唎酒チャリンカー旅紀行

自転車で酒蔵を周り、その土地土地の風土共にお酒を紹介していきます。たる出版というお酒の…

唎酒チャリンカー旅紀行

自転車で酒蔵を周り、その土地土地の風土共にお酒を紹介していきます。たる出版というお酒の専門雑誌を発刊している出版社でお酒の取材をしてきました。酒造りは農業であり、観光の核にもなる大切な産業。土地を守り、文化を創る産業だというのが専らの持論。/SAKE DIPLOMA

最近の記事

ベテラン杜氏に支えられた酒蔵 山形・男山酒造

しばらく旅行記をお休みしていて、もはや文章の書き方すら忘れてしまったようなもんですが、やっと落ち着いて文章を書けるようになったので、続きを書いていきたいと思います。もうすぐこの旅から1年になるため、ほぼ回想録となってしまいます。  さて私の旅はというと、東京から盛岡を目指したわけで、米沢はちょうど中間地点。米沢の銘酒東光の酒蔵を出て、山形県を縦断。山形県は〝吟醸王国〟と呼ばれるほど、銘酒の多い県だけに、道中にはたくさん酒造があるのだけども、東光を出て向かったのは山形市の

    • 自転車旅 3月の会津・米沢

       喜多方のほまれ酒造を出たあと米沢に向かった。喜多方から米沢までは峠を一つ越えていく行程で距離はだいたい45kmほど。天候が崩れるという天気予報だったため、日が暮れる前までには米沢に入りたいと思いながらも、色々と酒蔵の人と話していると時間はおもむろに過ぎていた。  ほまれ酒造を出たのは14時。出てすぐに緩やかな登り坂へと変わっていく道程、国道121号線は、歩道の整備もされていて順調な走りだしだった。しかし登るにつれて、だんだん天候が怪しくなり、空は蒼炎の雲に覆われ、雪が舞い始

      • 東光の酒蔵 小嶋総本店

        「為せば成る、為さねば成らぬ何事も...」という有名な文句を残した、上杉鷹山が一生をかけて改革をした土地、米沢。街の至る所に明治・大正時代に建てられた建物が残り、情緒的な雰囲気がただよう。この土地で400年以上酒造りを続けている酒蔵が『東光』の銘柄で有名な小嶋総本店だ。 創業はなんと慶長2年(1597年)。江戸時代以前に創業して酒造りを続けている酒蔵は数える程度しか残っていないから相当古い類の酒蔵だ。全国でも11番目に古いとかで、現蔵元の小嶋健市郎さんは24代目。歌舞伎の市川

        • 大和川酒造店-北方風土館 契約農家と作る米にこだわった酒造り

           喜多方の酒蔵ではもう一軒、大和川酒造店へ。こちらも見学ルートがしっかりと整備され、趣のある酒蔵の中を案内してもらった後は試飲コーナーへという流れになっている。駅から歩いてくると、木造の建物が見えてきて、壁沿いにぐるっと北側に回ると門があり中へ。ノンアポイントでも事務所にいる女性スタッフに声をかけると、15分刻みで中を案内してくれる。  正直行くまでは詳しくは知らない蔵だったけれども、こちらの代表銘柄『弥右衛門』は渋谷の東急デパートに入っており、最近行くたびにやたらと目に止ま

        ベテラン杜氏に支えられた酒蔵 山形・男山酒造

          ほまれ酒造 福島県で製造量1、2を争う代表的酒蔵。社長の妹はあのキャスター

           喜多方市、市街地の北部に位置し、酒蔵が集まる中心地からは少し離れたところに酒蔵が位置する。大きな貯蔵タンクが並び、入口の前に来ると酒蔵というよりは工場のような外観なので、「あれここでよいのか?」と内心思ってしまう。看板にも”ほまれ酒造”という文字は見えにくく(見落としていただけかもしれないが…)”雲嶺庵”とあるので自転車でそのまま通り過ぎてしまうところだった。少し入りづらいが、臆せず中に入っていくと、母屋が見えてくる。  暖簾をくぐって、中に入るとまず目に飛び込んでくるのは

          ほまれ酒造 福島県で製造量1、2を争う代表的酒蔵。社長の妹はあのキャスター

          末廣酒造 嘉永蔵 未来永劫愛される普遍の旨さを追求する酒

           趣のある木造の母屋と存在感のある白壁の蔵が二つ並び、伝統の酒造りの匂いを感じさせる末廣酒造。現在は会津若松市内にある嘉永蔵と、会津美里町にある博士蔵の二つの蔵で酒造りが行われている。主に嘉永蔵では手仕事による酒造りがなされ、博士蔵は最新鋭の設備のもと近代的な酒造りがなされているそうだ。  嘉永蔵では観光客向けの蔵見学が毎時行われている。予約の必要はなく、毎時定時に蔵の中にいれば「蔵見学が始まりますよ〜」といった号令とともに、鴨居に吊るされた鐘を「カーン、カーン」が鳴らされス

          末廣酒造 嘉永蔵 未来永劫愛される普遍の旨さを追求する酒

          東北チャリンコ旅2日目続き 南会津ー会津若松

           南会津町ではもう一軒国権酒造に立ち寄って社長の細井信浩さんとお話しだけさせていただいた。  外に出ると、西側から黒い雲が立ち込めてきているのが目につき、山の上の天気のように、刻々と天候が変わっていく様子がわかった。ふとすると、雪がチラつき始めた。これはヤバイなあと思いつつも、前日の15時から食べているものと言えば、道の駅での揚げまんじゅうだけだったので、腹が減って仕方がなく、少し天候の様子を見るつもりで道路沿いの〔まもる食堂〕という大衆食堂に入った。元気のいい、おばちゃん

          東北チャリンコ旅2日目続き 南会津ー会津若松

          会津酒造−若き9代目蔵元が醸す、至高の日本酒 −

           さてここまではただのチャリンコ旅行記だったが、この旅行の本来の目的は自転車で各地の酒蔵を回ろうというもの。少しずつ酒蔵情報を出していきます。  日光と会津の間にまたがる山王峠から降りてきて最初にある町、南会津町(旧南会津郡田島町)。町民が日本有数の豪雪地帯と自負するこの町には酒蔵が4軒ある。会津酒造、国権酒造、開当男山酒造、花泉酒造、いずれも全国の新酒鑑評会では金賞常連蔵だ。  例年ならまだ雪が残っていて、4月の半ばまでは根雪が残るそうだ。「この時期に自転車で走れるなんて

          会津酒造−若き9代目蔵元が醸す、至高の日本酒 −

          東北チャリンコ旅2日目 湯西川温泉から峠を越え、会津へ

           あたりがだんだん薄明るくなり始めた頃目が覚めた。眠ったとはいえ、久々に駅のベンチで寝たうえ、駅舎の中は締め切ってあっても寒く、寝たのか寝てないのかわからない気分だった。  外に出てみると、前夜吹雪いていた雪は止み、空は雲一つない天気だった。こういう晴天の日の朝は特に冷える。時々刻々と明るくなってくる景色を見渡すと、ダム湖に沿う山々の頂上に朝日が当たり始め、白く輝いて見えてきた。  手元の温度計では氷点下2度を示している。幸い道に雪は積もっておらず、雪が溶けたあとの水たまりも

          東北チャリンコ旅2日目 湯西川温泉から峠を越え、会津へ

          東北チャリンコ旅1日目 東京ー奥日光

           旅は埼玉県の久喜駅から始まった。自宅のある三軒茶屋から地下鉄に乗ると終点は久喜。実は今回乗っていく自転車もメルカリで買い、久喜で引き取った。都内は信号が多く走りづらいため、そこまでは自転車を運んでスタートすることにしようと思っていた。  都心から40kmほど北になるので、「東京から自転車できました」と言うには語弊が出てきてしまうかもしれない。が、1日目は日光の先まではいかなければならない計画だったため、致し方なかった。  大学時代自転車を買って、東京から北軽井沢まで行った

          東北チャリンコ旅1日目 東京ー奥日光