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「普通」など共同幻想に過ぎない。


周囲に合わせるか、身の丈に合わせるか。

 「パパ活するなって言うけど、最低でも月10万ないと普通の高校生活送れない。時代が違うので大人にはわからない」という見出しの投稿がSNS上で話題となっている。

 ネタであって欲しいが、マジレスだとしても、確かに私が高校生だった頃とは時代が違うので、大人にはわからないと言われてしまえば、ああそうですか。で終わる話ではある。

 だが、リアルパパのお小遣い事情を鑑みると、最低でも月10万ないと送れないとしている高校生活が、果たして「普通」なのかは疑問である。

 社会に出ると、「お前が終わってんだよw」と煽られながら、毎月の手取りが14万円みたいな状況で働いている大人がそれなりに居て、現役世代の2人に1人が貯蓄ゼロなんて統計もある。

 年金だけだと老後に2,000万円足りないから、自助努力で投資しやがれと国から暗に示され、堅実な人ほど、ただでさえ少ない手取りから、数万円単位で先取り貯蓄とか、積立投資に充てて、月に10万円も使わず慎ましく暮らしている。

 それでも、家計をやりくりしてコンサートや服、化粧品代を工面して、たまには旅行にも行くし、ウナギも食べる。

 別に社会人が苦労しているから、高校生も苦労しろ的な、運動部の理屈を押し付けたい訳ではない。

 人生を長期目線で考えた際に、その金銭感覚が身の丈に合っているのか。それとも、周囲に合わせたいがために、身の丈に合わない生活をして、その帳尻を合わせるために売春行為を行っていることを正当化しているだけなのか。

 18歳になるまで成人(=大人)ではないものの、高校生であればそれくらいの判断能力は持ち合わせていて欲しいとは思うものの、どれだけ科学文明が発達した知識社会となっても、現実はそうなっていない辺りに、欲に塗れた人の性を感じずにはいられない。

娼婦は最古の職業。

 娼婦は最古の職業と言われているが、人類の根源的な欲求である性欲を満たす相手になることは、若くて容姿が整っているほど、需給バランスから真っ当に働く以上の対価を得られる。

 これだけ記すと交際するだけのパパ活はメリットのように思えるが、若さや美貌は減価償却資産であり、永続的に稼ぐことのできる手段ではない。

 年齢を重ねるごとに、価値も需要も減少するのが常で、単なる交際だけで同じ稼ぎを維持できる可能性は極めて低く、どこかで体を売る方向にシフトせざるを得なくなるケースが典型だろう。

 そうなる前に、お金持ちを捕まえて逃げ切ってやるぜ的な図々しい作戦も否定はしない。カルロス・ゴーン氏の妻は悪女との見方も強いが、ご存知の通りマニアックな逃亡劇を繰り広げてでも、妻とレバノンで一緒に暮らす道を選んだ程度に愛してやまないのだから、ワンチャン狙いで成功する可能性もゼロではない。

 しかし、時間をかけてお金持ちになった人の多くは、身の丈に合った生活から種銭を捻出して、資産になるものを積み上げる基本に徹したことで、お金を持っていることが多い。

 そのような人たちが、果たして時間経過とともに価値が目減りするような、減価償却資産を積極的に保有しようと思うだろうか。

 単に若い子と遊びたいだけであれば、目先の金額は多少高く付いても、旬が過ぎたらいつでも変えられる、レンタルの方が合理的だと判断するのではないかと思う。所詮、遊びの域を出ない。

 そうして、婚活市場で最も価値がある20代の時に、ハイスペック男性にチヤホヤされては、自身の市場価値を過大評価して選り好みする。しかし、お金持ちの人ほど金目当てで近寄って来る人を見抜く能力に長けているため、下心だと見透かされ、結果としてパートナーには選ばれず歳を重ね、いつか若い世代に取って代わられる罠に嵌る。

 成れの果てが結婚相談所あるあるの、妖怪高望み売れ残りBBAへと変貌して、KKO(キモくて金のないオッサン)と罵り合う地獄絵図と化す。男性が婚活市場に近寄らなくなり、女余りとなっている現状は、こうした側面が大きいのではないかと思う。

無理してまで他人に合わせる必要はない。

 とはいえ、貧困から逃れるために、やむを得ず行っているパターンと、特段生活に困っている訳ではないが、楽に稼げる割の良いバイト感覚で行っているパターンに大別されると思われるため、冒頭の高校生や、いわゆる港区女子のような後者だけのステレオタイプから記すと意見が偏ることに留意する必要がある。 

 後者であれば好きにすれば良いが、前者の場合、本当に必要なのはお金ではなく、知識というケースもあるからだ。

 自己破産の仕組みや、生活保護を正しく認識していれば、援助交際や性風俗産業をセーフティネットとして利用せずに済む人も少なからずいる筈で、義務教育でこれらを組み込まないのは、いかがなものかと思うが、ないものねだりをしても状況は変わらないので、自衛のために図書館を活用する他ない。

 双方の共通点は、短期目線ならそれで良いかも知れないが、若さで荒稼ぎした時の金銭感覚・生活レベルのまま、同じ芸当が使えないであろう40代以降になった際に、労働で稼げる手取り20万円に満たない収入では、普通の生活が送れないと冒頭の高校生の状態になりかねず、長期目線で考えると、デメリットの方が大きいように思う。

 「普通」など社会のコミュニティ内での平均から、正規分布付近の1σ(標準偏差)程度の領域に過ぎず、その平均もまた、相対的な指標でしかなく共同幻想に過ぎない。

 周囲のたった数人のコミュニティ内でステータスを合わせるために、経済的な無理が生じる状態は滑稽ではないだろうか。日本だけで1.2億、世界で80億も人が居るのだから、無理に合わせる必要は全くない。

 八方美人は誰からも好かれない反面、全人類から嫌われることもない。自分を押し殺して八方美人に徹しようが、自分本位に振る舞おうが、誰かに嫌われる運命なら、自分にストレスを生じさせない後者を選んだ方が、少なくとも自分で自分を嫌いにはならないだろう。

 人はひとりで生まれて、ひとりで死んでいく存在なのだから、まずは自分のことを第一に考え、余裕がある時だけ、他人に合わせてもやっても良い位を人生の基本姿勢とした方が、お金のために尊厳を失うような事態は避けられるだろう。無理してまで他人に合わせる必要はない。


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