポートとは、リスクモンスターの心臓部であり、格付などの与信指標を生産・保守を行う「データ工場」が集計・分析しており、業界ごとの市場概要や業界動向、与信管理のポイントなどをまとめたレポートです。

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(1) 市場概要

① 営業種目
‣ 一般貨物自動車運送業     ‣ 特定貨物自動車運送業
‣ 貨物軽自動車運送業      ‣ 集配利用運送業
‣ その他の道路貨物運送業

② 業界規模
総売上高 32兆5,232億円
上場企業数 30社
非上場企業数 43,363社

③ 業界サマリー
道路貨物運送業は、「トラック運送業」と「宅配便業」に大別される。ヒト・モノの運送を担っている自動車運送事業(トラック事業、バス事業、タクシー事業など)は、日本経済および地域の移動手段を支える重要な社会基盤産業である。

道路貨物運送業においても、生産者、製造業者、卸売・小売業者、消費者など様々な利害関係者が関わっている。

‣ トラック運送業
国内貨物輸送のうちトンベースで約90%、トンキロベース(貨物重量に輸送距離を乗じたもの)で約50%を占めている。1990年に施行された物流二法によって参入障壁は緩和されている。

日本通運などの大手総合物流企業が存在する一方、約99%が中小・零細規模の企業である。道路貨物運送業者は、荷主に対して立場が弱い傾向にあるため、適正な運賃を収受しにくく、荷主都合の待ち時間を押し付けられるなど、厳しい環境を強いられている。

また、トラック運送能力の約60%は未使用であり、一つの運行で約2時間の手持ち時間が発生するなど、設備や人員の稼働に無駄が生じている課題もある。

‣ 宅配便業
ヤマト運輸(ヤマトホールディングス)と佐川急便(SGホールディングス)、日本郵便の3社で、90%超のシェアを占めており、寡占状態である。

(業界の特徴)
‣ 公共の道路を使用して事業を展開しており、事故の影響によっては事業継続に関わるため、安全が最重要課題となる。国の行政処分も強化される傾向にあり、コンプライアンスの徹底が求められる業界である。
‣ 典型的な労働集約型産業であり、運送コストのうち人件費が約40%を占める。
‣ 若年層の入職率の減少が目立ち、高齢層の割合が高い業界である。就業者構造をみると、40歳以上が約75%を占め、女性比率はわずか数%程度である。質が高く若い労働力の確保が大きな課題といえる。
‣ 業績は燃料価格の変動に大きく影響を受けやすい。

(2) ビジネスモデル

「トラック運送業」は、荷主(多くは企業)から貨物を受取り、トラックなどの自動車を使用して目的地まで運送する事業である。

「宅配便業」は、消費者や企業などの不特定多数の荷主から小荷物を1個単位で受取り、地域別料金体系など、利用しやすい料金設定で運送する点に特徴がある。

道路貨物運送業の一般的なビジネスモデルとしては、運送業者が荷主から貨物運送依頼および運賃の支払いを受け、運送業者自らあるいは運送委託契約を締結しているトラック運送会社に運送を委託し、集荷店からトラックなどによって配達先に荷物を届けるものである。

中間に位置する幹線輸送は、輸送形態によって異なり、トラックなどであれば集荷店から発ターミナルまでの配送や、発トラックターミナルから着トラックターミナルまでの配送、着ターミナルから配達店までの配送となる。

(3) 業界動向

宅配便業界では、近年EC(ネット通販)の普及によって荷物数が増加傾向にある中、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によるネット通販特需を背景に荷物数が急増し、活況を呈している。

ヤマト運輸では、「宅配クライシス」と呼ばれた2017年の荷物の総量規制と配送料の値上げ方針から、格安な配送サービスの提供や配送料の実質値下げへの転換を実施するなど、荷主の囲い込みを図っている一方で、EC荷物の運送については、外部の配送業者への委託と自社配送とのバランスを取りながら進めている。

EC最大手Amazonからの運送委託で急成長するデリバリープロバイダーとしての中小運送事業者は、大手宅配便各社の顧客から新たに荷物を獲得している。また、Amazonから個人ドライバーへ直接委託する運用も拡大している。

日本郵便では、楽天グループとの連携を強化、共同で物流会社を設立し、物流センターの共同運営などを推進している。

トラック運送業界では、製造業などの海外移転・進出が進み、国内市場において大幅な成長が見込めない状況の中、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響を受け貨物輸送量(トンキロ)は大幅に減少している。

荷主企業の物流戦略・構築・運用を一括して受注する「3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)」 に注力する一方、幹線輸送や主要都市部での宅配サービスへの進出・強化にも乗り出している。

(4) 財務指標分析

(安全性分析)
道路貨物運送業は、車両、荷役機械などの設備への投資が発生する業種であるため、固定比率は138.0%と高い傾向にある。運輸業・郵便業全体でみても156.0%と同様の傾向がみられる。

しかしながら、自己資本比率は35.6%と概ね安全な水準であり、設備投資の資金は、ある程度自己資金で賄えている様子がうかがえる。

(収益性分析)
運送業者が飽和状態であり、過当競争下にある結果、荷主との力関係で劣後し、適正な運賃が収受されにくい状況となっている。ドライバーの人件費や燃料費、高速道路料金などの運送原価を運賃に転嫁しにくい課題を抱えているため、収益性は低い水準にある。

売上高総利益率は27.5%と倉庫業を4.2ポイント下回っていることからも、厳しい収益状況が読み取れる。また、車両の減価償却費が生じるため、売上高営業利益率は1.6%と厳しい水準である。

近年では、必要なドライバー数の確保が難しいことや、時間外労働の拡大によってドライバー人件費が増加する傾向にあり、収益を圧迫する要因にもなっている。人件費や燃料費が高騰した場合でも、収益を獲得できる体制を構築すべきである。

(効率性分析)
総資本回転率は、1.3回と倉庫業の約2倍の水準である。車両設備を効率よく稼働させることが収益獲得のポイントとなり、取扱量が変化しても固定資産の稼働に変化が乏しい倉庫業との差が出ている。

道路貨物運送業においては、車両などの設備投資が嵩みやすいが、投資効果を計る総資本回転率が平均以上であれば、投資効果が得られているといえる。

(5) 与信限度額の考え方

■与信限度額の設定方法
与信限度額とは、取引において自社が許容する信用供与の最大額であり、いかなる時点でも超過してはならないものである。与信限度額は、「必要かつ安全な範囲内」で設定する必要がある。必要な限度額は、取引実態を基に算出し、安全な限度額は、自社の財務体力や取引先の信用力(格付)を基に算出する。

●与信金額(必要な限度額)
実際の取引において、必要となる与信金額。道路貨物運送業に対して発生する与信取引としては、車両、荷役機械など販売の「売買取引」や、貨物運送にかかる自社商品の「寄託取引」、輸送時における貨物の破損や散逸などの「輸送リスク」が挙げられる。

継続的売買取引における与信金額 = 月間の取引金額 × 回収サイト
寄託取引における与信金額 = 寄託物の簿価

取引を行う際には、自社の取引条件が斯業種の平均水準から大きく乖離していないか、確認すべきである。買掛債務回転期間の業界標準値が「斯業種の平均的な支払サイト」を表しているため、「月間の取引金額×買掛債務回転期間の業界標準値」によって、与信金額の基準とすることができる。

 道路貨物運送業に対する平均的な与信金額 = 月間の取引金額 × 0.8か月

●基本許容金額(安全な限度額)
基本許容金額は、自社の財務体力がどの程度の貸倒れまで耐えうるかを予め計ることで、自社の体力を超える取引に対する牽制機能を働かせるものであり、自社の財務体力と取引先の信用力を考慮して算出する。

一例として、自社の自己資本額に対して、取引先の信用力(格付)に応じた割合を安全な限度額とする方法がある。 

 基本許容金額 = 自社の自己資本額 × 信用力に応じた割合
(例 : A格10%、B格5%、C格3%、D格0.5%、E格0.3%、F格0%)

●回収可能性
斯業種企業に対して、こん包設備や輸送用車など設備投資用の販売を行う場合、スポット取引となるため、代金の回収可能性が与信判断に直結する。回収可能性は、以下の観点から調査する。

〇一括払いの場合
‣ 現預金保有:代金を一括で支払うことができる現預金を有しているか
‣ 資金調達:銀行からの借入見込みなど、手元現金以外の支払原資の確認

〇分割払いの場合
‣ 資金繰り表:自社への支払時期に支払や調達の計画が組まれているか、資金繰りの実績と予定を確認
‣ 資金調達:段階的に資金調達を行う際には銀行からの調達の実現性を確認

(6) 与信管理のポイント

典型的な労働集約型産業である道路貨物運送業においては、ドライバーおよび保有車両の効率的な運行管理が求められる。

荷主の確保および適正な運賃の収受が、収益を安定して獲得するためのポイントとなるため、人件費や燃料費、高速道路料金などの運送原価を吸収できる適切な運賃設定が必要となる。また燃料価格の変動が業績に大きな影響を与えるため、燃料価格の動向も把握したい。

車両・荷役機械などへの投資が多額になりやすいことから、固定比率あるいは固定長期適合率が高い傾向にある。事業規模に適した車両台数に対して、投資過多になっていないか、投資した設備が遊休化していないか、などもチェックすべきである。

貨物トラックなどの車両にも脱炭素化・脱エンジンを迫られており、今後は自動車メーカーで開発が進められている電動トラックなどへの移行も課題となり得る。

車両の耐用年数は3~5年が多く、投下設備の稼働が予定を下回ると、見込んでいた収益を獲得できず、売上に占める減価償却費の割合が増加する。設備稼働率の観点から、収益状況の分析を行うことも有効である。

また、車両などの資産において、減価償却不足が生じていることも多いため、分析の際には、収益や資産価値の実態が正しく表わされているかにも注意する。

運行管理面では、荷物の積載率や実車率、実働率などの運送効率を向上させているか、また、荷主都合の待ち時間への対応を適切に行っているかが鍵となる。

ドライバーの高齢化が進み、慢性的な人手不足の状況にあるため、若年層の優秀なドライバーの獲得、維持、育成ができているかが、将来の経営を左右するポイントとなる。

安全運転管理、運行前の体調管理、飲酒・過労運転・過重労働への対応などコンプライアンスの徹底も斯業種においては重要なポイントであり、近年では特に遵守が求められる傾向にある。

加えて、2024年には働き方改革によって斯業種にも時間外労働時間の上限が課されることから、コンプライアンスを遵守した経営が求められる。

違反時の行政処分(指名停止処分、業務改善命令など)による業務の一時停止や罰金などの短期的な影響だけでなく、対外信用力の悪化によって、経営に大きな影響を与える恐れもあるため、取引先に行政処分情報が出ていないか、情報収集に努めることが肝要である。

【参考資料】
中小企業庁:「令和3年中小企業実態基本調査報告書」
国土交通省:「2020年度宅配便取扱個数の推移」、「自動車輸送統計年報」
業種別審査事典(一般社団法人 金融財政事情研究会)

本日の内容は以上になります。
次回もお楽しみにでは

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業界レポート 道路貨物運送業 2023.01

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