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【映画レビュー】セッション

こんにちは。映画大好きマヒロです。
今作の2年後に「ラ・ラ・ランド」を手掛けた監督、デイミアン・チャゼルの作品になる「セッション」を見ました。
思う所がある作品です……

2014年 アメリカ 106分
監督 デイミアン・チャゼル
出演 マイルズ・テラー
   J・K・シモンズ


あらすじ

19歳のニーマンはバディ・リッチのようなジャズドラマーに憧れ、アメリカ最高峰の音楽学校へ入学します。

ニーマンを演じたのはマイルズ・テラー

ジャズドラマー、バディ・リッチの演奏。
めちゃめちゃ格好良いですよ!

一人、教室に残ってドラムの練習をしていると、学院の中でも最高の指導者と名高いフレッシャーが現れ、自身が指揮をしているバンドチームにニーマンを勧誘します。

フレッシャー役を演じたJ・K・シモンズ
今作でアカデミー賞助演男優賞を受賞しています

フレッシャーに勧誘されたニーマンは思わず嬉しくなってしまうのですが……

「わざと私のバンドの邪魔をする奴はブチのめずぞ!」
「お前はクズでおかま唇のクソ野郎だ!」
「ママはパパが馬鹿だと分かって去った」

地獄のようなシゴキが始まるのです。

「師弟関係」か「パワハラ」か

この映画を見終わった後、何とも言えない感情に包まれてしまいました。
バンドをテーマにした音楽映画で思い出されるのが「スウィングガールズ」だったのですが、あの時のような映画を見終わった後の清々しさのようなものを期待してしまっていた自分がいたんですよね。
この何とも言えないモヤっとした感情って何なんだろうと考えてみたのですが、フレッシャーの指導はやり過ぎなのでは? という気持ちが残ってしまった為だと思います。
私の中では「パワハラ」なのでは…… という思いが強く残ってしまいました。

「スウィングガールズ」は高校の落ちこぼれ吹奏楽部の物語なので、「セッション」のような「音楽に対しての意識が高い集団」の物語ではないです。
東北地方の田舎町を舞台にしており、登場人物たちも、どこかノホホンとしている。
きっと、見終わった後に後腐れがなく清々しい気持ちになれるのは「スウィングガールズ」の方……
安心して見ていられる、誰しもが楽しめる娯楽作といった所でしょうか。

「セッション」はそこが明らかに違いました。
「よく問題にならずにアカデミー賞取れたな……」と思う程の凄まじい指導をフィッシャーは行います。
こういった作品を見て「体罰や過剰な練習を強いることを助長したりしないか」といった話はしたくありません。そういう感情も湧いてきませんでしたし。
ただ、華々しくて格好良いジャズの演奏が聞ける作品とは裏腹に爽快感は感じなかったかなと思います。
それがきっと、「過剰さを強いる」部分にあるのかなと……
こういうものは見てて気分が良くなるものではありませんからね。
どことなく…… もっと良い指導の方法ってあると思うんだけどなぁ。でも、天才的な演奏が出来るようになる為には、フィッシャーのような異常なまでの執着心も必要なのかな…… 分かんないけど…… というモゾモゾとした感情が残ってしまいました。

この映画を見て気になったことが、ニーマンとフィッシャーとの関係性です。
彼等は「師弟関係」だったのでしょうか?

この映画を見終わった後、何だかとても「女子プロレス」を見たくなり、昔見ていた大好きな選手「ブル中野」の試合を見てみることにしました。
90年~2000年前半に掛けて、全女(全日本女子プロレス)の試合が好きで深夜に放送されるダイジェストを楽しみにしながら見ていたのですが、当時の女子プロレスは分かりやすい縦社会で、いじめなどもあったりと過酷な状況で活動をしていたのが言わずとも伝わってくる空気感というのがありました。

ブル中野って伝説のプロレスラーなんですよ!
当時、「ブスとデブはヒールをやれ」という業界の暗黙のルールの元、ベビーフェイス(ヒール役とは真逆の正統派)に憧れてプロレスラーになったブル中野は泣く泣く極悪同盟というヒール軍団に加入することになります。
ブル中野が不本意な思いを抱えたままにヒール役をやっていたことを見抜いた先輩でもあり師匠のダンプ松本はブル中野の髪を半分刈り上げます。

一番右がブル中野
髪の毛、半分ないですよね……

今、そんなことしたら大問題ですよね……

当時、ヒール役はどんなに頑張ってもベビーフェイス程の給料ももらえなければ、人気も出ない。
「お前らはベビーフェイスを盛り上げる為に存在しろ。絶対に勝つな」
そんな時代に志してもいないヒール役をやることになり、髪まで刈り上げられてしまったブル中野はそれでも諦めませんでした。
理由は「プロレスが好きだったから」です。
当時の女子プロレスの団体は全女しかなかった為、全女の方針が気に入らないから他団体に移籍するとか、そういう手もなかった訳です。
大好きなプロレスをするには全女でヒール役をやらなければいけなかったんですね。

「お客が喜んでくれたら、ヒールが勝ったって良いじゃないか。古いしきたりなんて壊してしまえ!」
そう思ったブル中野は実力で観客を沸かせようと奮起します。
ヒールレスラーの扱いを変えようとは思っていないダンプ松本との方向性の違いが生まれました。
ブル中野は師匠と対立しても自分の道を進むことを選びます。

そんなブル中野は「尊敬する先輩は誰ですか?」と聞かれても「いない」と答えます。
「いない」って答えるってなかなか勇気があると思うんですよね。

ブル中野は言います。
「人気レスラーで虐められたことがない人っていないと思いますよ。早いうちに芽は取っておいた方が安全ですから」
そう言われると、自分よりも才能がある者って恐怖ですよね。
才能がある人は嫉妬や恐怖をもたれ、潰されそうにされたり、過剰に期待されてしまったり……
きっと計り知ることの出来ない、何かの壁を乗り越えなければ成功の道へは辿り着くことは出来ないのかなって感じました。

そう思うと、この映画も納得出来ます。
師弟関係として見ずに、自分の才能を開花させる為に立ちはだかる壁という目線で見たらしっくりくる作品でもありました。

感想

この世の中は自分の概念にあるような人間ばかりがいる世界ではないんですよね。
想像しがたいような信じられないことを平気でしてくる輩もいます。
もう、超最悪です。
そして、そういう人を憎んでいても前へ進めないのも確かなんですよね。
戦うか、交わすか、逃げるか……
私ならどうやって壁を乗り越えようかしら……
そして、フィッシャーみたいな人にはならないと言い切ることが出来るかしら……
そんなことを考えさせられた映画でした。


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