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読書|何様

「何者」を読了したのは何年前だろう。すっかり内容を忘れてしまったのに、今回「何様」を手に取りました。

「何者」の前提知識が薄れていても十分楽しめました。全6章立てで、毎晩2章ずつ朝井リョウさんの世界に飛び込みます。3日間連続、頭を使う夢を見ていたので、色々と考えさせられる読書体験をしていたんだと思いました。

私が一番心に響いた章は「むしゃくしゃしてやったと言ってみたかった」です。

やんちゃな妹と正反対の正美は、親からもご近所さんからもいい子ね〜と笑顔を向けられていました。妹がバカなことをするたびに、自分の真面目さで家族のバランスを保っている、そんな感覚さえも持っていたのです。

しかし、大人になるにつれ、腑に落ちない主張に直面します。

学校の先生も、教科書も、両親も、子どものころは子どもに対して、いい子であれ、人に迷惑をかけるな、間違ったことをするなと教える。
だけど、大人になった途端、一度くらい本気で喧嘩したほうが人と人は深く分かり合えるとか、人に迷惑をかけてきたからこそ伝えられる何かがあるだなんて言い始める。
正しいだけではつまらないなんて、言い始める。

P222-223

この主張、すごくわかります。”元ヤン教師”は経験を重ねているという意味で注目されます。厚みのある人生ってやつでしょうか。

ヤンチャで扱いづらい子に迷惑をかけられる時は眉を顰める。けれど、ヤンチャな当事者ではなくなったときに関わるとなると、話が変わってきます。

自分に降りかかるものが何かによって、捉え方が変わるのかなと思いました。面倒な迷惑なのか、間違いの先に経験した血肉なのか。

物語の最後、これまでむしゃくしゃした時に自分本位で動けなかった大人が、羽目を外します。

幼い子がする羽目の外し方とは異なりました。それは、不倫です。押し寄せる責任や後に残るしこりの程度が子どもの頃とは違いますが、もう止められない。

だって、むしゃくしゃした時にどうしたらいいか、どう日常に戻ればいいかも学んだことがなかったから。

未来の私が、むしゃくしゃした時に羽目を外しすぎないよう、今からストレスの捌け口を作っていかなければ!と結局"真面目に"考えてしまいました。




2023年12月からこれまでの本の記録です。



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