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子供たちは、いつ「障害者」の意味が分かるのか?

昨年、事業所近くの小学校より依頼があり、小学2年生の「町探検」の授業の協力を受けたことはコチラの記事の通り↓

この授業を設計していくうえで、一番頭を悩ませたことが2つ。

それは、「障害者の意味の理解」と「お土産(子供たちに持ち帰って欲しい価値)」です。

では、その辺りの苦悩や結果について、綴っていきます。


▼障害者の意味の理解

早速、脱線しますが、この写真↑は、事業所内にあるでかいホールで、児童30名集めて、お喋りしている最中、「ん?やべ‼︎ピンマイクを使うの忘れてるぅ」に気付いた時の写真です。言い訳ですがインカム付けたままだったので、「ピンマイクついてる」と勘違いしていました。


さて、学校の先生から、突然、授業の依頼が来た時に、うろたえもせず、快諾できたのは、これまで「福祉」や「仕事」や「障害者」について、保育の現場実習や就活中の大学生、ボランティアに来た高校生や中学生、事業所のご家族や地区の民生員の方々などにお話する機会があったからです。


勿論、それぞれのターゲットに合わせて、おしゃべりコンテンツを変えてきました。しかし、全てのターゲットにピッタリはまったわけではなく、このなかで最も手こずったのは高校生や中学生でした。


この世代の子達は、決まって頷きもせず、表情も変えず、僕がぶっ込んだボケにもクスリともせず、酷い時に居眠りまでさせてしまう始末。聴く方ではなく、話し方、伝え方にエラーが出ていたと思います。


それから2年ほど、試行錯誤しながらお喋りしましたが、ある女子高校生から「林田さん。話が少し難しいです」と、心をボッキリへし折られるご意見もいただいため、また作り直そうかなと考えていた頃の今回のご依頼でした。


さて、お相手は小学2年生。こうした授業をしたことのあるスタッフは、事業所に1人もいません。

準備はゼロから。
準備に許される時間は、1週間弱。

まじで、どうしよう。

そんななか、ある日の自宅での夕食。小学4年、3年の娘らから、こんな質問をされました。

「ねぇ父ちゃん、今日面白いことあった?」

福祉の仕事をしていると、ほぼ毎日利用者さんのオモシロイ出来事やハプニングに遭遇するんです。これをたまに、娘らへクイズ形式で出題して、答えを聞いて、結果を皆で大笑いするという団欒をしていました。


例えばこんな風に
「今朝、急に事務所に入ってきた中岡さん(仮名)。テーブルの上にあるペットボトルのお茶を飲むのかなと思ったけど、不思議と今回は飲みませんでした。
しかし、そのあと父ちゃんもビックリするくらい、超驚くことしました。さて中岡さん(仮名)さんは、何をしたでしょうーか?」といったようなクイズを出題し、皆で回答するといったことをしていました。


「ヒント、頂戴!」
「じゃぁ、手がカサカサの時に使うもの」
「わかった!ハンドクリームの蓋を開けて、手に塗った」
「ブッブー。手じゃない!」
「ほっぺた」
「ブー」
「目の下」
「おしい‼︎」といった具合に。
※答えは、最後に発表します


そのエピソードを話すと、娘たちは「オモシロイ人いるね」「おしゃべりできないけど、そんなこと出来るんだね」とよく口にしていました。

で、ふと気づきました。
そっか、これ横展開できるかもと。

先程は、会話の内容を少し端折りましたが、僕は娘たちとの会話のなかでは、「障害者」というの表現を使っていません。

小学校中学年の子供たちが、障害の概念を理解するのは難しく、特に知的障害の方の特徴を子供にも分かりやすい言語に転換する技は、あいにく持ち合わせていませんでした。


で、使った技が、その人(◯◯さん)の「性格」「過ごし方」「得意なこと」「苦手なこと」をひっくるめた「人エピソード」の紹介でした。

でもこれって、ノーマルに考えると、誰でもしてることなんですよね。

例えば「奥さんって、どんな人なん?」と聞かれれば、基本的な性格や家での様子や最近のぶっ飛び出来事やらをかき集めて、伝えると思います。

このように人エピソードの紹介でもって、あお空で暮らしている人をイメージしてもらうことにしました。


授業当日は、2名の利用者の方の「人エピソード」を紹介をしつつ、彼らが創作活動で作った編み物の実物も展示して、見て、触ってもらいました。うち1人はこのように紹介しました。


大杉さん(仮名)は、大きな声や音が苦手です。人とおしゃべりすることも、なかなかできません。でも、料理が得意でケーキを作れたり、紐をたくさん使って、自分だけの編み物ができたりと、得意なこともあります。

そして言葉を聞くことが苦手なこともあるので、僕たちは、写真や絵を使って、気持ちを伝えることもあります。(実際の支援の写真も提示)


このように、ここで暮らしている人を紹介する時間は、僕は障害者という言葉を使いませんでした。

理解してもらうよりも、知ってもらうことが大切だと気付いた時間でした。


※クイズの答え
中岡さん(仮名)は、事務所に入室して、スタッフの机上にあったハンドクリームを開け、片手で、ゴッソリすくい取り、これを顔に塗りたくこみました。顔面、真っ白け。まるで、歌舞伎役者のようでした。が正解です。


▼お土産
(子供たちに持ち帰って欲しい価値)

町探検の授業なので、働く人への質問もいただきました。

せっかくなので、何か持って帰れる手土産があればよいのですが、生憎、うちの事業所は製品を販売していません。

モノが渡せないのなら、記憶に残るものを、いや記憶に残るだけでなく、小学生たちに「アクション」してもらうための価値を届けようと考えました。

授業の最後にこう伝えました。


「自分にできることをひとつ、やろう‼️」

これから、学校の友達や習い事の友達、自分のおじいちゃんやおばあちゃん、周りにいる色んな人たちのなかに、「困っている人」を見かけるかもしれません。

見かけたら、やって欲しいこと。それは「自分にできることをひとつ、やろう」が、僕の願いです。


例えば
クラスに元気のない子がいたとします。
あいさつが得意な子は、「おはよう!」と元気良くあいさつをすれば良い。
遊びが好きな子は「一緒に、おにごしない?」と誘えばいい。
人を笑わせるのが好きな子は、昨日TVで見た一発ギャグをやって見せればいい。

自分にしか出来ないことがあります。

1人じゃできないことも、3人で力を合わせればできることもあります。

隣で困っている人を見かけたら、まずは第一歩。自分にできることを、一つやってみてください。


といったように、子供たちに持って帰って欲しい価値を締めくくりました。


体験は価値となり、経験は糧となるのを子供のうちから、醸成するのが、福祉の役割であると思った日でした。

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