0215猫

『82年生まれ、キム・ジヨン』を読んで日本のアラサーが思ったこと。


『82年生まれ、キム・ジヨン』は韓国でミリオンセラーとなり、日本でも続々と各書店でランキング入りしている、話題の小説だ。
帯コピーには「女性たちの絶望が詰まったこの書は、未来に向かうための希望の書」とある。

読後すぐは正直、そうは思えなかった。
なぜならあまりに共感できすぎたし、あまりに読んでいて胸が苦しいし、ラストの畳みかけがもう怖すぎる。
知らない土地の夜の道をひとりで歩き続けるような、そんな気分になった。

◎どんな小説なのか

「主人公が通う精神科の医師による記録」という形でつづられており、キム・ジヨンという女性が本当に実在しているかのように錯覚するほどのリアリティがある。

キム・ジヨンやその母の人生を振り返りながら、彼女らが「女性だから」という理由によって被らざるを得なかった不利益や、不安感や、やりきれなさを追体験していく。

読む人によっては、「大げさなんじゃない?」と感じるところがあるのかもしれない。「日本はここまでひどくないよ」という反応もあるかもしれない。
もちろん男性の兵役等、社会背景が異なるところはある。それでも女性たちが感じている思いは、日本に住むわたしたちとほとんど変わらないと思った。

◎選択肢(しかし完全に自由に選べるわけではない)がたくさんあることで、苦しむ

本書の後半に出てくるエピソードとして、育児と仕事の両立問題がある。
両親や親せきからの「早く子どもつくりなさい圧力」を受けてキム・ジヨンの夫は彼女に子づくりを提案する。
子どもが生まれたらわたしの仕事はどうなるの?と不安に思うキム・ジヨン。わたしの生活はがらりと変わらざるを得なくなり、多くのものを失うのに、あなたは何を失うの?と夫に問いかけるシーンがある。

子どもが生まれたら夫としてももちろん生活は変わるのだろう。
ただそこに、「育児のために仕事を辞める」という選択肢は一般的にはたぶんあがってこない。家族が増えることで仕事に対する責任が増してしんどい、みたいなことはあるのかもしれない(実際どうなのでしょうか)。
女性の場合は、
仕事を続ける→そのためにどういうサポートをまわりから得るか?保育園問題は?3歳神話ってどうなのよ?
仕事をやめる→そのままずっと専業主婦でいるのか?頃合いをみて復帰するのか?復帰のためになにかしておいたほうがいい?
という感じで、自分の選び取る道に応じて考えなくてはいけないことが多岐にわたるように思う。
そもそも、かならずしも結婚したら子どもをうまないといけないわけじゃないし。
あくまでもわたし個人の想像ではあるがなんというか、分岐点が多すぎて考えるのがたいへん…

しかも、下手に選ぶ余地があるだけに、選択肢があるだけ良いじゃん!とか、自分の自由にできていいよね、というような見られ方が大いに予想できる。たぶんそんな楽しげなことではなく、実際には多くのアンコントロールな条件の中でうまく折り合いをつけているんだろう。
そして「自分が選んだ道だからがんばらないといけない」という呪縛がうまれる。

これって女性の社会進出が進んだ国あるある、なのではないだろうか…。

◎この本の希望って何だろう

女性であることによって感じる窮屈さが存在するとして、ではそれに配慮できない男性が悪い、男性たちよ、目を覚ませ!と訴えかければいいのだろうか。それも違う気がしている。
本書を読んでいても感じるのだが、男性たちは(人によるけど…)配慮してないことはないのだと思う。
ただ女性が感じる窮屈さが「外からわかりづらく」「日常的で」「ささやかではあるが長期的な」ものだから、ピンと来ないんじゃないだろうか。

冒頭でわたしはこの本を読んでも希望をもてなかった、というようなことを書いた。
それでもこの本が希望の書になりうるとすれば、女性たちの現状を、そしてそれと表裏一体の男性たちの現状をかたりあうための「共通言語」になれるということなのかもしれない。

韓国では、この本を読んでいると公言したことで炎上した、などということが起こったらしい。
日本でも、女性の生きづらさについて声を上げることを揶揄する人が一部にいる。
そこには男性vs女性の構図が透けて見える。そういうことじゃないんだよなぁ、といつも思う。

めずらしくまじめに書いてしまったけれども、自分が生きている中で疑問に思ったことは素直に発信したいし、まわりの人たちとも話してみたい。
ということで、読書を通じて思ったことを書いてみた。

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