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【読書メモ】駒井稔+「光文社古典新訳文庫編集部」編著『文学こそ最高の教養である』

概要

光文社古典新訳文庫の編集長・駒井稔さんが光文社古典新訳文庫に対する思いと、『文学こそ最高の教養である』について私見を書きました。

駒井稔さんと光文社古典新訳文庫

この本は駒井稔さんと光文社古典新訳文庫の翻訳者たちとの対談を収めたものです。駒井稔さんはこの本の編著者の一人であり、光文社古典新訳文庫の編集長です。

私はかつて、 2019年6月に開催された駒井稔さんと「100分で名著」のプロデューサーの秋満吉彦さんのトークセッションを聞きに行ったことがあります。(6/30開催「甦る古典、受け継がれる名著 秋満吉彦×駒井稔トークイベント」)そのとき、自身が感じた古典の楽しさをなんとかして伝えたいというお二人の熱意が、「100分で名著」や光文社古典新訳文庫の創作につながったのだということを知りました。

この本を読むと、トークイベントのときと同様に、駒井稔さんが大勢の人に古典文学を楽しんでもらいたいという気持ちが伝わってきます。いまいくつか手元にある光文社新訳文庫の本を手にとってみると、

・読みやすい翻訳(「今、息をしている言葉で」をキャッチフレーズに編集されている)
・解説や年譜の充実

など、光文社古典新訳文庫には読者に古典を親しんでもらう仕掛けがいくつかなされており、駒井稔氏の情熱を感じとることができます。

この本での駒井さんと翻訳者たちの対談は、古典文学の背景をさらに知ることができ、読むとさらに古典文学に親しみを持てるようになります。

即効性がない教養が大切な理由とは何か

日々の生活において古典文学とは縁遠いものですが、わざわざ古典文学を読み教養を身につける理由とは何かと考えました。この本に書かれた駒井さんの回答をまとめると以下のように要約されます。

・文学とはすぐに役につかないから読むのであり、役に立たないからこそ大事である
・文学には普遍的な価値があるどころか新しい読まれ方を待っている

「役に立たないからこそ大事である」とはどういうことなのでしょうか? いま私は、桑子敏雄『何のための「教養」か』を並行して読んでいて、古典文学はすぐに役立つような知識ではないかもしれないが、「生きる底力」となる可能性があるのではないかということに気づきました。

現代は多忙な時代で、情報が流動的でありノウハウがすぐに陳腐化する時代です。そのような時代こそ、すぐには役に立たないが、いざというときの精神的な拠り所(自分の判断の軸)となりうる、即効性のない教養を身につける必要があるのだと思います。

駒井稔+「光文社古典新訳文庫編集部」編著『文学こそ最高の教養である』を読んでそのように感じました。

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