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ライターになりたいのっ!!

 ライター、ライター、ウェブライター。

 あぁ、なんて甘美な響きなんだ。頭に「フリーランスの」がつくとそのフレーズはより蠱惑的になる。

 フリーのウェブライター。あぁ、なんて惹きつけられる職種なのだろうか。この文字列を自分の名刺に表記している人がいるなんて、なんと羨ましいことであろうか。

 仕事と言えば、シャレオツなカフェテリアでMacBookproをカチャカチャとやっていそうだ。「スタバにいそうな客」でイメージされがちなステレオタイプそのものの振る舞いをしているに違いない!しかしMacBookのキーボードは静音性に優れているから実際はカチャカチャ鳴らない。運指にあわせて薄い文字盤がひたひたと沈み、紡がれるセンテンス。あぁ、優雅優雅。

 朝っぱらから作業着のイカついおっちゃんに怒鳴られていなさそうだ。カジュアルとフォーマルの間の気持ちいいところが彼らの作業着。ネイビーの薄っぺらいジャケットを羽織ってる。

 夜はそこらじゅうがガラス張りで夜景の見えるホールに集い、パーチーをしている。「出逢い」だの「ご縁」だのと、耳障りの良い誘い文句を陳列して互いの時間を絡め取りあう。ウツボカズラの共食い。これは別に羨ましくない。

 そして、フォーマルでスタイリッシュなおじさん(お嬢様の執事みたいな)が片手でお盆に乗せて運んでくる、淡く綺麗でほんのちょっとしか注がれていないカクテルを飲み交わしていそうだ。トップバリューの偽氷結なんて間違っても出てこない。

 繰り返すようだがライターという言葉に、どうして我々はこんなにも惹かれてしまうんだろう。

 やはり名前がいい。もやっとした輪郭の掴みづらい呼称なのに、どこかクリエイティブな響きを持っている。あの人たちが本当は何する人なのか知らないのに格上感がある。さっきまでの豪奢な描写もすべて「ライター」という語感からの妄想、というかアイアンマン2のワンシーンだ。


 製造流通販売営業飲食生産人事に経理総務。これら一般的な職種よりも圧倒的にフリーランスのウェブライターの方が偉そうだ。この世界でこれより偉い職種はハイパーマルチメディアクリエイターしか存在しない。断言するがこの人たちの住居の玄関は絶対に引き戸じゃない。ガラガラと音を立てないし土間につっかけが散乱していない。あるのはなんか先っちょが鋭い革靴のはずだ。

 脱線したが名前だ。Writer、わけがわからない。何を書けばライター足り得るのか。どうしてマンガをちょろっと紹介して文末でU-NEXTへ勧誘する文章はライティングと呼ばれ、私が営業車をポールにぶつけたときの事故発生状況報告書はライティングと呼ばないのか。どうすればwriteできるのか。

 そして記者や小説家、評論家ではない点も憧れられやすい要因だ。だってなんか俺にもできそうな感じがするじゃん。小説家とか言われると敷居が高そうだがライターはなれそう。なんか書けりゃいいんでしょ、パソコンで。

 ライターという言葉には、原稿用紙と向き合い長考するあのイメージが、一心不乱に書き続け右掌の下部分が黒鉛で真っ黒になるあのイメージが微塵もない。浮かぶのは青空の下で両手を伸ばし、「やったー」って飛び上がるフリー素材みたいなイメージだ。トクホのマークみたいなポーズ。

 しかし実際のところライティングはなかなか難しい。いま現在、「ニート歴〇〇年から本当にやりたいことを見つけてライターの道へ、副業収入〇〇万」的なキャッチに惹かれた新規参入者が不法投棄された木製パレットに集るシロアリの如くうじゃうじゃと湧いているが、モノに出来るのはごく僅かだ。参入は簡単だが、パワーのある文章を書くのは一筋縄ではいかない。

 私だって本当は小橋建太のハーフネルソンスープレックスのような活力に満ちたライティングがしたいのだ。え、例えがよくわからない?小橋のハーフネルソンは「つなぎの技」として連打されるのにその1発1発が一撃必殺級の威力じゃん?まぁつまりあれだよ、私はグッとくる言葉をコンスタントに書き続けたいのだ。

 「金になる文章」を生み出すのは更に難しい。どうすりゃいいんだ?私はnoteを初めて5ヶ月、約150記事、1投稿だいたい1000文字として約15万文字書いてきたがもちろん一銭にもなっていない。そもそも収益を目的とした文章を書いていないのだが、書こうとしたとて今活躍しているライター並みのライティングが出来る気がしない。

 あの人たちすごいよね。散々馬鹿にしてしまったが買いたくなっちゃうもん。私も結構釣られて買ってしまったよ、サプリメントとか脱毛クリームとか。胡散臭えなあと思うのについ読んでしまう。警戒していても受け身が取れない。彼らプロのライティングは小橋建太のバーニングハンマーのようなものだ。え、例えがよくわからない?小橋のバーニングハンマーってあれじゃん?バックブリーカーの体勢から真っ逆さまに落とされるから受け身が取れない最強技じゃん?まぁつまりあれだよ、私はいかにも宣伝臭え記事を嫌ってるわりにしょっちゅう読むし買うんだよ、ゴリ押されてる臭え商品を。あぁ、仕事がめんど臭え。

 おしまい。


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