ひみつスタジオ レビュー
スピッツの17作目の最新アルバム、ひみつスタジオを購入した。
こんな箱で届いたんですよ。
アーティストの新作アルバム(しかも色々と特典のついてる版)を予約して、リリース当日に家に届けてもらうって初めての体験だった。ここまでスピッツにハマるとは。
配達員さんからこの段ボールを受け取ったとき、ニジマスの解散ライブのDVDが届いた時以来のわくわくを感じた。開封するのがもったいない。箱の外観だけをしばらく眺めて多幸感に浸っていた。あくまでバンドの新作アルバムなのに、ドルオタしてた時の自分とふと重なった。応援していることに変わりはないからね。
手を石鹸で洗ってから、自分の部屋でそっと開封。あらためて3枚のディスクと特典が入った三方背ケースを手に取り、幸せを噛みしめる。
そしてステレオで再生。スピッツの新しい世界へ、僕はいざなわれた。
(ここからはネタバレを含みます)
T1 i-O(修理のうた)
優しいな。いつものスピッツだ。イントロだけで僕はもう安心した。正直、タイトルを見て「何じゃこりゃ」って思ったけど(笑)
ライブで生で見たら感涙間違いなしの、優しい愛の歌。たぶん、ジャケットで笑ってるロボットくんの歌だろうね。ロボットにも心があるんだ。
1曲目にバラードを配置するのってスピッツにしては珍しいと思った。
T2 跳べ
多分アップテンポの曲かなあと思ったら、その通りだった。13曲の中でもかなり好き。サビのリズムがパンクらしくていいね。初期の頃のスピッツを思い出す。「ここは地獄ではないんだよ 優しくなりたいよね」と歌詞も前向きで、気分を上げるのにピッタリだ。「化け猫でもいいよ 君ならば」という歌詞はいかにもスピッツらしくて好き。
T3 大好物
劇場版「きのう何食べた?」の主題歌。スピッツの世間的イメージの王道を行くポップソング。Aメロの歌い出しの「つまようじでつつくだけで壊れちゃいそうな部屋」という歌詞から草野節全開で、こんなワードセンスなかなか真似できないよなあって思う。
T4 美しい鰭
イントロのドラム、譜割りどうなってんだ?
Aメロ、いきなり変拍子?あのスピッツが?多分7/8だよな?
歌詞については反響の声が大きいが、まだ僕は映画を観ていないためあんまりよくわかっていない。それよりも、音楽的な面でスピッツにしては珍しいいくつかの変化球にびっくり。ホーンセクションが入るのも「謝々!」以来だろうか。
T5 さびしくなかった
これも「大好物」と同じく、スピッツらしい爽やかなテイストの曲。冒頭の歌い出しから曲名を言ったり、全体的にストレートな表現が多かったり、シンガーソングライターの曲みたいな感じ。そもそもスピッツって感情をタイトルに入れること自体あんまりなかったと思う。かなり真面目な恋愛の歌に聞こえるが、これも55歳のおじさんが書いたとは到底思えない(褒め言葉)。
T6 オバケのロックバンド
i-Oの次に気になっていた曲。ポップス系ではないのは想像していたが、ここまでとは全く想像していなかった。笑
いやー、こう来るとは。笑
これは新しいスピッツのテーマソングにしてもいいんじゃないでしょうか。
この曲も何となくインディーズ臭がする。もちろんいい意味だよ。
T7 手鞠
不思議な曲。リズムも特殊で、実験的な曲なのかな。どちらかというと、スペシャルアルバムに入ってそうな雰囲気。サビは美しくもファンタジーな感覚に飲まれる。ハヤテ(1996)と所々似てる。
T8 未来未来
これも実験的な曲だろう。面白い。イントロから「ほぉ!?(語彙力)」ってなった。あの楽器は何だ?民族楽器?
ロックであり、不思議でもあり、スピッツのポップだけではない魅力が存分に味わえる。歌詞も韻を踏んでいて面白い。
T9 紫の夜を越えて
News23のテーマソング。もう随分聴いてきたので長々とは書かないが、同番組のインタビューで語っていた言葉を思い出した。彼の言葉を聞いて、だから僕はスピッツが好きなんだ、この人たちにずっとついていくと心に誓った。そしてそれは大正解だったとこのアルバムを聴いて強く思った。
T10 Sandie
珍しい英語表記。スピッツは他のバンドと比べて曲名も歌詞も英語はほとんど出てこなくて、たまにあるけど、文章じゃなくて単語だけとか、記号的に使っていることがほとんどだと思う。この曲もおそらくそう。
ゆったりしたかわいらしい雰囲気の曲で、すぐに好きになった。醒めないのアルバムでいうブチみたいな位置かな。何かこれも若干インディーズの時のスピッツみを感じるね。結局明かされなかったけどSandieって誰だ?
T11 ときめきpart1
美しい。この言葉しか出ない。
55歳ですか?今年56歳になるおじさんが、こんな瑞々しい歌詞を、メロディーを作れますか???
もうここのメロディーラインが、コードが、美しすぎて、、もはや美術品だろうといいたくなる。「初めて?」の「?」の破壊力の凄まじさよ。それをあの柔らかい美声で歌われるんだから、涙が出ないはずがない。これもライブで聴いたら絶対に涙腺崩壊する。
ま、歌に感動するのもいいけど、僕にもこんなときめきが欲しい。。
好きな人と付き合えたら、そのときめきがpart2、part3・・・とずっと続いていくんだろうな。
T12 讃歌
バラード第二弾。曲名が明らかになったとき、「何で『賛歌』じゃないんだろう?」ってふと思った。何か意図があるのかな。
マイナーキー(しかも#6個)から始まる珍しい曲。「勇気が誰かに利用されたり 無垢な言葉で落ち込んだり」と全体的に歌詞は重い。そんな世界で苦しみに堪えながら、自分と君だけの「永遠」の時間を描こうとしている。ロビンソンに近い世界線かな。この歌は深い考察がいるかも。
T13 めぐりめぐって
アップテンポの気持ちいいロックナンバー。このアルバムの中でかなり好きかも。この曲もインディーズの時のパンクな感じがする。歌詞はスピッツのメンバーに向けたものか。カッコいいサウンドの中にデコポンという絶妙なワードを出してくるのがいかにもスピッツらしい(笑)と思った。スピッツはまだまだ続く。そう強く思わせる、ラストにふさわしい曲だった。
総括
まず、今回も傑作であることに間違いない。
何度も思うけど、こんなにも新しさと懐かしさ、力強さと優しさ、明るさと切なさ、そして不思議さが同居しているバンドはあるだろうか。メンバー全員が50代半ばを迎え、ファンからすれば普通に昔の曲を演奏してくれるだけでも十分尊いのに、新曲を出し、新アルバムを出してくれる、これはとてつもなくすごいことだ。同じことを長年続けるすごさ、歳月を経ても全く色褪せない瑞々しさと曲・演奏のクオリティ。もはや国宝だと思う。
まだ数回しか聴いていないのでそれぞれ短い感想にはなったが、これからじっくり耳に馴染ませて、愛着を育てていきたい。
今宵はここまで。
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