「 ある男 」の映画情報・評価・感想レビュー
読売文学賞を受賞した作家・平野啓一郎さんのベストセラー小説を「 愚行録 」「 蜜蜂と遠雷 」などで国内外から高い評価を受ける石川慶監督が映画化した本作。
主要キャスト陣はもちろんのこと、脇を固める俳優まで非常に豪華。
日本映画界屈指のオールスターキャストと言えるでしょう。
すでに2022年の邦画シーンを代表する作品のような予感をさせてくれる。
ある男
あらすじ
妻が愛した夫は全くの別人だった。物語の結末はいかに。
公開日
2022年11月18日
上映時間
121分
キャスト
石川慶(監督)
妻夫木聡
安藤サクラ
窪田正孝
清野菜名
眞島秀和
予告編
公式サイト
作品評価
映像:4/5
脚本:3.5/5
キャスト:4.5/5
音楽:3.5/5
リピート度:3/5
グロ度:2/5
総合評価:3.5/5
考察レビュー
冒頭から安藤サクラの演技が素晴らしく、物語の世界にグッと引き込まれました。
叙情的な音楽、石川作品に見られる音の空白も相まって、つい前のめりになって観てしまうような、そんな感覚を抱ける作品でした。
子役にいたるまで演技力が凄まじく、「 戸籍交換 」という非日常が話の軸に据えられていながら、それをうまく日常に接続して自然な生活や繊細な心情を描くことに成功していたように思います。
演技で言えば、仲野太賀さんが秀逸。
台詞らしい台詞もなく、ワンシーンのみの登場ですが、その人の苦悩に満ちた人生の奥行きを感じさせるような名演に、脱帽の一言でした。
そんな凄まじい演技で構成される作品だからこそ、惜しかったのが脚本。
人種や生い立ちなど、当人では選べない人生の苦しみから逃れる手段が、「 戸籍交換 」となるわけですが、登場人物それぞれが抱えている苦しみがうまく噛み合っていないように感じられました。
映画という尺の都合のような気もします。
「 戸籍交換 」の単なる要素として扱ってしまうにはセンシティブな問題なので、もう少し丁寧にそれぞれを描く必要があったと思います。
まとめ
愛していた人が全くの別人だった、という設定は意外とありがちで、近年であれば長澤まさみ主演の「 嘘を愛する女 」が思い浮かびます。
しかし、本作の安藤サクラは探偵を雇い、真実を明らかにすべく精力的に行動していた長澤まさみとは真逆で、代わりに調査をする弁護士・城戸の報告を待っています。
そうした登場人物の描き方もあり、ストーリーの起伏や真実を得たときのカタルシスは少ないですが、静かな物語だからこそ、ふとした視線や台詞と台詞の行間など、役者の演技力が際立つ作品になっていたと思います。
さまざまな考察を呼び、意味深な余韻を残すラストシーンまで、魅せてくれる映画でした。
映画と合わせて、原作も読んでみたくなりました。
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