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読書|15歳のテロリスト

少年法や殺人事件と暗く重いストーリーの中、希望の光となったのが15歳のテロリストでした。

突然、Youtubeにアップされる新宿駅の爆破予告。その画面に映っているのは15歳の男の子でした。

物語の始めから面白さが加速します。冗談だろうと思った矢先に、中央線が爆破されました。これはただ事ではないと、大人たちの顔が青ざめます。

爆破予告した渡辺篤人は何者なのか。誰かが裏で協力しているのか。黒幕は誰なのか。色々な謎が謎を呼び、悲劇が襲い、混沌とした世の中が描かれていきました。

自分と同じ未成年によって、妹と祖父母を失われた篤人。誰一人家族がいない彼は家族の形見と「動き続けること」を合言葉に、加害者への復讐を果たそうとします。

篤人が抱えている黒い感情と触れるたびに、私たちは何ができるのだろうと考えさせられるのです。

殺人事件で失われた命は戻ってきません。被害者の家族がどれだけ慰めの言葉をかけられようが慰謝料をもらおうが、家族が殺された事実は変わらないのです。

加害者の家族は不幸であってほしい。そう願う感情はあった。でも、彼女たちが本当に不幸になったところで、ボクの人生にどれだけ意味があるのか。

P164

被害者家族への癒しや救済ってなんだろう。考えても答えが出ませんでした。救済の手段として、加害者を罰する法律が存在するわけですが、今回の物語の主題である少年法は、未成年を守る法律でもあります。

少年法の厳格化を求める声と、未成年の更生を尊重したい声と、世の中のいろんな声が混じって頭に響いていきます。

その声に立ち向かおうとしたのが、渡辺篤人だったのです。

テロの全貌が明らかになるのは終盤ですが、全く予想もつかない結末でした。いろんな感情がうごめき、笑顔とは遠いお話しでしたが、とても楽しい読書時間になったと思います。


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