マガジンのカバー画像

「生活」

27
日々を生きる・私を生きる「生活」からみえたものを、朴訥と丁寧に映しかえる、ある世界のある日の読み物、謹製の随想です。
運営しているクリエイター

記事一覧

「たましいたち」

本当はこのことについて書こうというつもりは無かったのだが、記憶が薄れてしまう前に書き残し…

risa kuroda
2週間前
10

「おかしな話」

とある画材屋のオンライン登録情報が、漏洩したと連絡のメールが入った。 画材を定期的に必要…

risa kuroda
2か月前
2

「みんなここにいるよ」

遠く北の空から、今年も白鳥がやってきた。 ネットニュースも新聞も知らないであろう鳥たちは…

risa kuroda
4か月前
2

「先生」

髪をばっさり切った。 頬をすり抜けていく風は冴え、あっという間に冬の形相だが、しかし髪が…

risa kuroda
5か月前
1

「美しい花」

大好きだったアナザースカイが再開してもうすぐ一年が経つ。あの時はどんな数字や偉い人の話よ…

risa kuroda
8か月前
6

「忘れらない食卓」

田圃に水がはられ、蛙の声が夜辺に響き始める頃、今年のトマトが終わりを迎えようとしていた。…

risa kuroda
11か月前
2

「ここにあるシアター」

思えば、桜が咲き始めるのと同じ頃、同じように、毎年必ず訪れていたのが高崎映画祭だということに、当たり前だが気がついた。 未曽有の出来事により足止めを食いながらも、直向きに丁寧に重ねていくこの祭りごとに映し出された誠実さが、ただ好きなのかもしれない。 だが、ただここにあることが、どれだけ偉大なことか。 映画祭に赴く頃はなんだかまだ少し肌寒く、春なのに、雨が降る。桜はいつも少し濡れているような気がする。 咲くことと散ることは当たり前であり、そして特別である。それを恐れずに残せ

「面影」

次々と、景色は変わっていく。 消えていくもの。 代わりに増えていくもの。 目の前から消えて…

risa kuroda
1年前
2

「すばらしい孤独」

師走の真ん中、いつもより人のざわめきが多い気がする電車が、晴れ曇りの土曜日を走り抜けてい…

risa kuroda
1年前
4

「ポケットの中のWAR」

突然、ポケットの中のスマホから、不協和音が鳴り響く。 その報せは、例えば大地震や大津波、…

risa kuroda
1年前
1

「階段下の東京」

東京に暮らしていた時に仲のよかった友達と、久しぶりに遊んだあの日。 終電に向かう池袋の階…

risa kuroda
1年前
1

「冒険しない理由」

ご飯を食べに行ってテーブルについた時、 流行りのデリバリーをする時、 ドライブスルーのマイ…

risa kuroda
1年前

「たった一人の君へ」

出かけると、たいがい小雨で、晴れた時にはなんだか特別みがやけに増す。 薄曇りの10月はじめ…

risa kuroda
1年前

「ベティブルーと純粋(ピュア)の解放」

「ベティブルー」というフランスの映画がある。初めて見て以来、時折この映画のタイトルが頭に浮かぶ。 「ベティブルー愛と激情の日々」は原題を「37°2 le matin」(37度2分・朝)といい、これは基礎体温を示しているそう。フランスでは1986年に公開され、翌年日本でも上映されたようだが、もちろんその頃に映画館で見たというわけではない。 そうではないのだが、これはとても鮮烈なエピソードとシチュエーションで、それがまるで「ベティブルー」を含めた一つの出来事のように、私の中に残っ