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会津酒造−若き9代目蔵元が醸す、至高の日本酒 −

 さてここまではただのチャリンコ旅行記だったが、この旅行の本来の目的は自転車で各地の酒蔵を回ろうというもの。少しずつ酒蔵情報を出していきます。

 日光と会津の間にまたがる山王峠から降りてきて最初にある町、南会津町(旧南会津郡田島町)。町民が日本有数の豪雪地帯と自負するこの町には酒蔵が4軒ある。会津酒造、国権酒造、開当男山酒造、花泉酒造、いずれも全国の新酒鑑評会では金賞常連蔵だ。
 例年ならまだ雪が残っていて、4月の半ばまでは根雪が残るそうだ。「この時期に自転車で走れるなんて珍しいですよ」と笑われてしまった。幾分寒さが残るだけ、少しは冬を体験できたかもしれないが、季節外れのことをやっていることは間違いないだろう。

 この日は会津酒造を訪ねた。会津酒造は元禄年間の創業。およそ330年の歴史を有している名門蔵だ。酒造りの見学は衛生上の都合で難しかったが、もともと酒造りをしていた、玄関先を案内してくれた。長い歴史の間には多くの歴史上の人物が泊まっていったそうで、若かれし頃の近衛文麿首相も泊まったとのこと。かつて番台が置かれていた畳座敷の鴨居には近衛氏が残した「信義」という書が飾られている。

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 現在は32歳の渡部景大さんが蔵元兼杜氏を勤める。この日は弟の渡部裕高さんが案内をしてくれた。「兄貴が帰ってきて、ここ数年本当に良い酒を安定してだせています」と話す裕高さん。伝統の酒造りはそのままに、新しい技術を取り入れながら丁寧に醸したお酒は、3年連続で新酒鑑評会の金賞を受賞している。
 その酒質の特徴はなんといってもの口当たりの柔らかさだ。「しっかりとした味わいがありつつも、後味がきれいに抜けていくお酒を理想としています」と話す味わいは、口の中でそのまま溶け込んでいくような感じさえ受ける。この柔らかさはどこから生まれるのだろう?それは地下40mから汲み上げている超軟水の仕込み水から生まれているのだそうだ。
 硬度の低い水は一般的に酒造りには不向きと言われるが、冬季気温が下がり、安定した温度でじっくりと貯蔵できる南会津ならではの風土によって、超軟水でも、とても良いお酒が生まれるようだ。この特殊な水と風土、そして高い技術を持つ若き杜氏がいてこそ醸せる日本酒。見かけたら是非手に取ってもらいたい。

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 銘柄は『會津』『山の井』の2ブランド。『會津』は福島県の酒米〔夢の香〕や〔福の香〕、南会津産の〔五百万石〕など地元産の米を使い、主に県内を中心に流通をしている、地産地消型のブランド。最高峰の大吟醸には旧田島町にちなみ『田島』と名付けられている。一方『山の井』は渡部景大さんがコンセプトを決め、〔山田錦〕や〔雄町〕といった、県外産の酒米を使うなどして醸し、県内外の特約店に流通されているそうだ。季節ごとにラベルの色が変わり販売されるものもあり、四季折々の味わいを楽しめる。
 32歳と28歳の日本酒業界では特に若い二人の兄弟が二人三脚で醸す至高のお酒。今後の展開に心からエールを送りたい。

*筆者、一眼レフを懐に抱えるカバンに入れて走っていたのにもかかわらず、いざカメラの電源を入れると「SDカードが入っていません」と表示され、別のカバンに入れっぱなしで忘れてきたことを思い出す。焦って、しどろもどろとしていると、渡部さんが快く、普段使ってないので旅が終わるまで使ってくださいと16GbのSDカードを貸してくれました。本当に感謝。ありがとうございました。

会津酒造

蔵DATA
住所. 〒967-0006 福島県 南会津郡南会津町 永田字穴沢603
TEL. 0241-62-0012  FAX. 0241-62-0923
営業時間8:00~17:00 定休日:土日祝日
公式サイト. http://www.kinmon.aizu.or.jp/

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