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【簡単あらすじ】無実の君が裁かれる理由(微ネタバレ)【友井羊/祥伝社文庫】

大学生の牟田は、ある時、大学構内で見知らぬ男女に呼び止められ「友人にストーカー行為をするな」と糾弾される。
牟田には全く心当たりが無いため、特に気にせず日を過ごしていたのだが事態はさらに悪化してしまう…

牟田はバイト先で知り合った先輩・遠藤沙雪とともに、自身のえん罪を晴らすため行動する。



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『はじめに』
10月になり、かなり気温も落ち着いてきました。朝夜は布団に入りながらゴロゴロして、読書に勤しむことが楽しくなってきた時期ですので、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んでいたりした本の感想を書こうと思います。
このレビューを読んだことで、作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたと思いながら書いていますが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』を含む記載がありますので、その点にご注意ください。

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題名にもあるように、各エピソードで「えん罪を疑われた」人物が登場し、その疑惑を晴らすために行動するという流れの作品です。

第一話 無意識は別の顔

大学生の牟田幸司は、ある時、見知らぬ男女に呼び止められ「友人にストーカー行為をするな」と糾弾される。

牟田には全く心当たりが無いため、特に気にしないまま日を過ごしていたのだが…

バイト先で知り合った先輩、遠藤沙雪とともにえん罪を晴らすために行動する。

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第二話 正しきものは自白する

牟田の友人で柔道部所属の橋本が、飲み会の席で「映画研究会のドローンを壊したとえん罪を疑われている」とつぶやく。

その事を調べると、橋本は「自分が壊した」と自白していることも分かる。

これはどういうことだろうか?

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第三話 痴漢事件とヒラメ裁判官

牟田の父親の職業は裁判官である。

ある時、職場で倒れ救急車で病院へ搬送された。
命に別状は無かったものの、父親が現在担当している「女子高生に対する痴漢容疑」についての案件で、過労状態だったと考えられた。

倒れる前、牟田は、酔って眠っていた父から『えん罪』『……有罪にするしかない』という寝言を聞いていた。

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第四話 罪に降る雪

八年前、沙雪の父親に母を殺された環美兎。
小学時代は親友だったが、事件以降関係が悪化する。沙雪は父の無罪を信じて行動しており、牟田もそれを手伝うことにする。

牟田が事件を調べる過程で、話を聞こうとした人物は殺されてしまう。
そして、その事件の容疑者として美兎の父親が逮捕される

沙雪と牟田は美兎の父親の無罪を信じ事件を調べていくが、意外な方向に話が進み…

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「殺人事件のえん罪」はともかく、各エピソードについて、多くの方がえん罪を疑われてしまう可能性や、えん罪に関連してしまう可能性があることを示唆しています。

現実世界では、えん罪についての話題が出るごとに、

1.えん罪を疑われないためには・自己防衛するにはどうすれば良いか。
2.自分がえん罪を引き起こさないためにはどうすれば良いか。

といった議論になることが多いですが、例え各人が上記を充分に理解し注意し行動していたとしても、えん罪は発生してしまう可能性が高いということが良く分かります。

しかもそれは、誰かの明確な悪意によって引き起こされたものだけでなく、自分の業務に・自分の正義に従い、一所懸命に動いていたとしても発生してしまいます。

さらに、当事者同士だけでなく周辺の人間の行動により、思わぬ結果になることが多いことも描写されています。

恐らく、当事者同士が親しい・親しくないに関わらず、人間同士がコミュニケーションを取りながら生活していかなければならない世の中である限り、つまり、今までも現在もこれからもえん罪は発生してしまうものなのでしょう。

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私が考えるに、「〇〇の場合は△△だ!」のように、発生した出来事に対して今までのパターンをはめ込んで結論を出してしまうという、思考停止状態にならないことが重要だと思います。

当事者の人間性や背景などは、各出来事について100%同じになる訳はありません。

それなのに、表面的なことを理解しただけで結論も同じにしてしまうことは、大変危険だと思います。

それを理解させてくれる作品でした。


個人的には、作品中に、精神的・考え方・振る舞い方などがカッコいい大人が登場してくれると、落ち着いた・締まった雰囲気になりなお良かったと思います。
(私自身がおじさん年代なだけに、という背景もあります笑)



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