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【簡単あらすじ】合理的にあり得ない・上水流涼子の解明(微ネタバレ)【柚木裕子/講談社文庫】

弁護士・上水流涼子は、ある事件により弁護士資格をはく奪されてしまう。

涼子はその後、助手・貴山とともに探偵業を始める。

彼女の事務所には、「経営コンサルタント」「霊能力者」などを名乗る欲にまみれた詐欺師が絡む難題が次々と舞い込む。

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『はじめに』
10月になり、かなり気温も落ち着いてきました。朝夜は布団に入りながらゴロゴロして、読書に勤しむことが楽しくなってきた時期ですので、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んでいたりした本の感想を書こうと思います。このレビューを読んだことで、作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたと思いながら書いていますが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』を含む記載がありますので、その点にご注意ください。



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本作品では、才色兼備の上水流涼子らが、世にはびこる悪を圧倒的に叩きのめす爽快感が味わえます。

1.確率的にあり得ない

ある経営コンサルタントと契約を結ぼうとしている建設会社社長。
秘書は詐欺師ではないかと怪しむが、奇跡としか言えない出来事を目の当たりにする。
ボートレースで六連続的中させるからくりとは何か。

2.合理的にあり得ない

余生を優雅に過ごす男。
妻に秘密があると疑い問いただすと、霊能力者となった涼子から石や皿・壺を購入したと言う。

3.戦術的にあり得ない

暴力団組織の会長から、ある将棋の対局で絶対に勝たせろという依頼を受ける。
元東大将棋部主将の肩書を持つ助手・貴山は、相手がある不正を行っている可能性に気づく。

4.心情的にあり得ない

涼子が法曹資格を失う原因を作った、巨大グループ企業社長から「大学生の孫娘と連絡が取れなくなった」という依頼を受ける。
涼子は、依頼を解決しなおかつ遺恨も晴らさせてもらうと決意する。

5.心理的にあり得ない

自殺した父親は野球とばくをしていたかもしれない、女性はそう語った。
そして野球とばくの負け分が原因の一つとも。
そして、野球とばくの関係者に復讐したいと依頼する。

私は、題名にもなっている「合理的にあり得ない」の話がお気に入りです。

登場人物の心情が案件の原因に関わる話なのにも関わらず、それを解消するために、涼子はいちいち合理的に行動します。

涼子が、依頼者に対して行った仕掛け。
ある人物の言動や考え方。

どちらについても、題名通り『合理的にあり得ない』と当てはまるまとめ方がとても爽やかでした。

他の話は、助手である貴山の存在感が大きいため、涼子の活躍を一番楽しめる話と言えます。

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助手の貴山は、「元役者・東大卒でIQ140・将棋アマチュア五段・紅茶コーヒーカクテルの入れ方がプロ級・裏世界とのつながりもある」という能力を所持しています。

多くの場面で、この能力が役に立つ(所持していない場合には、成り立たない解決方法も…)ことになります。

ある意味、ここまで有能過ぎるスペックを持つ貴山こそ『合理的にあり得ない』と言える存在なのかもしれません。

ただ、涼子だけでなく、このスペックをもった貴山がいるからこそ、勧善懲悪のような形で問題を解決し、爽快感を味わえる作品になっています。



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