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業界分析レポート 非鉄金属製造業

 こんにちは、佐々木正人です!
今回はあまり馴染みのない非鉄金属製造業の業界について学んでいってみましょう( ´艸`)
是非、最後まで読んで持って帰って下さい!!
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まずは、業界全体の市場規模を見ましょう。

(1)市場概要

① 営業種目
‣非鉄金属第一次製錬・精製業
‣アルミニウム・同合金圧延業
‣ダイカスト製造業

② 業界規模
総売上高15兆179億円
上場企業数31社
非上場企業数3,288社

③ 業界サマリー
非鉄金属とは鉄を除く全ての金属を指し、大きく3つに分類されます。

‣ベースメタル(銅、鉛、アルミニウム等)
主な用途は、アルミニウム(アルミ缶、自動車の車体など)、銅(10円玉など)、亜鉛(乾電池など)銀(写真の感光剤など)、ステンレス(やかん、厨房設備など)

‣レアメタル(ニッケル、チタン等)
ステンレスの添加剤など、素材として利用されるもの(ニッケルなど)、電子部品や電池などの原料に使われるもの(チタン、リチウムなど)に大別できます。

‣貴金属(金、銀、プラチナ)
金(指輪などの装飾品、コンピュータの回路など)
プラチナ(自動車のマフラー部分に使用される排気ガス浄化装置など)

非鉄金属の中でも、大量に消費される金属であり消費者ニーズが多様化しているのがベースメタルです。中国経済の拡大によって原材料としての需要が増加していたが、近年は縮小傾向にあります。

価格は、原材料となる地金価格に連動するものの、ユーザー側のコスト削減策として加工費削減要求が進んでいます。

(2)ビジネスモデル

業務内容は資源(川上)→製錬(川中)→加工(川下)の3つに分けられます。

【川上】鉱石の採掘、金属リサイクル、環境ビジネス
‣金属の原料となる鉱石の採掘。ほとんどが輸入に頼っており、国内企業の力関係は弱いです。そのため製錬マージンは安定せず、海外鉱山の権利取得を積極的に行っています。

【川中】地金の製錬
‣輸入した鉱石を地金に製錬した際に発生する製錬マージン(TC/RC)は、非鉄各社の主要な利益となります。ただし鉱山会社との年1回の話し合いで決まるため、鉱石を輸入している国内企業の交渉力は弱いです。

【川下】電子材料、加工品
‣地金を加工して、電子部品や自動車用製品を製造します。

非鉄金属企業の主要な収入源は、製錬マージンです。製錬マージンとは、鉱山から採鉱された鉱石を地金に加工する手数料といえます。製錬マージンはTC(溶錬費)とRC(精錬費)の合計であり、LME(ロンドン金属取引所)で売買される地金価格を指標として決定されます。

なお、日本国内企業は鉱石のほとんどを輸入に頼っているため、鉱山を持つ資源メジャー主導で価格が決定する傾向があります。

※5大資源メジャー

‣ BHP ビリトン(英・豪)
‣ アングロ・アメリカン(英)
‣ リオ・ティント(英・豪)
‣ ヴァーレ(ブラジル)
‣ グレンコア・エクストラータ(スイス)

(3)業界動向

中国を中心とした新興国経済の成長により、2003年頃から非鉄金属を含むエネルギー価格は上昇を続けました。しかし、需要拡大期に着手した鉱山の増産効果と中国景気の減速により、2011年をピークに価格は徐々に低下傾向となっています。

これに対して、資源メジャーは増産による収入維持方針を強めており、鉱石の供給増加によって国内企業の製錬マージンは改善しつつあります

こうした状況の中、国内非鉄各社の業績は2015年頃までの円安傾向を追い風に拡大を続けていましたが、近年の円相場上昇に加えて、中国景気の減速懸念も一段と高まっているため、先行きに対する不透明感は強いです

外部要因に左右されやすい川中の製錬マージンよりも、各社が進める鉱石採掘・リサイクル・環境などの川上ビジネスや、電子材料・加工品などの生産拡大の行方が注目ポイントになると想定されます。

(4)財務指標分析

●安全性分析

自己資本比率、流動比率、固定比率、借入依存度など安全性指標の面から考えると、非鉄金属業界は金属製品業界よりも指標面で劣るという結果になっています。

一方、配当性向は金属製品を大きく上回っており、利益還元姿勢は高いと想定され、これは内部留保率の低さにも表れています。

非鉄金属製造業は、事業運営のために多額の設備投資が生じる業種ですが、固定比率は約140%となっており、概ね自己資金で設備投資を賄えている様子がうかがえます。

●収益性分析・効率性分析

どれだけ効率的に設備(主に有形固定資産)を用いて付加価値を生み出しているかを表す設備投資効率からは、金属製品に比べて効率の悪い投資を行っていることがみえてきます。

以上を考慮すると、「効率は悪くとも設備投資を継続せざるを得ない」という現状がみえてきます。これは最終的な利益率の悪化にもつながっており、売上高総利益率段階では金属製品製造業が20.3%であるのに対して非鉄金属製造業はおよそ半分の10.8%となっています。

斯業種は、外部要因に左右されやすい業界であり、今後非鉄金属業界を考える上では「効率的な投資」が大きなテーマとなり得ます。

(5)与信限度額の考え方

与信限度額とは、取引において自社が許容する信用供与の最大額であり、いかなる時点でも超過してはならないものです。

与信限度額は、「必要かつ安全な範囲内」で設定する必要があります。必要な限度額は、取引実態を基に算出し、安全な限度額は、自社の財務体力や取引先の信用力(格付)を基に算出します。

●与信金額(必要な限度額)

実際の取引において、必要となる与信金額。非鉄金属製造業に対して発生する与信取引としては、鉱物の販売等での「売買取引」が挙げられ、継続取引における必要な与信金額は、以下のとおり算出されます。

与信金額=月間の取引金額×回収サイト

取引を行う際には、自社の取引条件が斯業界の平均水準から大きく乖離していないか、確認すべきです。

買掛債務回転期間の業界標準値が「斯業界の平均的な支払サイト」を表しているため、「月間の取引金額×買掛債務回転期間の業界標準値」によって、与信金額の基準とすることができます。

非鉄金属製造業に対する平均的な与信金額=月間の取引金額×1.5か月

●基本許容金額(安全な限度額)

基本許容金額は、自社の財政がどの程度の貸倒れまで耐えうるかを予め計ることで、自社の体力を超える取引に対する牽制機能を働かせるものであり、自社の財務体力と取引先の信用力を考慮して算出します。

一例として、自社の自己資本額に対して、取引先の信用力(格付)に応じた割合を安全な限度額とする方法があります。

基本許容金額=自社の自己資本額×信用力に応じた割合
(例 : A格10%、B格5%、C格3%、D格0.5%、E格0.3%、F格0%)

●売込限度額(安全な限度額)

販売先において、自社との取引シェアが高くなり過ぎると、自社が取引から撤退することが困難となる恐れがあります。

そのため、取引先の信用力(格付)に応じて取引シェアに上限を設けるべく、取引先が抱える買掛債務額の一定割合を売込限度額として設定する方法が考えられます。

売込限度額=買掛債務額×信用力に応じた割合
(例 : A格30%、B格20%、C格15%、D格10%、E格6%、F格0%)

仮に、取引先の売上高情報しかなく、買掛債務額が不明な場合であっても、業界標準値を用いて売上高総利益率(11.3%)と買掛債務回転期間(1.5か月)から、以下のように買掛債務額を推定することができます。

買掛債務額
=売上高/12[月商] ×(1-0.113)[原価率] × 1.5(か月)[買掛債務回転期間]
=売上高×0.111
(例:売上高100億円・A格の場合:100億円×0.126[買掛債務額]×30%[信用力に応じた割合]=3.33億円)

(6) 与信管理のポイント

非鉄金属業界の特性を鑑みると、最も注目しておくべきは中国経済の動向です。非鉄金属価格が2011年をピークにして右肩下がりとなっている要因としては、最大の需要国である中国景気の悪化が大きいです。

中国経済の動向を計る上では、中国国家統計局が発表する製造業購買担当者景気指数(PMI)が挙げられます。50を境にして好不況が判断されるため分かりやすく、月次で公表されるタイムリーな指標であることから、市場関係者の注目が高いです。

川上に属する企業の主要な収益源は製錬マージンであり、これまで資源メジャーに主導権を握られてきました。

しかし、2000年代後半の需要拡大期に着手した鉱山開発と需要減速のタイムラグによって、鉱石採掘能力は拡大できたものの肝心の需要が減少している、という状況になっています。

ただしこれは、国内企業にとっては製錬マージンの増加という追い風になっており、ひとまず業界としての先行きは暗いものではありません。

川下に属する企業において製造される製品は、自動車、家電、電子部品など多様な産業で使用されることから、与信管理を行う際には、当該企業の取扱製品をきちんと把握し、主要な販売先業界の動向を考慮する必要があります。

また、非鉄金属は製品上の差別化が難しいため、景況感の影響を受けやすい点にも留意が必要です。

斯業種における与信管理としては、財務分析の項で指摘したように、設備投資が重要なポイントです。事業運営のため、継続的な投資が必要であるが、業績悪化により自己資金で設備投資金を賄うことが難しくなった場合、借入が増加し、財政状態が急速に悪化する恐れがあります。

直近の業績が安定しているようにみえていたとしても、売上高の推移 および 減価償却や設備投資状況などを確認しておく必要があります。

定性面においては、工場の稼働状況が落ちていないか、設備の老朽化が進んでいないか等を確認することで、いち早く経営の変化を見抜くことが可能 となります。

【参考資料】
財務省:「平成27年度法人企業統計調査」
総務省統計局:「平成28年経済センサス-基礎調査」
業種別審査事典(一般社団法人 金融財政事情研究会)
業界地図 2016年版(東洋経済新報社)
業界分析レポート 201904 非鉄金属製造業

本日の内容は以上になります。
次回もお楽しみにでは

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