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読書|武道館

何度もアイドルを推してきました。小学生時代の°C-uteから始まり、嵐や乃木坂46、King & Princeとその時その時で愛情たっぷり応援しています。

朝井リョウさんの描くアイドルは、いろんな性格の子を網羅しているように感じました。歌や踊りがとにかく大好きな子。アイドルであることに誇り高い子。今の自分のポジションに冷静かつ客観的な子。

架空な登場人物だけど、私の目に映っているテレビのあの子かもしれない、そんな感覚で読み進めていました。

本書の中心である「NEXT YOU」は結成当初から武道館を目指すアイドルグループです。

名前が知られていない時代から、少しずつ世間に認知され、武道館に立つその日までが描かれています。

”アイドル”は言及することがものすごく難しいトピックです。人それぞれの推しやアイドル像、正義があるので、自分にとっての主張が誰かにとっての間違えや怒りになりやすいと思います。

自分が選び取ったものだから、
ちゃんと大好きなんだよね。
だから、人から笑われたりしたら、ちゃんと怒れる。

P149

まさに、アイドルを愛する我々が、感情的になる理由を言語化している気がしました。

怒りが態度や言葉として人間の外側に現れたそのとき、その人の器にはもう何も入らなくなっている。
つまり、怒るということは、自分の中にある許容量や、形を曝け出すということだ。

p114

プチンと怒りのスイッチが入る時、あぁ自分はこういうことが我慢ならないんだな、と認知するかどうかで、相手に与える印象も自分の生きやすさも変わる気がしています。

主人公の愛子が芸能活動を続けていく中で、精神的に揺れ動く場面が印象的でした。

みんなで歌って踊るのが大好きな自分と、1人の男性を愛してしまう自分、どちらも自分。けれど、自分がアイドルである以上、両立することが難しい。両方とも自分は自分なのに、なぜ両立できないのだろうと悩むのです。

最近でも、アイドルの熱愛報道や結婚報告など、色んなニュースが飛び交っています。世間からは祝福の声だけではなく、裏切られたという気持ちも溢れかえります。私だって、人生最大の推しに熱愛報道が出たら、多分泣くでしょう。

現代におけるアイドルの神格化は、やっぱりスゴイと思いました。自分たちで期待をあげてあげて、アイドル様を創り上げてしまっているんだ、と感じます。

人の幸せを見たいんだって、
そう思わせてくれる場所だよ。

P197

武道館に身を置くとき誰かの幸運を願うように、推しの幸せを常に願えるような心の広い大人でありたいと思いました。

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