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とけい 【与太子話】

 もしかして地球の自転速度が速くなっているのではないだろうか、と疑うほど時の過ぎるのがはやく感ずる。


 今年ももう3分の1が終わろうとしている。


 はやい。


 あまりのはやさに、ちょっとパンツがずれているような気持ち悪さを覚えたから、掛け時計を買ってみた。

ダイソーのもの。500円(税抜)。


 私は時計が苦手だ。だから、部屋には温湿度計付の小さな時計しかなかった。むしろこれは時計としてではなく、温度と湿度を確認するために使っていて、時間はPC画面の右下に小さく出ている時計かスマホで確認していた。なにしろ時計のチクタク音が苦手なのだ。もちろん、手はフックではない。両手はちゃんとあるし、チクタクワニに追い掛けられたこともない。だが、私もおそらくチクタク音が常に聞こえる場所にいたら、逃げ出したくなるにちがいない。


 部屋に時計がないとすぐにパッと時間が確認できないから、不便さはあった。だもんで、買おうとして何度か探してみたこともある。でも、なんとなく気に入るものがなくて、先延ばしにしていた。


 我が家の居間には電波時計というのが掛かっている。電波時計とは、標準電波というのを受信して自動で誤差を修正してくれるという大変便利なやつなのだが、これがたまに、短針と長針が逆方向に高速でぐるぐる回り秒針が右往左往している、という状態になることがある。時計が時間を合わせようとしているときとか、電池がなくなるとこうなるらしい。夜中にこのカオスな状態に遭遇すると、首筋に冷気を感じるというか、背後に気配を感じて思わず振り返りたくなるというか、ちょっと不気味なのだ。


 どういうわけか、大きな掛け時計は見張られている感じ、追われている感じがしてしまう。急げ! もっとはやく! 合理的に! 効率的に! もたもたしていると時間がなくなるぞ! いそげいそげいそげ! と。時間貯蓄銀行から灰色の男たちがやってきそうではないか。モモに助けを求めたくなるではないか。




 やはり私は時計が苦手だ。チクタク音が苦手、電波時計のぐるぐる高速回転が苦手、大きな掛け時計は見張られてる追われてる感があって苦手、と、時計の苦手っぷりを列挙してみたが、そうは言えども、私が持てる時間が有限であることはたしかだ。




 買ったばかりの時計、こちらの気も知らないで、容赦なく淡々と音も立てずに回っている。




 静かでよいではないか。静音タイプ。



クロ:「めしの時間だっ!」

 ちなみに愛猫クロくんは、時計なんかなくても時間に正確です。



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