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精神科看護師の世界を探索する

精神科看護師に関する仕事内容や魅力、向いている人の特徴、スキルアップの方法など、気になる情報を私の体験談を交えながらお伝えします。精神科病棟看護師への道を歩むための指針をご提供しますので、不安や疑問を解消できるお手伝いになれば幸いです。

精神科看護師の仕事内容とは?

コミュニケーションによる一人ひとりに寄り添った心の看護ケア

精神科看護師は、患者さんとのコミュニケーションを通じて一人ひとりの気持ちを大切にし、心のケアを提供します。精神科看護師は、患者さんの感情や思考を理解し、安心感を提供するためにコミュニケーションが欠かせません。心のケアは、患者さんの症状緩和や回復に大きな影響を与えます。
精神科看護師は、患者さんと対話し、彼らの気持ちや不安を聞き出します。例えば、患者さんが落ち着かない時には、静かに話しかけて安心感を提供します。また、感情の表現が難しい患者さんには、絵や筆記を通じてコミュニケーションを図ります。言葉では言っていても、実は心の奥底では別なことを思っている…といった裏にある心理についても会話の中で表情、声のトーン、仕草や態度から分析し、寄り添っていきます。少しでも患者さんが楽になれる環境を提供します。

精神科看護師は、コミュニケーションを通じて患者さんの心を支え、回復をサポートします。心のケアは、患者さんの健康状態を向上させるために不可欠なスキルです。看護師の声掛けや関わり方、態度によって患者さんの精神状態は変動するため、良くなるのも悪くなるのも、看護師の影響は非常に大きいのです。

患者さんとの信頼関係構築

精神科看護師は、患者さんと信頼関係を築き、治療の成功に貢献します。信頼関係は、患者さんが治療に協力的であるかどうかに大きな影響を与えます。信頼してもらえなければ治療になりません。精神科看護師は患者さんとの信頼を築くことが仕事の一部ですし、最も重要だと言っても過言では無いと思います。例えば、精神科看護師は患者さんと積極的に対話し、彼らの意見や感情を尊重します。これにより、患者さんは自分の状態をオープンに話すことができ、治療が進みやすくなります。病棟生活の中で、患者さんが最も多く関わるの医療従事者は看護師です。生活スタイルの中にはその日の精神状態が多く反映されています。食欲が無くてご飯の量が普段よりも少ない、何もやる気が起きなくて部屋で寝たまま出てこない…といった生活の情報から精神状態が読み解けるのです。その中で、医師が拾えていない情報を看護師の記録や報告から治療に活かされることもありますし、「この看護師さんが言ってくれるなら治療に従います」「あの看護師さんじゃないと嫌だ」といった、信頼関係が築かれているからこそ患者さんが見せてくれる一面もあるのです。

精神科看護師は信頼関係を築き、患者さんの治療に大きく貢献します。

患者さんの状態評価・判断

精神科看護師は、患者さんの状態を評価し、適切な対応を判断します。
患者さんの状態評価は、治療プランの調整や急変時の対処に不可欠です。精神科看護師は、患者さんの症状や行動を注意深く観察し、必要なケアを提供します。
例えば、患者さんが興奮状態にある場合、精神科看護師は冷静に状況を評価し、安全を確保するための措置を講じます。落ち着ける場所、環境を整えつつ、今の精神状態に対する対処方法が何なのか判断し、頓服薬を内服してもらうのか、あるいは話すことで解決できるのか、アプローチしていきます。
また、服薬の際にも、患者さんの反応を見て、薬の効果や副作用を判断します。入院中は特に、看護師が患者さんに最も近いところにいるため、作用についても副作用についてもいち早く気がつくことができるのです。これらにより、患者さんの治療が最適な方向に進み、安全性が確保されます。

精神科看護師の役割の中で、患者さんの状態評価と判断は極めて重要です。患者さんの健康状態を正確に把握し、必要なケアを提供することは、患者さんの回復と安全を確保する鍵となります。精神科看護師は慎重な観察と判断力を駆使して、患者さんの健康を支えます。

セルフケア援助

精神科看護師は患者さんが自己ケアを行えるようサポートし、健康の維持と回復を促進します。
患者さんのセルフケアは、日常生活の中での健康状態の管理に欠かせない要素です。精神科看護師は、患者さんが自分自身の健康を管理し、病状の悪化を予防するために必要なスキルと知識を提供します。
たとえば、精神科看護師は患者さんにストレス管理のテクニックを教え、日常生活での課題に対処する方法を指導します。また、薬物の正しい服用方法や副作用に対処する方法も教育します。さらに、栄養や運動の重要性についてもアドバイスを行い、患者さんが自己ケアを行う自信を持たせます。退院してから、元いた場所に戻って社会生活を送ることができるようになる、というのが精神科に関わった患者さんのゴールだと私は思っています。入院中は看護師や医者が常にいるから問題なくても、家に帰って生活して、また精神状態が悪くなって入退院を繰り返してしまう…ということは多々あります。それはやはり、入院中の準備がどこかで不十分だったためです。だから、看護師も医師も臨床心理士も、患者さんが何がある時につまずいてしまったのか、どういった状態の時に精神状態が悪くなるのか、といったパターンやきっかけについて、入院前の様子から分析し、それらの困難に直面した時の対処方法を入院中に考える必要があるのです。だから、退院後の生活を見据えて自分でできることはもちろん自分自身で行っていただきます。それが厳しいことだと言われていましたし、入院中ぐらいは全部医師や看護師に甘えたいと思うのも無理はありません。ですが、結局退院して帰る場所に戻って、入院中の生活と現実のギャップで辛い思いをしてしまうのは患者さん自身です。だから私は、入院中にできるだけ退院後の生活を見据えて準備をしておくことは必要なのではないかと考えています。

精神科看護師は、患者さんのセルフケアを支援し、彼らが自分自身の健康を管理できるようにサポートします。セルフケアの向上は、患者さんの病状の安定と回復につながり、彼らがより良い生活を送る手助けとなります。

薬の管理・与薬

精神科看護師は薬の管理と適切な薬物の提供を通じて、患者さんの治療を支えます。薬物療法は精神科治療の重要な一部であり、患者さんの症状の管理や改善に不可欠です。精神科看護師は、薬物の管理と与薬に関する専門的な知識を持ち、患者さんが適切な薬物療法を受けられるようにサポートします。例えば、精神科看護師は医師の指示に基づいて薬物の投与スケジュールを管理し、患者さんに正確に薬を提供します。また、薬物の効果や副作用について患者さんに説明し、質問に答えたり不安を解消したりします。さらに、患者さんの服薬のアドヒアランス(服薬忠実度)をモニタリングし、必要に応じて調整を行います。「精神科の薬を飲むのは怖い」「副作用でおかしくなってしまう」「そんなこと言うならお前がこの薬飲め」などなど、精神科の薬を飲むことに対して患者さんは良いイメージを持っていません。当たり前ですよね。自分が病気であるという自覚を持つことを表す「病識」という言葉があるのですが、病識の無い患者さんは多いです。自分で病気だと思っていないのに、訳もわからず無理やり入院させられて、いきなり薬を飲まされそうになるのです。緊急入院の場合はこういったケースがよくあるのですが、もし自分がこの立場だったらどう思いますか?もちろん飲みたくないですよね。看護師はもちろんこの患者さんの心理も考慮した上で関わります。なぜ入院することになったのか、今どこにいるのか、なぜこの薬を飲む必要があるのか、どういった症状に効くのか、どんな患者さんの悩みを解決することができるのか、副作用で何が起こる可能性があるのか、患者さんの性格を合わせて、薬とその薬を飲まなければならない患者さんを総合的にアセスメントして、薬の管理と薬物の提供を行います。

精神科看護師は、薬の管理と適切な薬物の提供を通じて、患者さんの治療を支え、安全で効果的な薬物療法を確保します。これにより、患者さんの症状が適切に管理され、回復の道を歩む手助けとなります。

入退院のサポート

精神科看護師は入院時と退院時のサポートを通じて、患者さんの安定した治療環境を確保します。入院時と退院時は患者さんにとって非常に重要な段階であり、適切なサポートが必要です。精神科看護師は、入院手続きや退院計画の立案において重要な役割を果たし、患者さんがスムーズに治療の移行を行えるよう支援します。例えば、精神科看護師は患者さんの入院手続きを説明し、必要な書類の提出をサポートします。また、入院時には患者さんの身体状態と安全を確保し、適切な医療ケアを提供します。退院時には、治療計画の調整やアフターケアの説明を行い、患者さんが社会復帰や自宅での治療を成功させるための支援を提供します。退院するまでに患者さんと一緒に決めた目標を達成できたか確認し、退院してから家で実際どう行っていくか、もしこうなった時は誰に相談するのか、などなどサポートしていきます。

精神科看護師は入院時と退院時のサポートを通じて、患者さんの安定した治療環境を確保し、治療の成功に向けて手助けを行います。これにより、患者さんは適切な支援を受けながら回復に向かうことができます。

精神科看護師のメリットとデメリット

メリット

  1. 感動的な回復体験: 精神科看護師は、患者さんが徐々に回復し、元気を取り戻す過程を見届けることがあります。その瞬間は非常に感動的で喜びに満ちています。入院時と退院時で全くの別人になることが多々あるので、本当に感動的です。

  2. 専門スキルの習得: 精神科看護師は心理学や薬物療法などの専門スキルを習得し、専門家として成長する機会があります。そして学んだことはプライベートに活かせるので本当におすすめです。他人の心情がある程度は想像して理解できるようになるので、表面だけで物事を判断しないようになります。

  3. 人間関係: 患者さんや医療チームとの良好な人間関係を築くことができ、協力的な環境で働けます。病棟内が鍵で閉鎖されているのもあり、病室とスタッフルームが明確に分かれていて、患者さん対チーム医療といった構図になっているので医療スタッフ同士の仲間意識は芽生えやすいです。

  4. 残業が少ない:精神科看護師の仕事は、通常、残業が少なく、プライベートの時間を大切にできる職業です。その理由は、患者さんのスケジュールを効果的に管理し、予防策をとることができるからです。これにより、残業を減らすことができます。 例えば、精神科看護師は患者さんの状態を定期的にチェックし、問題が早期に発見されることがあります。朝の情報収集から看護師の仕事の1日の計画を立て、流れを予測するのですが、患者さんの精神状態をきちんと把握してどういった時間帯に精神状態が落ち着かなくなるのか、何時ごろに頓服薬を内服すれば落ち着いて過ごせるのか、といった予測ができれば急なスケジュールの変更は起こりません。そして、患者さんの重症度が高くありません。看護必要度も軽い方が多いため、体のケアも少ないです。そのため仕事量自体も一般病棟に比べるとかなり少ないです。だから効率よくスケジュールをこなせれば、残業にもならず定時ダッシュができます。これにより、急な残業が減少し、仕事とプライベートのバランスをとりやすくなります。精神科看護師は、効果的なスケジュール管理により、通常は残業が少ないため、ストレスの少ない働き方が可能です。

  5. 一般病棟よりも給料が高い:あまり大きな声では言えませんが…一般病棟と特殊病棟という分類がされるのですが、特殊病棟では特殊手当が加算されるため、給料が高くなります。精神科では、危険手当というものがつきます。患者さんが暴力的で暴言を吐かれたり、法律を破った方だったり、心身ともに一般病棟では起こらないような傷つき方や恐怖を経験することもありますので…給料が高くなるのかなと思います。

デメリット

  1. 感情的な負担: 精神科看護師は、患者さんの感情的な問題に接することがあり、これに対処するのは時に負担となります。患者さんのこれまでの人生に触れることが、精神科看護の醍醐味だと思っているのですが、感情移入しすぎてしまう方にとっては非常に辛い場合もあると思います。大切な方が亡くなってうつ病を発症してしまった方であれば、泣きながらその話をされることもあります。看護師もひとりの人間ですから、寄り添う中でつらくなってしまいますよね。そして、患者さんの中には、それまでの人生の経験から、無意識で相手をコントロールしようとしてしまう方もいます。その方に取り込まれてコントロールされてしまって感情も患者さんの状態によって左右されてしまう看護師もいました。患者さんと看護師である立場の線引きはきちんとしなければならないと思います。そして、多いのが、セクハラです。男性も女性もどちらも被害に遭います。精神的に発達が未熟な方の場合、純粋な性欲をぶつけられますし、誰にもバレないようにこっそり…という患者さんもいますし、言葉でのセクハラもありますし、弱みを握られるというか、なかなか人に言えない問題ですので、感情的な負担が大きいです。病棟師長や上の立場の方に言って担当看護師にならないようするなど調整しましょ。

  2. 夜勤や週末勤務: 医療施設では夜勤や週末の勤務が必要な場合があり、これが生活のリズムに影響を及ぼすことがあります。ですがこれは看護師である以上付きまとう問題ですので他の病棟と変わりません。

  3. 切迫感のある状況: 一部の患者さんは危険な状況にあることがあり、その対処に迫られることがあります。自殺の直前・直後、暴れている方が入院してから着替えて身体拘束をするまで、といった状況は非常に切迫感も緊迫感もあります。ただし、一人で全て対処しなければならないわけではありませんし、スタッフみんなが精神科に携わっていますのでお互い精神的なフォローをし合えることもあります。

精神科看護師のデメリットには感情的な負担、不規則な勤務スケジュール、切迫感のある状況への対応が含まれます。

精神科看護師に向いている人の特徴

強い精神力を持っている
精神科看護師に向いている人は、精神的に強い人々です。
精神科看護師は、患者さんの精神的な状態に常に対処し、時には困難な状況に立ち向かう必要があります。したがって、強い精神力を持つことが重要です。

  1. ストレスに対する耐性: 精神科看護師は、患者さんや家族のストレスに対処する必要があり、自身のストレスにも耐える必要があります。

  2. 感情のコントロール: 時には患者さんの感情が高ぶることがあり、冷静さを保ちつつ対応する能力が求められます。患者さんのテンションに釣られて大声を出して怒鳴ったりしてしまうと何もうまくいきません。相手の感情に振り回されることなく、一定を保ちましょう。

精神科看護師に向いている人は、ストレスに耐性があり、感情をコントロールできる精神力を持っていることです。なかなか難しいですよね。ちなみに私は時々病みかけていました。気負いすぎないように気をつけましょう。

ただし、精神的に強いと自分で思っている人でも、責任のかかる立場における仕事、夜勤専従、非常にショックの大きな患者さんとの出来事の後には精神的に揺さぶられてしまうこともありますので、強がって「大丈夫」と振る舞うことには気をつけましょう。急に怒鳴られたり物を投げつけられたりすれば怖くて当然です。トラウマになってしまうこともありますし、うまく切り替える方法を学んで使っていきましょう。

患者さんと根気よく向き合える

精神科看護師に向いている人は、患者さんと根気よくコミュニケーションを取ることができる人々です。患者さんは時にはコミュニケーションに時間がかかることがあり、根気と忍耐が必要です。精神科看護師は、患者さんとの信頼関係を築くためにコミュニケーションを大切にします。

  1. 患者さんの話を聴く: 精神科看護師は、患者さんの話を注意深く聴き、感情や思考を理解しようと努力します。

  2. 患者さんのペースに合わせる: 一部の患者さんはコミュニケーションに時間がかかることがあり、精神科看護師はそのペースに合わせて支援します。急かしたりプレッシャーを与えられて、頭が真っ白になってしまう患者さんもいます。精神疾患によって頭の回転が鈍くなり判断力や思考力が低下してしまうので、自分が言いたいことがまとまらない状態なのです。その状態であることを否定せず、受け止めて、待ってあげましょう。

精神科看護師に向いている人は、患者さんとのコミュニケーションに根気よく取り組むことができ、信頼関係を築ける人々です。

コミュニケーション能力が高い

先ほどの話にも共通しますが、精神科看護師は、高いコミュニケーション能力が求められます。患者さんとの円滑なコミュニケーションは、信頼関係を築き、適切なケアを提供するために不可欠です。患者さんからの情報を正確に収集し、彼らのニーズや感情を理解するために、コミュニケーションスキルが高いことが重要です。精神科看護師は、患者さんの話に耳を傾け、共感し、尊重しながらコミュニケーションをとります。また、非言語コミュニケーションも重要であり、表情やジェスチャーを通じて患者さんの気持ちを読み取る能力も求められます。

精神科看護師は、高いコミュニケーション能力を持つことで、患者さんとの信頼関係を築き、適切なサポートを提供する役割を果たしています。

観察力に優れている

精神科看護師には、優れた観察力が不可欠です。患者さんの状態や気持ちを正確に把握するために、精神科看護師は鋭い観察力を発揮しなければなりません。患者さんが言葉で表現しづらい感情や症状を捉え、適切なケアプランを策定するために観察力が重要です。精神科看護師は、患者さんの行動や身体的な変化に注意を払います。例えば、食事の摂取量や睡眠パターンの変化、表情や姿勢や態度や声のトーンの変動などを観察し、それらの情報から患者さんの状態を判断します。

精神科看護師は、優れた観察力を持つことで、患者さんの状態を的確に評価し、適切なケアを提供する役割を果たしています。


まとめ

精神科看護師の仕事は挑戦的でありながら、充実感ややりがいに溢れています。患者さんの心のケアから専門的なスキルの向上まで、多くの側面から成長できる職業です。自身の強みや興味に合わせて、精神科病棟看護師へのキャリアを考えてみてください。

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