見出し画像

業界レポート 社会保険・社会福祉・介護事業

今回は弊社独自で行っている業界レポート「社会保険・社会福祉・介護事業」を取り上げたいと思います♪
業界レポートとは、リスクモンスターの心臓部であり、格付などの与信指標を生産・保守を行う「データ工場」が集計・分析しており、業界ごとの市場概要や業界動向、与信管理のポイントなどをまとめたレポートです。

こんにちは、佐々木正人です!
是非、最後まで読んで持って帰って下さい!!
フォロー✅・スキ💗・コメント📝大歓迎です!特に記事についてのコメント頂けると、今後の記事作成の励みになります。100%返答します( ´艸`)

メルマガ登録は▼コチラから▼

(1)市場概要


① 営業種目
‣社会保険事業団体  ‣保育所  ‣その他の 児童福祉事業
‣特別養護老人ホーム  ‣介護老人保健施設  ‣通所・短期入所介護事業 ‣訪問介護事業
‣認知症老人グループホーム  ‣有料老人ホーム  ‣その他の老人福祉・介護事業
‣障がい者福祉事業  ‣更生保護事業  ‣その他の社会保険・社会福祉・介護事業

② 業界規模
総売上高 79 兆 1,507 億円
上場企業数 10 社
非上場企業数 36,476 社
※ 社会保険・社会福祉・介護事業においては、「事業活動収入」として表されるが、本書では便宜上「売上高」として表現する。

③ 業界サマリー
社会保険・社会福祉・介護事業は、 公的年金や医療保険 、介護保険事業を行う「 社会保険事業団体 」、保育所 や託児所、児童相談所などを運営する「児童福祉事業」、 老人ホーム、デイサービス、 訪問介護などを運営する「 老人福祉・介護事業 」に分けられる。

【業界特徴】
児童福祉事業と老人福祉・介護事業は、「保育」や「介護」といったサービスを提供し、その対価を受け取るサービス業である。ただし、通常のサービス業と異なる点は、社会保険・社会福祉・介護事業が「社会福祉」という社会の発展に寄与する事業であり、本質的には利益の追求を目指す事業会社ではないということである。

児童福祉事業者の主な収益源は、顧客からの保育料収入ではなく国からの補助金であり、 老人福祉・ 介護事業者の主な収益源は介護報酬となっている。介護報酬とは、 介護サービス提供の対価として事業者に支払われる報酬 であり、利用者の所得金額に 応じて1割~3割が利用者負担となり、残りの9 割~7割は公的機関の介護保険から支払われる 。こうした構造を利用し 、 補助金や 助成金を 不正受給する法令違反事業者も少なくない。

社会保険・社会福祉・介護事業が抱える問題点としては、深刻な人手不足が挙げられる。

社会保険・社会福祉・介護事業においては 、 コストの大半が人件費であり、基準人員が定められているため、保育士や介護士の給与の引き上げは 、収支悪化の観点から容易ではない。 賃金の割に重労働かつ人の命を扱う責任の重い仕事であることが 、離職率の高い結果に繋がり、人手不足に陥っている。

(2)ビジネスモデル


介護業界は、収益構造に介護保険や給付金などが必ず関わっており、公的機関との関係性が強いため、ビジネスモデルは他業界と比べて特徴的である。

介護業界における報酬は、利用者と公的機関の両方から支払われる。要介護認定を受けた利用者(被保険者)は介護事業者の提供するサービスに対し、その対価の一部(1 割から3割)を支い、残りの介護報酬は公的機関から支払われる。

支出面では人件費が費用の大半を占め、コスト全体の80%に達するケースもある労働集約型の業界である。保育所や介護サービスの職員数は、国が「配置基準」を定めており、法定以下の人員にできないため、収益を最大化しようとすると、基準を満たす人員を配置しつつ人件費を抑えなければならない。これが、近年の介護職や保育士の低賃金問題につながっている。

また、2000 年に始まった介護保険制度においては、3年ごとに収益源である介護報酬の見直しが実施される。介護報酬額は、介護内容によって細かく分類されており、政府はより重点的なケアを必要とするサービスの報酬を引き上げ、他のサービスの報酬を引き下げている。介護報酬額が引き上げられるサービスの運営事業者は収益が拡大し、他方の事業者は業績の悪化にも繋がるため、3年ごとの改定には、各事業者が注目している。令和3年度の介護報酬改定では、新型コロナウイルス感染症への対応力強化などから、改定率プラス0.70%の改定となっている。

(3)業界動向


仕事をする女性の割合は増加の一途であり、保育事業は拡大が続いている。また、高齢化が進む日本において、介護需要は拡大が続いており、厚生労働省によると、公的介護保険制度の被保険者は2000年4月末時点の2,165万人から、2018年4月末時点で3,492万人にまで膨らんでいる。

社会保険・社会福祉・介護事業は、上記のような社会的な背景から、業界全体として拡大基調にあり、今後も拡大が見込まれている。こうした状況において、参入が容易な介護事業には異業種から民間事業会社の参入が相次ぎ 、競争が激化して いる 。

介護事業所数は 、 2017 年まで 右肩上がりで増加している 。 介護予防サービス事業所の内、「介護予防訪問介護」 、 「介護予防通所介護」について、 3 年間の経過措置により市町村へ総合事業として移管されたことにより、事業所数としてカウントされず、 2018 年は 表面的には事業所数が減少し て 推移している。

業界全体として拡大基調にある社会保険・社会福祉・介護事業であるが、直近10年間の斯業界の倒産件数は、 増加傾向で推移していることが わ かる。

2015年の介護報酬引き下げや 競争激化により大手の事業者に要介護者や介護従事者が集中し、その結果、資金力の乏しい小規模事業者が倒産していることが、倒産増加の背景とみられる 。

(4)財務指標分析


社会保険・社会福祉・介護事業独自の財務指標が存在しないため、社会福祉法人の財務指標について記載する。

(安全性分析)
社会福祉法人設立の基礎となる資産は、原則として寄附を原資とし、純資産の部の基本金に計上される。この基本金は社会福祉事業を存続させていく限り、維持していかなければならないものである。また、企業会計では圧縮記帳される補助金についても、積立金として純資産の部に計上されるため、純資産比率は高くなりやすい。

(収益性分析)
社会福祉法人の主目的は利益獲得ではないが、継続的なサービス提供のためには、安定した収益を確保することが重要である。売上高総利益率にあたるサービス活動増減差額率※、経常利益率にあたる経常増減差額率は共に低水準であり、補助金等により収益は安定しているとはいえ、事業環境に変化があった際には赤字に転落する可能性もあることを考慮しなければならない。

(効率性分析)
事業会社の売掛債権回転期間にあたる事業未収金回転期間は、1.4 か月と短い。社会福祉法人は、個人を対象としたサービス業であり、売掛取引はほとんど発生しないと推察される。一方、介護や保育に要する設備や備品は恒常的な仕入れが発生することから、買掛債務回転期間にあたる事業未払金回転期間は、2.4 か月と他の事業会社とそれほど変わらない水準となっている。

(5)与信限度額の考え方


■与信限度額の設定方法
与信限度額とは、取引において自社が許容する信用供与の最大額であり、いかなる時点でも超過してはならないものである。与信限度額は、「必要かつ安全な範囲内」で設定する必要がある。必要な限度額は、取引実態を基に算出し、安全な限度額は、自社の財務体力や取引先の信用力(格付)を基に算出する。

●与信金額(必要な限度額)
実際の取引において、必要となる与信金額。社会福祉法人に対して発生する与信取引としては、設備や備品の販売や継続的なサービス提供での「売買取引」が挙げられ、継続取引における必要な与信金額は、以下のとおり算出される。

与信金額= 月間の取引金額 × 回収サイト

取引を行う際には、自社の取引条件が斯業界の平均水準から大きく乖離していないか、確認すべきである。買掛債務回転期間の業界標準値が「斯業界の平均的な支払サイト」を表しているため、「月間の取引金額×買掛債務回転期間の業界標準値」によって、与信金額の基準とすることができる。

社会福祉法人に対する平均的な与信金額 =月間の取引金額 × 2.4 か月

●基本許容金額(安全な限度額)
基本許容金額は、自社の財政がどの程度の貸倒れまで耐えうるかを予め計ることで、自社の体力を超える取引に対する牽制機能を働かせるものであり、自社の財務体力と取引先の信用力を考慮して算出する。一例として、自社の自己資本額に対して、取引先の信用力(格付)に応じた割合を安全な限度額とする方法がある。

基本許容金額 =自社の自己資本額 × 信用力に応じた割合
(例 : A格10%、B格5%、C格3%、D格0.5%、E格0.3%、F格0%)

●売込限度額(安全な限度額)
販売先において、自社との取引シェアが高くなり過ぎると、自社が取引から撤退することが困難となる恐れがある。そのため、取引先の信用力(格付)に応じて取引シェアに上限を設けるべく、取引先が抱える買掛債務額の一定割合を売込限度額として設定する方法が考えられる。

売込限度額 =買掛債務額 × 信用力に応じた割合
(例 : A格30%、B格20%、C格15%、D格10%、E格6%、F格0%)

仮に、取引先の売上高情報しかなく、買掛債務額が不明な場合であっても、業界標準値を用いて売上高総利益率(2.7%※※)と買掛債務回転期間(2.5か月※※)から、以下のように買掛債務額を推定することができる。

買掛債務額= 売上高 / 12[ 月商 ] × (1- 0. 027[原価率 ] × 2.4 (か月 )[ 買掛債務回転期間 ]
=売上高 × 0. 203

(例:売上高100億円・A格の場合:100億円×0.195[買掛債務額]×30%[信用力に応じた割合]=5.85億円)

(6)与信 管理のポイント


社会保険・社会福祉・介護事業は、公共性が高く政府からの支援があることから、倒産が発生することが想像しにくいかもしれないが、業界動向で述べた通り近年は倒産件数が増加傾向で推移している。介護や保育事業者であっても他の事業会社と同様に、与信管理を行う必要があるということを認識しなければならない。

その上で、まずは運営母体の確認が必要となる。斯業種には社会福祉法人のほかにも民間事業者が多数参入している。特に、メイン事業が保育や介護事業でない場合、参入する理由が収益拡大である可能性がある。メイン事業の業績が悪化すれば、斯業種の事業にも影響が出てくる可能性が高いことから、主要な事業の確認が必要である。

社会福祉法人であっても、人件費等のコスト削減や、補助金支給要件の対象とならない設備への投資を抑制するなどして、 収益最大化を図る事業者も存在する。また、社会福祉法人であっても「収益事業」として貸ビルや駐車場の経営などを行うことができるとされており、収益事業に注力していないかも確認要素であろう。

介護事業者の場合、注目すべきは3年に一度の介護報酬改定であろう。2018年度及び2021年度の介護報酬改定は、プラス改定となったが、2015年度の改定時においては、介護報酬が9年ぶりに引き下げられたことを受けて、以降の老人福祉・介護事業者の倒産が急増する事態となった。

利益率の低い事業であるため、収益源となる介護報酬の減少は死活問題である。元々低い人件費は下げられないどころか、同業者の競争激化によって、平均賃金は上昇傾向にある。前述のように、介護報酬は細かく分類されていることから、取引先の介護事業者が対象となる介護報酬及び改定内容について把握しておく必要があろう。

斯業種において、介護報酬や助成金の不正受給により、行政処分を受ける場合がある。 法令違反など、不正・不祥事によって、指定取消処分が下される事業者も存在するため、取引先のコンプライアンス遵守状況についても確認が必要である。

また、過去に 斯業種の企業が利益を水増しした手口として 、 理事長 と関わりの深い業者を使 って 産業廃棄物処理や備品 購入を通常以上の料金設定にすることで 、 理事長個人に 還元するという手法があった 。 与信管理を行う 上では 、取引先との関係性も確認しておく必要があろう。

【参考資料】
厚生労働省:「令和元年介護サービス施設・事業所調査」
厚生労働省:「平成30年度公的介護保険制度の現状と今後の役割」
厚生労働省:「介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン(概要)」
厚生労働省:「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」
独立行政法人福祉医療機構:「2019年度社会福祉法人の現況報告書等の集約結果」

本日の内容は以上になります。
次回もお楽しみにでは

◉仕事に役立つセミナー情報を発信◉
メルマガのご案内

与信管理を無料で学べるメルマガ登録のお知らせ❗️
「メルマガ登録は▼コチラから▼」をクリックして登録🥳
●メルマガでは●貴社の与信管理に役立つ情報を配信しています💪
与信管理講座や無料セミナー等、有料級のセミナーを多数開催中!
与信、営業、総務、経理等ご担当様必見✨

メルマガ登録は▼コチラから▼

Twitterもフォローお願いします!

#最近の学び
#とは
#note
#ビジネス
#コラム
#エッセイ
#ブログ
#仕事
#学び
#営業
#経営
#しゃかせん

業界レポート 社会保険・社会福祉・介護事業 2021.10

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?