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膝慢性障害のリコンディショニング

この記事では、鵞足炎や腸脛靭帯炎、膝伸展機構の障害などに代表される、膝慢性障害のリコンディショニングについてお伝えします。疼痛の出る部位は違えど、いずれの疾患も丁寧な評価と考察に基づいたリコンディショニングを行っていくことが大切であることは変わりません。今回は具体的な評価の方法だけでなく、評価結果を統合して解釈する際のポイントについてもわかりやすく解説しています。慢性障害で悩むセラピストやトレーナーの方の一助になれば幸いです。

これまでに公開してきたその他の疾患に関する段階的リハビリテーションについては下記からご確認ください。

膝痛改善のための評価と解釈

<Introduction>

今回のNoteでは、膝の慢性障害に対するリコンディショニングをお伝えしていきます。

慢性障害は痛みが出ている組織にどのようなストレスがかかっているのか、なぜそのストレスがかかるのかを整理して考える必要があり、機械的なストレスについてそのメカニズムの考察を立てた上でコンディショニングの方向性を決めていくことが大切です。この考察ができた上で、全身との関連性や自律神経、疲労などとの関連について深めていくと良いと思います。

このNoteでは、基本的な痛みの所見、疼痛増悪や疼痛減弱テストの結果と筋のタイトネス、筋力低下との関係について考えていきます。
評価から出てきた問題点を解決するためのエクササイズまで紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

<Assessment>

Assessmentで大事なことは、痛みが出ている部位を同定することです。

膝の前面が痛いという訴えに対して、膝蓋腱の痛みなのか膝蓋大腿関節の痛みなのかで対応が変わってきます。疼痛を発している組織を同定し、どのようなストレスが加わってその部位に疼痛が出ているのかを明確にしていくべきだと考えています。

膝蓋腱や腸脛靭帯の痛みは引張ストレスだけでは発生しづらく、圧迫や捻転ストレスが加わることで痛みにつながることが多いです。患部にそのようなストレスが加わる原因をアライメントや動作の問題から考察して、修正していく方向性を導いていくことがAssessmentにおいて重要です。

<問診>

病歴の聴取、つまり問診は膝の慢性障害を考える上で重要です。外的な因子と内的な因子の両面からアプローチすることが大切です。

外的な因子としては環境因子が挙げられます。
高校生になって部活の負荷量が増加した、土のグラウンドから人工芝に変わった、体育館での練習が増えた、靴やインソールを変えた、なども踏まえて問診を進めていきます。いつごろから、どのような段階を経て、どのくらいの期間続いているのかを整理しておきましょう。


<圧痛>

圧痛所見は痛みの出ている組織を同定するために非常に重要です。

膝慢性障害では、膝伸展機構の障害、鵞足炎、腸脛靭帯炎が代表的です。

膝伸展機構の障害であれば、膝蓋骨周辺、膝蓋腱、脛骨粗面のどの部位に疼痛が出ているのか確認していきます。膝蓋腱は近位部、中間部、遠位部、内側、外側と細かく圧痛をとるようにします。鵞足周囲、腸脛靭帯周囲も同様に圧痛所見を確認していきます。動画内では実際に細かく圧痛所見を評価していますので、合わせてご覧ください。


<動作時痛>

圧痛の次は動作時痛を評価します。
自動運動、他動運動で痛みがでるかを確認します。

膝の運動は基本的に屈曲と伸展です。
まずは自動運動で膝の屈曲と伸展運動を行ってもらいます。

可動域の途中で疼痛が出るのか、最終域で出るのかを確認します。その後他動運動で伸展強制、屈曲強制させた際の疼痛も確認します。屈曲や伸展最終域での疼痛は、大腿脛骨関節のアライメント不良が原因となっていることが多いです。徒手的にアライメントを修正した際に疼痛が減弱するようであれば、そのアライメント不良が疼痛の原因であると考えることができます(疼痛減弱テスト)。


荷重位での動作時痛も評価していきます。まずは片脚スクワットで下肢のアライメントと疼痛の有無、部位を確認します。

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続いて両脚を前後に開いて前脚の下腿を前傾させるように膝を屈曲させて評価します。この際、股関節の屈曲優位で行うと膝にストレスをかけられませんので、注意します。

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この動作で疼痛を認める場合、つま先を外に向けたKnee in and Toe outのアライメントと、つま先を内に向けたKnee out and Toe inのアライメントで疼痛が減弱もしくは増悪するかを評価していきます。


続いてKnee swingテストを行います。
スクワット姿勢から、両膝を左右にスイングした際に疼痛が出現するかを評価します。

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疼痛が出現する方向に動かす際、検査者の指などで舟状骨や立方骨を挙上させることで疼痛が変化するかも確認します。このように荷重位での評価では、条件を変えながら評価を進めることでどのようなストレスが膝の疼痛を引き起こすのかを考えていきましょう。

動画内では具体例も踏まえて解説していますので、合わせてご確認ください。


<可動性>

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