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経験と想いを伝え続ければ、大切な人を救うことはできる

昨夜突然、母から電話が入った。
「明日暇?お茶しない?」

文章だけ見ると明るいお誘いに見えるが、声はどんよりと暗い。これは何かあったなと察した。父や祖父母との関係で限界が来ていたようだ。

母は自己犠牲をしてしまうタイプだ。しかもエネルギーを搾取する人にもギブする。もちろん、優しくて愛が深い人だと尊敬しているが、最近は胃や食道に不調が現れ、本人も私も良くないと思い始めていた。

その矢先に訪れたのが、昨日のSOSだった。幸い予定も何もなかったので、二つ返事で会う約束をした。

***

昨夜の母の落ち込み具合を見ると、どう接してあげようか、ちゃんと寄り添えるだろうかと緊張していた。しかし会うと思いの外、元気そうな様子だった。

カフェでデザートとドリンクを頼み、最初は他愛もない話から始まった。

母はよく喋る人だ。職場の人といったランチが美味しかった話や、最近見た夢から感じたこと、気分転換に観始めた英語のショートドラマが面白くてハマっていること、安くて質のいい通販サイトを見つけた話……まぁよく喋る。

昨日のしんみりした状態からの立ち直り具合に、思わず笑ってしまった。

しかし、昨日の話の続きになると母の表情が曇る。ひとまず現状や不安、不満を傾聴する。客観的に聴いても、無理をしていることが分かる。頃合いを見て改めて「ママは結局どうしたいと思っているの?」と問いかけた。

「自分のやりたいことをしたい。うちは、1人で生きるのが向いている。」

やっぱり、そうだよね。昨日よりも、具体的でしっかりとした声で本音を知ることができて安心した。

母は元々やりたいことが明確、かつたくさん出てくる人だ。占い師に「やりたいことがあり過ぎるタイプだから絞らないといけない」と言われたことがあるそうだ。

だから、1人で生きるために副業を考えていたり、遠い未来の話として「会社を作るとしたら、この名前にするんだ!」と楽しそうに話したりと、ちゃんと自分がどうしたいかを決めて、未来を描いていた。

教えてくれた未来の会社名がまさに真理を突いていて「それがママの答えじゃないか!」と思わず言ってしまうくらい明確だった。

そんな母がやりたいことを抑えてしまうくらい、不安やストレスを感じる日々が続いている。遠い未来の話は見えたので、次に直近の未来をどうしたいのかを問いかけた。そこに対しても、今できる第一歩をちゃんと考えていることを話してくれた。

母はやっぱり強いな、すごいなと心から感じた。
そして、大丈夫だという気持ちに変わる。

***

しかし、ここ最近母と複数回やり取りする中で1つだけ気になっていることがあった。それは感情を我慢しすぎていることだ。

母と会う前に何か私ができることがないかと思い。メンターにアドバイスを求めたら、「傾聴」と「自分の経験ベースで学びを伝えること」を教えていただいた。

傾聴や寄り添いはやっていたが、自分の経験や想いを伝えるのは電話やメールでは難しくできていなかった。

今日は直接会うから伝えられる。
今、私が母に提案できることはただ1つ、書くことだ。

書いて自分の感情と向き合うことはずっとやってきたので伝えられるし、必要なこともすぐに思い浮かんだ。カバンにある本を仕込んで、カフェへと向かった。

***

一通り母の話を聴いて、そろそろ出ようとしたので、思い切って母に一冊の本を見せた。

「この本に書いている、エクスプレッシブ・ライティングやってみない?」

口頭で経験を伝えることも考えたが、より母に納得して取り組んでもらうには、すでに成功している人の例や具体的な研究結果も交えて伝える方が良いと思った。

そこで私は以前、買って読んでいた『書くだけで人生が変わる自己肯定感ノート』を母に見せながら説明した。

『エクスプレッシブ・ライティング』
1980年代にアメリカの社会心理学者ジェームス・ペネベーカー博士によって生み出された方法。

自分の感じたことを紙に書き出すことで、不安やストレスを和らげたり、脳のワーキングメモリーを解放し頭をスッキリさせたり、感情をコントロールできるようになったりと心身に良い効果があるという研究結果が報告されている。

こういうのを勧めても今まではやろうとしなかったので、どうかな?と思ったが意外と興味を示してくれた。

「ママは自分のネガティブな気持ちに蓋をして、良い人でいようと頑張っているように見える。」

「ネガティブな感情は悪いモノではないよ。だけど溜め込んだり、抑え込んだりすると苦しくなるから、紙に書き出してみたらどうかな?」

「ママはよく頑張っているよ……」

自分の想いを乗せて、母に提案したら涙を堪えながら

「家族に対してネガティブな気持ちが出ると、そう思っちゃダメと我慢してきたかもしれない。自分に無理をさせていたんだね、ありがとう。」

母の抑えていた感情や想いに触れると、私も胸が痛んだ。それと同時に感情を解放するきっかけにもなれたと思うとほっとした。

***

母は気が強くて、ハキハキしている人…だと今まで思っていた。しかし根っこは自己肯定感が低く、自信が無い人間だと少し前に母が教えてくれた。

幼少期に両親から自己肯定感を傷つけられる言葉を言われたり、人生の中で人から馬鹿にされる経験が多かったそうだ。

そのエピソードと「自己受容感が全ての土台で、それができた上で自己肯定感は育つ」というコーチングでの学びを踏まえて、今の母のために私が伝えられることは『エクスプレッシブ・ライティング』だと閃いた。

こうやって母の心を軽くすることができたのも、コーチングや心のあり方の学び、自分が好きで深めていたノートの学びがあったからこそ。自分の経験が大切な人の役に立てたことがとても嬉しかった。

「ありがとう、やってみるね。」
「この本、ちょっと借りていい?夜読みたいから。」

母を想う気持ちが伝わって、自分の意志で未来のために動こうとする母の姿に心が満たされた。

”時間はかかるけど、伝え続ければ伝わる”

”お母さんを変えようとするのではなく、お母さんを信じること”

今朝、メンターが伝えてくれたことを強く実感した時間だった。私が思っている以上にお母さんは強いし、ちゃんと私の想いを受け取ってくれる。

さらに、母に安心感や希望を感じて欲しくて、私も未来の展望を母に伝えた。「Rinaならきっとできる!」と逆に私が最後は勇気づけられた。

やっぱり、母は強くて、優しくて、偉大だ。

お互いの未来に希望を感じながら、良い気分で過ごした日曜の昼下がりだった。母を信じつつ、また自分の今できることに集中しよう。

2024.4.14.    Rina

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