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末廣酒造 嘉永蔵 未来永劫愛される普遍の旨さを追求する酒

 趣のある木造の母屋と存在感のある白壁の蔵が二つ並び、伝統の酒造りの匂いを感じさせる末廣酒造。現在は会津若松市内にある嘉永蔵と、会津美里町にある博士蔵の二つの蔵で酒造りが行われている。主に嘉永蔵では手仕事による酒造りがなされ、博士蔵は最新鋭の設備のもと近代的な酒造りがなされているそうだ。
 嘉永蔵では観光客向けの蔵見学が毎時行われている。予約の必要はなく、毎時定時に蔵の中にいれば「蔵見学が始まりますよ〜」といった号令とともに、鴨居に吊るされた鐘を「カーン、カーン」が鳴らされスタートする。
 見学では日本酒の造り方から、酒米の説明まで丁寧に解説してもらえる。日本酒造りの工程を知りたいという方にはオススメしたい。「並行複発酵?なにそれ」とわからなくても、解説を聞けばもう大丈夫。帰る頃には、こんな米のお酒も呑んでみたいなと思うに違いない。

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 蔵の中の冷暗室には年代別に分けられたヴィンテージの日本酒が所狭しに並べられている。現蔵元は大学を卒業して蔵に帰る前にワインの会社で修行を積まれたとのことで、ワインのヴィンテージの概念を日本酒にも取り入れようと試みてきたのだとか。1979年からの日本酒が約3000本保管されている。気になるお値段は、元の値段プラス、四合瓶は年数×500円、一升瓶は年数×1000円とのことだ。
もし1980年の大吟醸、四合瓶が1本3000円だった場合は、
3000円+500円×40=23000円ということになる。

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 資料室には野口英世と末廣酒造蔵元の新城家の関係を示す資料が展示されている。野口英世の小学校時代の恩師であり恩人である、小林栄氏の姉が三代猪之吉(末廣酒造蔵元が代々襲名する名)の妻であったことから、野口英世との縁が深くなり、アメリカへの渡航費などを出資するなど物心両面での支援を行なってきたそうだ。英世の実弟も末廣酒造で働いていたということで、その縁は深い。英世がエボラ出血熱によって亡くなる前に一度だけ帰国した際、酒蔵の大広間で蔵元と時間を共にしている。その時に撮影された写真がとても印象的だった。

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 末廣酒造のお酒はやや酸味を感じ、きめ細やかで辛口の酒質が多い。その味を醸している理由の一つは、山廃仕込みを編み出した嘉義金一郎氏の指導の元、全国でもいち早く山廃仕込みに取り組んできたことが、味を決定づけていると言って良いのではないだろうか。(山廃仕込みについてはどこかで別途書きます)おそらく山廃で仕込まれたお酒の比率は相当高いと思う。
 燗酒にすると美味しいお酒ということで、昔から親しまれてきた『伝承山廃 純米末廣』。このお酒の味を基礎に“料理に寄り添うお酒”を追求していることが、どの名称酒にもブレずに追求しているのだと感じる。冷やで飲む場合はチーズやイタリアンと合わせても美味しいだろうし、出汁の聞いた料理と合わせても美味しそうだ。寒い会津の町だけに冬の燗酒はたまらなくしみるようにも思う。

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末廣酒造には「旨い酒」造りのために自ら課している「地酒三か条」がある。
一、天然の旨い仕込み水
二、伝承される会津杜氏の匠
三、仕込み水と同じ水、仕込み水が湧く大地に育つ酒米
 嘉永蔵の下には背あぶり山から流れてくる中硬水の水脈があり、米は地元の契約農家の作ったお米で醸す。どんなに時代のニーズが移ろうとも、未来永劫愛される普遍の旨さを追求し、人の和を守る会津人の心意気を感じる日本酒だ。

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末廣酒造 嘉永蔵 SINCE1850
〒965-0861 福島県会津若松市日新町12-38
TEL.0242-27-0002
HP. https://www.sake-suehiro.jp/


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