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やさしい人

車椅子の方を介助する駅員さんに、その車椅子に乗った方がお礼を。するとそれに応える駅員さんの声がホントに弾んでいて「お客さんが喜んでいる」を、彼女は心底喜んでいるんだなということが、僕にも伝わってきた。彼女は20代前半だろう。

僕自身、まだまだ身体がいうことを聞かない頃に、そこでスマホをいじっていた女子高生に、ごくごく自然にバスに乗るのを手伝ってもらったことがある。散歩していて、そういう場面に出会うことも珍しくはない。
工業生産時代に均質な部品のように育てられた僕らと違って、彼らには個人差がある。残念ながら、何事も「かったるいよ」と斜に構えていることが反抗だと勘違いしてきた僕らの世代の遺伝子を正統に受け継いでいる人も少なくはないけれど。

でも、やさしい人もいるのです。組織の部品ではなく、やさしい個人。

この間、出会った彼女。周辺の乗降客に「ご協力ありがとうございました」と頭をさげる彼女の言葉に、嘘や演技はまったくなく、まさに真心だったと思う。

彼女の教師は誰だったのでしょう。たぶん親御さんは僕らと同世代か少し歳下か…そういう世代だと思う。故に彼女のために、あんまりいい教師にはなれなかった可能性も高い。稀なご両親に恵まれたのか、隔世遺伝というか、日本文化の命強さなのか。いずれにせよ。ありがたいことだと思う。

自分の権利を主張することばかりに熱心で、思いやりのない時代は終わりになればと思う。でも若者たちの中に灯火は灯っている。不可能ではないのだろう。