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感じきること ④

あやつり人形

前回の続きです(第1話はこちら)。

感情をないものとしてフタをし、淡々と国を治めてきた前世のMさん。
次に見た場面は、女王を引退し、余生を楽しんでいるところでした。

ある日、お城近くを通りかかった旅人と意気投合するという出来事があり、この旅人を気に入った女王(元ですね)は、お城に住まわせることになりました。
「これまで頑張ってきたんだし、楽しんでもいいじゃない。どうせ私の元を訪ねてくる人なんていないんだし」と、気楽な感じで、話し相手になってもらっていました。

孤独な日々の心の隙間を埋めたい気持ちもあったのでしょう。
平穏で、笑顔も見えるような日々がようやく訪れました。

ところが、です。

引退した元女王の復権を狙う側近が、いつの間にか城に住みついてしまった得体のしれない旅人を厄介者扱いし、さらに、その旅人に懐柔されていく元女王を見て次第に危機感を抱いていきます。

自分たちの知っていた強い女王が、見ず知らずの男に心を開いているなんて…!
自分たちには見せたことのない笑顔、聞いたことのない笑い声をあんなに気軽に見せるなんて…!

側近たちの嫉妬や焦り、そして国の将来を憂う思いが交錯し、やがて旅人は罠にはめられ、殺害されてしまいます。

悲嘆にくれる女王。

やっと手に入れた穏やかな日々だったのに…

権力を持っているのは私だと思っていたのに…
実際はそうじゃなかった。
操られていた…

自分の力なんかじゃない、すべては幻想だったのか…
権力って何なんだろう…

そんな思いに打ちひしがれながらも、再び彼女はまつり上げられ女王の座に返り咲きます。今度は自分の意思ではなく、あやつり人形のように。

「国のために尽くす生き方が正義です。あなたは立派ですよ」

最期の場面。ベッドの周りを側近たちが囲み、そんなふうに女王を讃える言葉をかけています。けれど、女王はむなしい気持ちで聞いていると言います。

やがて息絶え、魂だけになった女王が向かった先は、妹のお墓でした。

「本当は生きているうちにここに来たかった…わあ、初めて来る。
ここに妹はいないってわかってるけど」

Mさんは感慨深げです。

「だったら、妹さんに会いましょう」

と、妹さんの魂を呼びます。

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ニコニコとした笑顔で現れてくれた妹さん。Mさんは思わず抱きつき、「ごめんね。ごめんね」と泣きじゃくりながら謝ります。

「やっとそういうことができるようになったのね」と妹さんは冗談めかしてほめてくれました。

そして晩年、話し相手になってくれた旅人も呼んでみます。
「よっ!久しぶり!」と気さくな感じで現れてくれました。本当に楽天的な人のよう。

「会えて良かった」と伝えます。

そして、3人の魂はたくさんの光に包まれ、Mさんのわだかまっていた心も解きほぐされていくようでした。

Mさんにこの人生を振り返ってもらうと、

権力や力を手に入れなければと、かたくなに、盲目的に信じていた。
でも、そればかりが人生じゃない。本当の幸せじゃない。
すべて幻想だった。

もっと身近に大切な人や幸せがあって、分かち合うものだってわかった。
次の人生では妹を見つけて、一緒に楽しく暮らそうと思ってます。


今の人生とこの前世の出来事には、どんな関連があると思う?と聞くと

仕事、仕事の毎日で、ライフスタイルの大半を占めているけれど、やっぱりそうなると無感情になってしまっている気がする。

まず人を大事にする、次に仕事という順番で…見直したほうがいいのかな。

仕事さえしていれば、お金ももらえて生活もできて…と思っていたけど、そうじゃないのかも。

人を大事にすることだけでなく、感情を自由に表現すること、感じきることも大事。

妹が死んでから悲しみや後悔をちゃんと感じていれば謝ることもできたし、もしかしたら妹が死ななくてもいい関係でいられたかもしれない。

そっちに心を向けられるような…感情って大事なんだなぁ。

と、しみじみとされていました。

私も思わず「自分が何を感じて、何を望んでいるのか、心から湧き出るものをそのまま、信頼していけるといいね」と声をかけました。本当に大事なのは自分を大切にすることだよね、という意味も込めて。


自分の感情を素直に味わい、感じきり、必要な時に素直な表現もできるようになったら…

そして、それができるようになったMさんの、15年後の未来を見に行きました。


続きはまた次回。

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