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今回は弊社独自で行っている業界レポート「非鉄金属製造業」を取り上げたいと思います♪

業界レポートとは、リスクモンスターの心臓部であり、格付などの与信指標を生産・保守を行う「データ工場」が集計・分析しており、業界ごとの市場概要や業界動向、与信管理のポイントなどをまとめたレポートです。

こんにちは、佐々木正人です!
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(1)市場概要

①営業種目
‣ 非鉄金属第一次製錬・精製業
‣ アルミニウム・同合金圧延業
‣ ダイカスト製造業

②業界規模
総売上高 11兆9,405億円
上場企業数 31社
非上場企業数 2,594社

③業界サマリー
非鉄金属とは、鉄を除く全ての金属を指し、大きく3つに分類される。

‣ ベースメタル(銅、鉛、アルミニウム等)
主な用途は、アルミニウム(アルミ缶、自動車の車体など)、銅(10円玉など)、亜鉛(乾電池など)
銀(写真の感光剤など)、ステンレス(やかん、厨房設備など)

‣ レアメタル(ニッケル、チタン等)
ステンレスの添加剤など、素材として利用されるもの(ニッケルなど)、電子部品や電池などの原
料に使われるもの(チタン、リチウムなど)に大別できる。なお、レアメタルの一部の元素(希土類)は「レアアース」と呼ばれている。

‣ 貴金属(金、銀、プラチナ)
金(指輪などの装飾品、コンピュータの回路など)
プラチナ(自動車のマフラー部分に使用される排気ガス浄化装置など)

非鉄金属業者の事業は、以下の2つに分けられる。
①非鉄金属の精錬事業
住友金属鉱山、三井金属鉱業、三菱マテリアル等の大手企業が該当する。
②非鉄金属の加工事業
住友電気工業、古河電気工業、UACJ、日本軽金属等が該当する。例として、住友電気工業は、自動車・情報通信・エレクトロニクス・環境エネルギー・素材産業の5分野の事業を展開し、中流から下流まで幅広い非鉄金属に関わる事業を行っている。

(2) ビジネスモデル

業務内容は資源開発(川上)→金属製錬(川中)→加工(川下)の3つに分けられる。

【川上】鉱石の採掘、金属リサイクル、環境ビジネス
‣ 金属の原料となる鉱石の採掘。ほとんどが輸入に頼っており、国内企業の力関係は弱い。そのため製錬
マージンは安定せず、海外鉱山の権利取得を積極的に行っている。

【川中】地金の製錬
‣ 輸入した鉱石を地金に製錬した際に発生する製錬マージン(TC/RC)は、非鉄各社の主要な利益となる。
ただし鉱山会社との年1回の話し合いで決まるため、鉱石を輸入している国内企業の交渉力は弱い。

【川下】電子材料、加工品
‣ 地金を加工して、電子部品や自動車用製品を製造する。

・非鉄金属企業の主要な収入源は、製錬マージンである。製錬マージンとは、鉱山から採鉱された鉱石を地金に加工する手数料といえる。

製錬マージンは、TC(溶錬費)とRC(精錬費)の合計であり、LME(ロンドン金属取引所)で売買される地金価格を指標として決定される。精錬マージンに自社の販売プレミアムを加えたものが非鉄金属企業の収入となる。なお、日本国内企業は鉱石のほとんどを輸入に頼っているため、鉱山を持つ資源メジャー主導で価格が決定する傾向がある。

(3) 業界動向

経済産業省発表の工業統計調査(2021年)によると、2019年の非鉄金属製造業の出荷額は、9.6兆円となっており、近年はほぼ横ばいで推移している。

2021年の非鉄金属業界は、新型コロナウイルス感染拡大により、自動車関連の需要減少、通信・電力関連の工事停滞の影響を受けており、出荷額の減少が予想される。

一方、中国経済の回復により銅・ニッケル・金等の資源価格は上昇傾向にあり、鉱山権益を持つ企業の業績は堅調に推移している。

また、世界的に脱炭素(カーボンニュートラル)に向けた動きが高まるなか、電気自動車市場の拡大が見込まれている。電気自動車は、ガソリン車に比べて銅やアルミなどの非鉄金属を大量に使用することから、需要拡大が見込まれており、精錬各社は産出地が限られるレアアースなどの調達力強化を進めている。

(4) 財務指標分析

(安全性分析)
非鉄金属製造業は、金属製品製造業に比べて流動比率が低く、固定比率が高くなっている。これは、非鉄金属業界は、先端分野に係る新規設備投資や事業運営のための更新投資(維持・補修等)のため、設備投資等のサイクルが短いためだと考えられる。

また、配当性向は金属製品製造業を大きく上回っており、他の業界と比べても利益還元姿勢は高い企業が多いことが想定される。

(収益性分析)
非鉄金属製造業は、金属製品製造業に比べて、売上高総利益率が低水準である。海外とのコスト競争が厳しく原価低減が難しいことや、装置産業であるため設備投資を継続せざるを得ないことが収益力低下に繋がっていると想定される。

(効率性分析)
主に有形固定資産からの付加価値創出を表す設備投資効率は、金属製品製造業よりも低水準である。設備投資のサイクルが短く、効率性の低さに繋がっていると思料される。

(5) 与信限度額の考え方

■与信限度額の設定方法
与信限度額とは、取引において自社が許容する信用供与の最大額であり、いかなる時点でも超過してはならないものである。与信限度額は、「必要かつ安全な範囲内」で設定する必要がある。必要な限度額は、取引実態を基に算出し、安全な限度額は、自社の財務体力や取引先の信用力(格付)を基に算出する。
 
●与信金額(必要な限度額)
 実際の取引において、必要となる与信金額。非鉄金属製造業に対して発生する与信取引としては、鉱物の販売等での「売買取引」が挙げられ、継続取引における必要な与信金額は、以下のとおり算出される。

与信金額 = 月間の取引金額 × 回収サイト

取引を行う際には、自社の取引条件が斯業界の平均水準から大きく乖離していないか、確認すべきである。買掛債務回転期間の業界標準値が「斯業界の平均的な支払サイト」を表しているため、「月間の取引金額×買掛債務回転期間の業界標準値」によって、与信金額の基準とすることができる。

非鉄金属製造業に対する平均的な与信金額 = 月間の取引金額 × 1.4か月

●基本許容金額(安全な限度額)
基本許容金額は、自社の財政がどの程度の貸倒れまで耐えうるかを予め計ることで、自社の体力を超える取引に対する牽制機能を働かせるものであり、自社の財務体力と取引先の信用力を考慮して算出する。一例として、自社の自己資本額に対して、取引先の信用力(格付)に応じた割合を安全な限度額とする方法がある。 
 
基本許容金額 = 自社の自己資本額 × 信用力に応じた割合
例 : A格10%、B格5%、C格3%、D格0.5%、E格0.3%、F格0%)

●売込限度額(安全な限度額)
販売先において、自社との取引シェアが高くなり過ぎると、自社が取引から撤退することが困難となる恐れがある。そのため、取引先の信用力(格付)に応じて取引シェアに上限を設けるべく、取引先が抱える買掛債務額の一定割合を売込限度額として設定する方法が考えられる。

売込限度額 = 買掛債務額 × 信用力に応じた割合 
(例 : A格30%、B格20%、C格15%、D格10%、E格6%、F格0%)

仮に、取引先の売上高情報しかなく、買掛債務額が不明な場合であっても、業界標準値を用いて売上高総利益率(11.3%)と買掛債務回転期間(1.5か月)から、以下のように買掛債務額を推定することができる。

買掛債務額 = 売上高/12[月商] ×(1-0.104)[原価率] × 1.4(か月)[買掛債務回転期間] = 売上高 × 0.104
(例:売上高100億円・A格の場合:100億円×0.104[買掛債務額]×30%[信用力に応じた割合]=3.3312億円)

(6) 与信管理のポイント

非鉄金属業界の特性を鑑みると、最も注目しておくべきは中国経済の動向である。非鉄金属価格が2011年をピークに下落した要因は、最大の需要国である中国景気の悪化が大きい。近年はコロナ禍からの中国経済の早期回復により、非鉄金属価格も上昇基調である。

中国経済の動向を計る上では、中国国家統計局が発表する製造業購買担当者景気指数(PMI)が挙げられる。50を境にして好不況が判断されるため分かりやすく、月次で公表されるタイムリーな指標であることから、市場関係者の注目が高い。

川上に属する企業の主要な収益源は製錬マージンであり、これまで資源メジャーに主導権を握られてきた。しかし、2000年代後半に着手した鉱山開発により川上企業の鉱石採掘力は従来よりも増強されているため、今後の需要拡大に伴い、斯業種の先行きは堅調な推移が見込まれる。

川下に属する企業において製造される製品は、自動車、家電、電子部品など多様な産業で使用されることから、与信管理を行う際には、当該企業の取扱製品をきちんと把握し、主要な販売先業界の動向を考慮する必要がある。

また、非鉄金属は製品上の差別化が難しいため、景況感の影響を受けやすい点にも留意が必要である。

斯業種における与信管理としては、財務分析の項で指摘したように、設備投資が重要なポイントとなる。事業運営のため、継続的な投資が必要であるが、業績悪化により自己資金で設備投資金を賄うことが難しくなった場合、借入が増加し、財政状態が急速に悪化するおそれがある。

直近の業績が安定しているようにみえていたとしても、売上高の推移および減価償却や設備投資状況などを確認しておく必要があろう。

定性面においては、工場の稼働状況が落ちていないか、設備の老朽化が進んでいないか等を確認することで、いち早く経営の変化を見抜くことが可能となろう。

【参考資料】
財務省:「2019年度法人企業統計調査」
経済産業省:「工業統計調査」
業種別審査事典(一般社団法人 金融財政事情研究会)
業界地図 2022年版(日本経済新聞社)
業界地図 2022年版(東洋経済新報社)

本日の内容は以上になります。
次回もお楽しみにでは

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