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今回は弊社独自で行っている業界レポート「化学工業」を取り上げたいと思います♪
業界レポートとは、リスクモンスターの心臓部であり、格付などの与信指標を生産・保守を行う「データ工場」が集計・分析しており、業界ごとの市場概要や業界動向、与信管理のポイントなどをまとめたレポートです。

こんにちは、佐々木正人です!
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※2022年9月公開「業界レポート 化学工業」

(1)市場概要

① 営業種目
‣ 化学肥料製造業     ‣ 医薬品製造業
‣ 無機化学工業製品製造業 ‣ その他の化学工業
‣ 有機化学工業製品製造業 ‣ 化粧品・歯磨・その他の化粧用調整品製造業
‣ 油脂加工製品・石けん・合成洗剤・界面活性剤・塗料製造業

② 業界規模
41兆6,868億円
上場企業数 178社
非上場企業数 4,036社

③ 業界サマリー
化学工業は、石油や天然ガスなどの原料に化学反応を加えて、より価値の高い素材や製品を製造する業界である。化学工業製品は、主に基礎製品、中間製品、最終製品に分けられており、基礎製品が中間製品に加工され、中間製品を用いて最終製品が製造される。化学工業の製品は、多くが同じ化学工業の材料として使用される。
 
化学工業製品別の業種は以下の通りである。
基礎製品:石炭乾溜工業、電解・電炉工業、ナフサ分解工業など
中間製品:アンモニア合成工業、ソーダ工業、石油系合成化学工業、硫酸工業など
最終製品:プラスチック・合成ゴム工業など

化学工業製品は、ナフサなどを原料として製造されるエチレンやプロピレンなどの素材、素材を化学的に加工して製造されるプラスチックや化学繊維、さらに化学繊維を加工して製造される自動車・電化製品・住宅素材などの部品となる部材や素材の総称である。様々な業界で利用される裾野が広い製品であるため、他の業界との関連性が高い。

(業界の特徴)
‣ 化学工業製品の出荷額は、製造業の中で自動車を中心とする輸送用機械器具製造業に次ぐ第2位。
‣ 付加価値の高い素材や製品を製造しているため、利益率の業界平均は製造業の中で最上位。
‣ 従業員のうち研究者の割合が約1割を超え、多額の研究開発費を要する。
‣ 製造業全体の中で設備投資額が2番目に多い資本集約型の装置産業である。
‣ 出荷額全体の3割超が有機化学工業製品であり、大手企業では石油化学製品の売上割合が高い。

(2)ビジネスモデル

ナフサを原料としてエチレンやプロピレンなどの基礎製品が製造され、基礎製品を原料にプラスチックや塗料原料、合成繊維原料などの中間製品が製造される。中間製品を原料として、自動車部材や医薬品、洗剤、化粧品などの最終製品が生産される。

川上にあたる基礎製品製造では品質の差が出にくいため、価格競争になりやすい。三菱ケミカルホールディングスや住友化学、三井化学など基礎製品製造から最終製品の製造まで手掛ける国内総合化学メーカーは、グローバル競争に対応すべく付加価値の高い機能性化学品に注力している。

川中では、基礎製品からポリエチレンや塗料原料、合成繊維原料などの誘導品と呼ばれる中間製品を製造しており、中間製品の中でもリチウムイオン電池や液晶ディスプレイの素材に用いられる電子材料や導電・絶縁材料などは、技術力を要するため付加価値が高く、機能性化学品と呼ばれる。

安価な原料から高付加価値製品を製造することで、利益率の高いビジネスを行っている。

川下は最終製品メーカーであり、中間製品を用いて自動車部材や電子材料のほか、洗剤や化粧品などの日用品を製造している。川下企業としては、花王やライオン、資生堂、ユニ・チャームなどが該当する。また、大手メーカーに部品を提供する中小企業や、化粧品や薬品などを個人に提供するBtoC事業者が多い。

化学工業の構造(石油化学を中心としたモデル)

(3)業界動向

基礎製品は、ナフサの原料である原油価格の変動により市況が大きく左右されるため、原油価格および為替市場の動向を注視すべきである。化学製品出荷指数は、新型コロナウイルスの影響により2020年半ばに一時急落したものの、現在はやや回復している。

近時では、中国景気減速や米中貿易摩擦を背景とした世界的な景気減速懸念が高まっており、基礎製品の需要が弱含んでいるため、今後の動向には注意が必要である。

石油化学産業の中で最も重要な基礎化学品であるエチレンの国内需要の減少により、供給が需要を上回る状況が続き、総合化学メーカー各社はエチレンプラントの閉鎖・統合を進めており、設備規模の最適化を図ると共に、過剰設備の統廃合により収益構造の改善に努めている。

中間製品は、液晶テレビ向け高機能フィルムなどの電子材料や、紙おむつ向け高分子吸収材などの高い技術力を要する機能性化学品の需要が高まっており、特にスマートフォンの普及に伴い高機能フィルム有機ELの需要が拡大している。

機能性化学品は、顧客の要望に対応するため高い技術力が必要とされる分野であり、国内メーカーは付加価値の大きい機能性化学品の割合を高めるべく、M&Aなどを活発に行っている。

また、化学製品の製造においては、大量の二酸化炭素(CO₂)を排出する必要があるため、SDGsへの取り組みに特に注力している業界と言える。

近年ではカーボンニュートラル(脱炭素)など環境問題についての関心が高まっており、マイクロプラスチック(微細プラスチック粒子)による海洋汚染が世界的な問題となる中、今後はさらにリサイクル性や生分解性の高い製品の市場拡大が見込まれる。

(出所)一般社団法人日本化学工業協会

(4)財務指標分析

(安全性分析)
斯業種の自己資本比率は55.8%と製造業の中でも高水準にあり、流動比率は169.9%、当座比率は102.8%といずれも優良な水準であり、安全性の高い業種といえる。
 
(収益性分析)
製造業全体に比べて、斯業種は営業利益率8.5%、経常利益率10.9%と高い利益率であり、全製造業の中で最も高い水準にある。技術力を要する高付加価値製品を強みとしていることが、高利益率につながっていると推察される。
 
(効率性分析)
資本効率の面において、斯業種の総資本回転率は0.6回と、製造業全体の0.8回と比較して低い水準となっている。

有形固定資産回転率も3.6回と、製造業全体の3.9回を下回っており、エチレンプラントの統廃合が進んでいるものの、過剰設備感が否めず、設備の効果的な稼働がなされていない実態が数値にも表れている。

(出所)財務省「令和元年度法人企業統計調査」

(5)与信限度額の考え方

■与信限度額の設定方法
与信限度額とは、取引において自社が許容する信用供与の最大額であり、いかなる時点でも超過してはならないものである。与信限度額は、「必要かつ安全な範囲内」で設定する必要がある。

必要な限度額は、取引実態を基に算出し、安全な限度額は、自社の財務体力や取引先の信用力(格付)を基に算出する。
 
●与信金額(必要な限度額)
実際の取引において、必要となる与信金額。化学工業に対して発生する与信取引としては、原材料や一時製品販売等での「売買取引」が挙げられ、継続取引における必要な与信金額は、以下のとおり算出される。

 与信金額 = 月間の取引金額 × 回収サイト

取引を行う際には、自社の取引条件が斯業界の平均水準から大きく乖離していないか、確認すべきである。買掛債務回転期間の業界標準値が「斯業界の平均的な支払サイト」を表しているため、「月間の取引金額×買掛債務回転期間の業界標準値」によって、与信金額の基準とすることができる。

 化学工業に対する平均的な与信金額 = 月間の取引金額 × 1.6か月

●基本許容金額(安全な限度額)
基本許容金額は、自社の財政がどの程度の貸倒れまで耐えうるかを予め計ることで、自社の体力を超える取引に対する牽制機能を働かせるものであり、自社の財務体力と取引先の信用力を考慮して算出する。一例として、自社の自己資本額に対して、取引先の信用力(格付)に応じた割合を安全な限度額とする方法がある。 

 基本許容金額 = 自社の自己資本額 × 信用力に応じた割合
(例 : A格10%、B格5%、C格3%、D格0.5%、E格0.3%、F格0%)

●売込限度額(安全な限度額)
販売先において、自社との取引シェアが高くなり過ぎると、自社が取引から撤退することが困難となる恐れがある。そのため、取引先の信用力(格付)に応じて取引シェアに上限を設けるべく、取引先が抱える買掛債務額の一定割合を売込限度額として設定する方法が考えられる。

 売込限度額 = 買掛債務額 × 信用力に応じた割合
(例 : A格30%、B格20%、C格15%、D格10%、E格6%、F格0%)  

仮に、取引先の売上高情報しかなく、買掛債務額が不明な場合であっても、業界標準値を用いて売上高総利益率(33.3%)と買掛債務回転期間(1.6か月)から、以下のように買掛債務額を推定することができる。

  買掛債務額 = 売上高/12[月商] ×(1-0.326)[原価率] × 1.6(か月)[買掛債務回転期間]
  = 売上高 × 0.089
(例:売上高100億円・A格の場合:100億円×0.089[買掛債務額]×30%[信用力に応じた割合]=2.67億円)

(6)与信管理のポイント

化学工業製品は、エチレンなどの基礎材料から医薬品や自動車部材など多岐に渡り、幅広い業界で使用されるため、斯業種との取引の際には取扱製品とエンドユーザーとなる業界を把握することが重要である。

川上の事業である基礎製品の製造は、主に総合化学メーカーが担っており、販売先は中間製品を製造する化学工業が中心となる。基礎製品の原料となる原油は輸入依存度が高いため、原油価格だけでなく為替市場の動向にも注意が必要である。

基礎製品は品質に差が生じにくいため、設備投資により生産力を拡大し、価格競争力を高める必要があることから、設備の最新性や稼働状況に加えて、設備投資余力を有しているかを確認する必要がある。

総合化学メーカーは、基礎製品から中間製品、最終製品まで製造しているケースが多いため、取扱製品や主力事業の確認も必要となる。

中間製品には、従来から斯業種で生産されているポリエチレンや塗料原料、合成繊維原料のほか、リチウムイオン電池や電子材料など、近年需要が急速に高まっている機能性製品がある。

安価な原料から付加価値の高い製品を製造するため、技術力がポイントとなる。特に近年では、中国や韓国などのメーカーに人材が流出するケースが目立っているため、技術者の確保状況を確認すべきであろう。

川下で製造される最終製品は、販売先業界が多岐にわたるため、取引先が製造している製品のエンドユーザーを確認する必要がある。また、BtoC企業も多く、製品のライフサイクルが短期化傾向にあることから、市場ニーズに合わせた製品開発力の有無がポイントとなる。

化学工業は、国内需要だけではなく外部環境の影響も受けやすい業種である。原油価格や為替の変動、中国の需要動向や北米・中東製品との価格競争などの影響を受けるため、国外の動向にも常に着目する必要がある。

基礎製品においては、国内需要が頭打ちとなる中、海外市場の開拓も課題となろう。

また、世界的にカーボンニュートラル(脱炭素)への取組みが進む中、大量の二酸化炭素(CO₂)を排出する化学業界にも変化が求められる可能性が高く、今後の商品開発や取扱品に変化ついて注意が必要である。

化学工業は、製造業の中でも特に利益率が高い業種であるため、取引先の利益率が低水準である場合には、製品の競争力が乏しいことや設備の稼働率が低い、過剰設備による高コスト構造であるなど収益を圧迫している要因がないか注意が必要である。

参考資料
財務省:「令和元年度法人企業統計調査」「貿易統計」
総務省:「科学技術研究調査」
一般社団法人日本科学工業協会:「グラフで見る日本の化学工業2021」
化学産業研究会:「シリーズ業種別会計の基礎 その5 化学産業 第1回」
公益社団法人化学工学会:「化学工業の特徴と役割」
東洋経済新報社:「業界地図2021」

本日の内容は以上になります。
次回もお楽しみにでは

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