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3日目 本当に大切にしたいものはなんだろう
朝までに3回目が覚めた。
すぐに眠れるし問題ないような気はするんだけど、今までにはなかったこと。
その時に見ている夢は、何かをしたいんだけど、困難があって実現できないという感じの夢。何の夢だったかは思い出せない。
昨日も早く眠ったからかな、朝は調子がいい。本当にうつ病?って思うような感じで、スッキリしている。
リビングにいた親父にも昨日のことを自分から話した。
仕事のこと、家庭のことを考えると少し動悸のような感じが起きるんだけど、これなら重症化することはなさそうだなと少し安心した自分もいる。
これがうつ病なのか、軽度だからなのか、そもそもうつ病ではないのか、よくわからないけど、事実その診断を受けて3ヶ月仕事を休むことは変わらない。
だったら、この期間をどう過ごすか。何もなく、無気力にいては堕落して、それこそ抜け出せなくなってしまうかもしれない。
そう思って、身体を起こし、着替えてバイクに乗ってみた。とは言ってもすでに時間はお昼を過ぎていた。
どこにいこうか。
そう考えるとある場所に行きたくて仕方なくなった。でも、今は行っちゃいけない場所。
俺には好きな人がいる。
大学の頃の先輩で、昔から俺を可愛がってくれた人。その人は今はシングルで女手一つで子どもを2人育てている。
その人とは1年半前に再開して関係が生まれた。
その時期も、俺自身のメンタルがボロボロだった。そんな中久しぶりに会った彼女は、10代の頃に出会った時と同じように笑ってくれて、優しくしてくれて、弟のように可愛がってくれた。彼女自身、離婚を経てかなり傷ついていた。そんな彼女の居心地が良く、心が癒されるというか、欠けてたピースがはまるような感じで、もっと一緒にいたいと願うようになった。
ただ、最近彼女は俺との関係を終わらせようとしていた。俺の家族にとっても自分の子どもたちにとっても、やはりこの関係は続けるべきではないと言って。
彼女と一緒にいるためには、後ろめたい関係ではなく正々堂々とできる関係でなければならないのはわかってる。
彼女の言うことは正しい。
今、俺は妻と子どもと別れてそうできるのか。
俺のうつの原因は仕事だけでなく、家族との関係の難しさもあって、そこには彼女の存在も絡み合ってくるんだ。
正解がわからない。
全て失いたくない。
でも、これは本当に自分のわがままだ。
こんな話、誰にもできるわけがない。
自分の心が壊れかけているのに、こんな解決できない迷いの中にいる。
そう思うと、うつから抜け出すことなんてできないんじゃないかという気持ちになり、また動悸がしてくる。
バイクに乗って、彼女のもとに行ったとしても、彼女の関心は今俺には向いていなくて、子どもと向き合おうとしている。
喜ぶよりは困惑させるだろう。
しかも俺はうつ。
彼女は言葉を選ばなきゃいけなくなる。
そう思って、俺は一度自分の家に帰った。
家に帰ってテレビをつけて、誰もいない家の中でどうしようかと思った時、思い出のデジタルアルバムのランプが光っていることに気づいた。
神様が見ろって言ってるってことかななんて思って、スイッチを入れた。
20年くらい前の妻と付き合いました頃の写真から、長男が生まれるくらいまでの写真が次々と流れてくる。
写真の妻はいつも変顔をしている。
あまり自分に自信がなくて写真が苦手だった妻は、わざと顔をクシャッとさせるのが癖だった。
そして、隣にいる20年前の自分。
肌ツヤも良くて、めちゃくちゃ笑ってて、ちょっとイケメンだった。笑
自然体で過ごす2人。
この数年の自分の写真を見ると、顔はむくみ、目にはクマができていて、疲れている表情ばかりだ。顔は笑っていても目が笑っていない。
あの頃はこんなふうに笑えてたんだなと、思い出すことができた。
それは妻も同じだ。目がキラキラとして俺のことを見ている写真があった。
今、妻の目に俺はどんなふうに映ってるんだろう。
仕事に追われ、ストレスを溜め、家では無気力、そして妻とのケンカ。それにより子どもにも迷惑をかけ続け、父としての自信など無くなり、その救いを求めて別の彼女の元へ通う自分。
そして、仕事も家族も彼女も全てを失いかけている今の自分。
こう文章に書いていて、すごく整理されてきたよ。ほんとクズだって。
写真を見たあとは、もう一度自分にスイッチを入れて公園に行くことにした。彼女の元へ行くのはやっぱり今じゃない。
自分自身がもう少し自立して、人生をどうしていきたいのか見えてからじゃないと、ただただ逃げに逃げたクズにしか見えない。
公園について、ミスチルの音楽を聴きながら2時間かけて5キロ歩いた。
彼女のこと、妻のことを考えるとまた不安になる。気づくと眉間に力が入っていて、口をとがらせるいつもの癖がでていた。
それに気づくたび、力を抜いて、ただただ無心で歩いていられるようにして、時折筋トレを入れてみた。
公園の噴水が綺麗で、秋の紅葉も綺麗。
公園の中を歩くなんて、目的地もなくて無駄のようにも感じてたんだけど、歩くと心が少し軽くなっていった。
ネットで調べると、運動は心に良いらしい。あまり強度をあげないほうがいいようだが、5キロはちょうどよいくらいだった。
筋トレをすると自己肯定感が上がると聞いたことがある。
3ヶ月の休みの中で、理想の自分を手に入れられたらそのあとの人生も変わるかな。運動はできるだけ続けていきたいと思った。というか、身体動かせてるのに本当にうつ病なのかな。
キツイなと思い始めたら続けられないので、そこで終わりにして家に帰った。
子どもたちが学校から帰ってきた。
塾に行く長男のためにハンバーグを焼き、次男の宿題を見ながら、ふと父親をやれている気がしてきた。
これまでは、仕事で忙しく、休みの日もメンタルの不調で動けなくて、1オペで妻が子育てをしていたけど、根本の仕事が休みとなった今、本来やるべき子どもと向き合う時間が作れるようになっている。
そうか、俺のうつ病の原因というか根本の悩みは、子どもと向き合えていない自分とのギャップだったのかもしれない。
彼女が、自分の子どもと向き合うと言ったように、俺も子どもと向き合わなければならないんだということに気づいた。
まずはそこ。その上でパートナーについて考える必要があるんだ。
そう思うと、子どもといる時間をどう過ごすべきかに焦点が定まってきた。
夜は、長男の塾のお迎えに、長女と2人で歩いて行った。夜のお散歩は特別感があっていい。
この時間も子どもと向き合う大切な時間だと思った。
長男長女との3人での帰り道。
俺は自分の病気について子どもに打ち明けることにした。
パパ、最近ばぁばのお家に泊まってるでしょ?何でだかわかる?
ママと喧嘩してるんでしょ。
ちがうよ。(確かにきっかけはそう、、、)
実はパパ、心の病気になっちゃったんだ。
ほんと?
うん、元気がなくなっちゃうんだけど、こうやって、君たちといると元気になるんだ。
怖がりな長男は少し重めの雰囲気に顔をこわばらせてた。長女はあっけらかんとした様子。
子どもたちは心配はいらないよ。元気になるし、君たちのことを守るのは変わらないからね。と伝えた。
この先、仕事はどうなるのかわからない。
自分もそう。
だけど、子どもたちはちゃんと守りたい。
その決意はもたないといけない。
彼女が言っていたのはこういうことだったんだ。そして、俺はそれすらできていなかったんだ。
子どもと過ごす一日一日を大切にする。
まずは、それを目標に生きていってみよう。
また、明日。
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