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商業出版する方法#50〜企画書は出版社に「訪問営業する」のか?!

元KADOKAWAのビジネス・実用書出版コンサルタントの渡邉です。

「企画書を出版社に持ち込むってことは、営業するんですか?」

そんな質問が起業家や経営者から訊ねられることは多いです。

結論から申し上げますと、営業や訪問営業みたいなことは「基本しません」し「しない方がベスト」です。

基本的に企画書は、出版社あてに「郵送で」提出していきますし、郵送で毎日のように送られてくるのが常套でした。
私も出版社時代、出社したら企画書がデスクに届けられてたりしてましたね。あるいは、企画持ち込みを受け付ける窓口があったりして、そこでの事務担当の人がまずは郵送されてきた企画を整理して、編集者に回覧する、という手順で企画を読んでたりもしました。


大事なのは「営業」ではない、ってことです(でも起業家や経営者は、どうしても”営業”という言葉を使いがちですけど・・)。
あくまでも「出版社へ企画を提案する」というスタンスです。
よって、電話かけていきなり「企画書を持ち込んでもいいですか?」と聞いたり「今から持っていきたい」とか言ったり、「企画書見てほしいんで会ってもらえませんか」「話聞いてもらえませんか」なんてことを口走っては完璧にNGです。


ましてや、いきなり「会社訪問」して、編集者に会いたい!みたいなのは、本当にダメです。
実際私の知り合いの著者から聞いた話ですが、その著者が知り合いのビジネスパーソンA氏に、本を担当してもらった編集者の会社や名前を特別に教えたそうです。
すると、そのA氏はいきなり、出版社の編集者に「飛び込み営業」をしにいき、激怒。著者のところにクレーム電話はいくわ、A氏はその出版社を「出禁」になりました。


このように、あっという間に「門前払い」です。


誤解を恐れずあえて申し上げますが、「どこの馬の骨ともわからない人と、いきなり会う」ってことは、メーカーである出版社にとって時間のロスです。
かつて昭和の時代であれば、そんなテレビドラマみたいなこともあったでしょう。しかし今は、そして現実は、違います。
中には、「そんな・・企画書をせっかく持って行ったのに、なぜ丁寧な対応をしないんだ!」と思われる方もいらっしゃいますが、著者候補(本を出したい人)はお客様・・・ではないかな、って思いますし、出版社にとっては「読者(お客様)」は通常の消費財の顧客と異なった見方をする存在でもあります。 

ただ、こうもうしてはなんですが、なんだかよくわからない人から「本出したいんで話を聞いてくださいよー!」とか言われても、「はい、わかりました」って応じられますか?
編集者だって、スケジュールもあるんです。仕事もしなきゃいけないんです。はっきり言って、そういう行為って相手への気遣いもない、単なる「押しかけ営業」でしかなく、それに丁寧にお客様扱いしろ・・ってのは、やっぱり違うんじゃないかなって思います。
ピュアに言っても「驚愕」しちゃうし、それこそ出版社としてはメディアの一員として「刃物を持った危険な人」なのかもしれない・・と身構えてしまいます。
言論を扱っている組織なので、ぶっちゃけ・・いきなり怒鳴り込んで、批判して、刃物をふるわれる・・・って会社も過去あるもんですから、さすがにそれは防がなきゃ!ってことなんです。

そういう「防犯」の意識もあって・・・、いきなり来る人は受け入れられない。ってことです。


また訪問したり、営業したりしても「出版できるかどうかはまた別の話」です。
編集者に会うことで、会わないよりも出版の確率は上がってくることも多いが、それを強要したりお願いしたりするのは、流石にビジネスパーソンのマナーとしてどうかと、、てことです。

私も出版のコンサルやプロデュースを行うにあたって、サービスの中で渡邉から出版社へ企画を持ち込むようなことも行っています。
でも気をつけているのは、「いかに営業的にならないか」です
あくまでも提案なので、「企画を提案させていただきます」って言って、メールや郵送ベースで持ち込みは行っていきます
知人の編集者へ持ち込むにしても、いきなり「いい企画あるので、会って話させてください」なんてことは言わないですね。
編集者の”心理”をわかっているので。


そう、とにかく最初は「企画書を編集者に届ける」だけの仕事をするのです。
編集者は、企画書はちゃんと見てます。読んでます。
そこから「企画書拝見しました。ちょっと一度話をさせてもらえませんか」という反応が返ってきたら、初めて「良し!手応えがありそう〜」とワクワクして、ZOOMや対面などでお会いして、もうちょっと話をさせてもらう・・・という流れに至るのが、非常にスムーズなのです。

ということで、出版社へのアプローチのポイントとして「企画書を持って営業する」という意識を手放し、あくまでもファーストステップは「提案する」「出版社の編集者に自身の出版企画を届ける」という思考に切り替えて、コツコツ行動する・・を覚えておきましょう。


編集者は「アツい」人は好きですが、「ぐいぐいのアツ苦しいビジネスパーソン」は忌避する傾向にあります。
申し訳ないですが、経営者や起業家の中には「ぐいぐいのアツ苦しい人」もいらっしゃいます。そしてそんな人にかぎって、出版するほどのネタもコンテンツも、ステイタスも「無い」場合が多いです。
熱意は大事ですが、情熱と熱意だけでは編集者に選ばれることはできません。編集者や出版社に「選ばれる」ことがとても重要な商業出版の世界において、グイグイ押し込むような行動ほど要らないスキルです。

クールでありながらも、確かな実力と、アツい魂をもった方とお付き合いしたい。そんな人ほど、良い著者として読者からも世の中からも愛されやすいです。

本の世界においては「グイグイ営業」は、いっさい要らないのです。



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