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恋愛、親愛、偏愛、すべてを込めて。


脊椎がオパールになるまで

あなたと共に過ごしたい、
私の脊椎がオパールになるまで

あなたは自由になりたいと言った
あなたは散骨を望んだ
私はそれをいいと思った
血に縛られないあなたを愛していた

あなたの骨を海にばら撒くとき、
ひとかけらだけ抜きとって、
小さな口で飲み込みたい


きらめく瞳

雨ではなく桜が降っていることに気がついて目を伏せた
ビニール傘に張りついた花びら、模様みたいで可愛かった

人であふれる道を風に押されながら慌ててすすむ
赤も青もいっせいに色を変えるので急いですすむ

うつくしさはきみの瞬きの中だけに存在するから、
つららのようにまっすぐなまつ毛の隙間に消費されるすべてが憎い


求婚のエチュード

私の声が嘘になる日がくるとして、
きみはその嘘まで愛してくれますか

声だったもの、言わなくてよかったこと、
飲み込んだ言葉を、愛してくれますか

そんなことまで分からないって言いますか
(分かろうとしてくれたこと、私、一生、忘れない)

あの日のこと、お守りみたいに覚えています
全て分かりあえずとも、共に生きたいと願うのです


ラストダンス

おねがい 愛して
馬鹿みたいにキスをして

馬鹿みたいに殴って
ひざまずいてキスをして 掌にキスをして
そのまま地獄へ連れてって

夜の 海で溺れて 
あの日のことを思い出して

もしも思い出せないなら
地獄でわたしとワルツを踊って


失恋

だって、かわいかった
愛って呼ぶには軽すぎるけど、あなたに溺れるのが怖かった
好きって言うと心は落ち着いて、嫌いって言うと心がビリビリした

本当は、世界一困らせたかった
そうすれば、終わりが来ても覚えててくれると思ってた

だけど、気が付けなかった
わたしの愛情表現は、あなたを傷つける凶器だった
天邪鬼の恋が終わるスピードは、クジラが泳ぐのよりも速い

きっと、永遠を感じたのは気のせいだった
ふたりで過ごした時間が、すこしずつ星になっていく
今度こそって祈るわたしたちは、何回星を産み落とすんだろう


お呪い

本当はあの時言えば良かった 生まれて初めての宗教がお前だって
ナザレのイエスみたいにあっけなく死んでいった
ヒールですり減らしたかかと 足首の傷跡
本当はどうしようもなく泣きたかった

お前の骨 絶対に甘くておいしいから食べにいくね
あまい透明なシロップ 背骨に見立てたミルクセーキ
毎朝 くりかえす儀式
どうか早く燃やされてね


推し

もしきみが誰かを殺しても、わたしはきみを好きでいるよ

救われたとかいう勘違いで、きみを神様みたいに扱って、きみと目が合わないのをいいことに、
愛してるって言い続けてる

このまえ初めてきみに会えて、わたしは戻が止まらなかった
きみの歌う全ては、まぎれもないわたしの心臓だった

「やっと会えたね」
マスクの下で、そう呟いたら、
「やっと会えたね」
きみはそう言って笑ってた

人生に辞表を突きつけたい、けれど、
きみが同じ星にいてくれるから悪くはないな



#創作大賞2024 #オールカテゴリ部門

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