とにかく何事かを通じて成功者になりたいだけの現代人
ドビュッシー:『映像』第1・2集、子供の領分 [直輸入盤][アナログ] - アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ - UNIVERSAL MUSIC JAPAN (universal-music.co.jp)
ショパン・リサイタル [UHQCD][CD] - アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ - UNIVERSAL MUSIC JAPAN (universal-music.co.jp)
完璧主義で有名な #ピアニスト #ミケランジェリ が言うには、「本来良い #ピアノ 奏者の数と良い #管楽器 奏者の数に大差はないはずなのに、現在世界の音楽教室には何千人ものピアニスト志望の生徒や #指揮者 志望の生徒がいる一方で、管楽器奏者志望の生徒はごくわずかしかいない。何故なら彼等の大部分が良い #音楽家 になりたいのではなく、音楽を通じて #成功者 になりたいだけだからである。その証拠に彼等は何度か世界的な #ピアノコンクール や #指揮者コンクール に挑戦してみて、思うような結果が得られなければすぐに音楽を断念してしまう」のだそうです。
なるほど、20世紀後半以降の #現代人 の大部分が音楽に限らず、何事かを通じて成功者になりたいだけなのだと思えば、いろいろと腑に落ちることがたくさんあります。
もっと言うなら、現代人の大分部にとっては自分が成功者になれようと、なれまいと、結局は他者からそう見做されねば何の意味も喜びもないということです。
そこが、ミケランジェリの一番言いたところでもあると思うのです。
ミケランジェリは、「…たとえ自分のピアノ演奏が全世界の他者から評価されようと、されまいと、結局自分はピアノを演奏し続けるだろう…」と言います。
そしてまた、「…自分が完璧だと思える演奏が出来た瞬間にピアノの演奏をやめるさ…」と言います。
現代人の大部分は、どうしても何かしら生きるための理由がいるかのように、しかもそれを自分が納得するためにではなく、「人にどう見えるか」がすべてであるかのように勘違いしているのではないでしょうか。
夏目漱石 倫敦塔 (aozora.gr.jp)
「生れて来た以上は、生きねばならぬ。あえて死を怖るるとは云わず、ただ生きねばならぬ。生きねばならぬと云うは耶蘇孔子以前の道で、また耶蘇孔子以後の道である。何の理窟も入らぬ、ただ生きたいから生きねばならぬのである。すべての人は生きねばならぬ」
現代人の多くが、ただ生きるのを嫌がって自分にできることを放棄して、自分にはできるかどうかおぼつぬことで成功したがっています。
日常の雑事が人並みにこなせれば、100メートルを9秒台で走れなくってもいっこうに恥じる必要はありません。
しかし、その逆は大いに恥じなくてはいけません。
すべての人々にとって最も不幸なことは、猫も杓子もが雑事をほっぽり出して勝手に人々を豊かで幸せにできるなどと自惚れてしまうことでしょう。
きっと、おもしろい小説を書く苦労は大変なものでしょうが、おそらく世間の人々が #夏目漱石 を読んで楽しむほどには、漱石自身は楽しい時間を持つことはなかったにちがいありません。
本来望ましいのは、優れた一握りの人間が、普通ならしなくてもすむ苦労を買って出て、その他大勢の人々の生活を豊かで幸せなものに引き上げてくれることで、そのために #名誉 や #高収入 があるのです。
しかし、それら一握りの人間が俗事に頓着せず #研究 や #創作 や #政治 や #経済 に邁進できるのは、その他大勢の人々が徒に脱俗を衒わず俗世間を良く支えるからにほかなりません。
#国家 にせよ、 #企業 にせよ、優れた指導者を得た場合、指導者が引き受け
る苦労は大変なものですが、その他大勢が受ける利益は計り知れません。
逆に、ひょんな間違いから愚劣な指導者を戴いてしまった場合に大変な災厄を被ることになるのもその他大勢なのです。
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