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高校教師がITベンチャーで農業従事?"未来の子どものことを考えるから"こそ突き進む異色のキャリア

初めまして、REPOC FARMの土屋と申します。

今年の5月より農業のための人員として、大磯の畑で日々汗を流しています。
2021年3月までは高等学校でおよそ十年間、教鞭をとっていました。

これまでのREPOCの他のメンバーと違い、ITの世界には全く明るくありませんが、IT技術に強みをもつREPOCへと転職を果たしました。
そういう意味では、ちょっと異質な存在かもしれませんが、諸先輩方に暖かく迎え入れてもらい怒涛の3ヶ月を過ごしています。

今回は、なぜ私が教師の道を絶ってまで、IT企業発の農業に足を踏み込むことになったのかということについて、自分の生い立ちと合わせてお話しさせていただきます。
固定概念に縛られず、多くの人のキャリアの参考の一つとなれば嬉しい限りです。

異色のキャリアの原点は、自然と触れ合った時間

現在、神奈川県西部の小田原市の自宅で、妻と子供3.5人(もうじき4人目が生まれます)と共に目まぐるしい毎日を過ごしています。
転職を決断した理由の1つに“子供との生活”があります。前職では通勤に2時間ほどかかり朝や帰りの送迎はもちろん、休日もほとんど不在だったため、子供との時間がほとんど作れませんでした。
子供たちの父親は自分しかいないですし、“今”の子供たちには、“今”しか会えないと考え、時間的にも距離的にももう少し近くで子供との生活を送りたいと考えました。

教員はとてもやりがいのある仕事だと思いますし、奢りかもしれませんが、こんな私でも慕ってくれる生徒もそれなりに居たようです。
近くの学校で教員を続けてもよかったのですが、せっかく思い切って退職するのだから、別のことにもチャレンジしてみたいと考え、最終的にREPOCの門を叩く事となりました。

そもそもなぜ農業かということですが、それには私の生い立ちが深く関わってきます。
幼少期から田畑に囲まれた田舎で育ち、メダカやザリガニを捕ったり、魚釣りをしたりして遊んでいました。
夏休みになると、祖父が操船する小舟で潮干狩りに行き、アサリやハマグリを捕るのはもちろん、その周りに集まってくるクロダイやハゼ、コチなどを狙って釣りをするのが毎年の一番の楽しみでした。

小学生から高校生まではボーイスカウトにも所属し、キャンプやカヤック、手旗信号やロープワークといったアウトドア活動に精を出し、仲間と共に自然の中で活動することの楽しさや充実感を存分に味わいました。
高校生になってからは半ば先輩に騙されてはいった山岳部で、きついトレーニングに耐えながらも大自然の強さや美しさを学んできました。
周囲の友人は、漫画やゲームをするために集まって遊ぶということをしている子が多かったのですが、それ以上にやりたいことがたくさん有りすぎて、時間が足りず、結局漫画やゲームを全く持たずに大人になってしまいました。
決してゲームや漫画を否定するわけではありません。大人になってはまった漫画もいくつかあります。

そんな子供時代を過ごし、大学では「自然に関係することを勉強できたらいいなー」とうっすら考えながら、「学校の先生って面白そうだなー」とも思って過ごしていました。いざ進路を決める時に、自分は何がしたいのか?と考え、たどり着いたのが「今の日本の自然を自分の子供たちにも残したい」ということでした。その結果、当時の担任の先生の勧めもあって教員免許が取れる海洋系の地方大学に進学しました。

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漁業の研究に没頭した大学時代

大学入学時は、「環境問題に取り組む=環境保護」と考えていましたが、大学で勉強を進めるうちに少しずつ考えが変わっていきました。

島国の日本は、水産業は盛んな産業であり無くてはならない産業の1つです。
海洋の「環境保護」と聞くと「漁獲量の規制」となりがちですが、漁獲量を規制したら漁業者の生活、つまり水産業で生きていく人はどうなるのか?という問題に突き当たりました。
しかし、漁業の実際を知らなさすぎると思い、研究室は環境系ではなく漁業系の研究室に所属しました。

研究室時代、漁師さんから聞いたことや同じ研究室の仲間の研究成果は非常に興味深い物ばかりでした。漁業の内容によっては、漁具自体が魚を育てる“漁礁”として働いたり、海洋環境を改善する働きがあったりするというのもその一例です。
産業として人が手を入れることで環境が改善し、豊かな漁場になるという一見矛盾に見える現実を目の当たりにしました。

話は少し逸れますが、学生時代に森林に関するNPOに参加していた期間があります。
島国で土地の少ない日本の山林の多くは、かつては“里山”として人の手が入ることで、独自の生態系が維持されていました。
しかし、林業が衰退し、山間部が過疎化した現在では、山は荒れ、生態系が乱れ、自然災害が頻発するようになってしまったということも学びました。
つまり、日本という国の自然は人の営み、特に第一次産業と自然との関わりが非常に重要だということが分かりました。

また、自然と関わりあう中で、五穀豊穣祈願や大漁安航祈願といった祭りが行われ、それがやがて文化となって根付いていきます。
文化を守るためにも第一次産業は大切なのだということも教えられました。
漁業を守り漁師さんの収入も安定させ、環境も保護するにはどうすればいいのかと考えた結果たどり着いたのが、漁獲物の品質向上の研究でした。
研究内容は、あまり先行研究がなかったため学会でも多少の評価をもらうことができましたが、現場レベルまで技術をおろしてくる前に大学院を修了して就職してしまったので、ある意味志半ばで投げ出してしまったような部分もあります。

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漁業研究から高校教師、そして農業の道へ

そんな思いを持ち、これからの日本を担う子供たちに自然から得られる恵みや楽しさを経験してほしいと考え、高校の教員になりました。
生徒達にはそのことを授業や生活の中で極力伝えてきたつもりです。しかし、あくまで私は外の人でしかありません。
農業・林業・水産業のいずれにも身を置いたことはありません。
今回転職するならば、こう言った一次産業に携わることがしたい!さらに言えば、現在疲弊している日本の一次産業には新しい切り口が必要です。“日本の産業=日本の文化”として大切な根っこや幹の元の部分は残し、新たな形で萌芽更新していく必要があると思います。私は、REPOCという会社で、日本の文化を一緒に育てていきたいと結構真剣に考えています。
ただ、元々は漁業に関する職に転職をとも考えていたのですが、今日の漁業は非常にしがらみが多く、個人の力で切り口を広げるのは一筋縄にいかないのが現実です。
漁業において先進的な取り組みをしている地域もありますが、生憎“子供との生活”を送るにはいささか遠い場所がほとんどでした。
一方で、農業は比較的介入の余地があり、参考になる前例も複数あります。農業で知見や経験を積み、そのノウハウを将来的には地元の水産業にも生かしたいという野望(?)もあり、農業の世界に飛び込みました。
また、新たな切り口の1つとして、よく話題に上がるのは産業の六次化です。
簡単に言えば生産から加工・販売まで行うのが、六次産業ですが、すべてを一手に行うためブランド化しやすくなります。
ブランド化には、品質の向上や社会的意義を持たせるなどの付加価値が必要です。ちなみに私の学生時代の研究は、前者の品質向上が目的でした。日本の農業のブランド化において、品質の向上はかなり頭打ちになっていると思います。
これからの農業では、それに加えて社会的意義が必要なブランド価値になると考えています。

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想像よりもハードで奥深い、農業の世界

私が所属するREPOC FARMでは、休耕地や耕作放棄地を活用することで農地を再生させ、作物生産の現場に蘇らせるという取り組みを行っています。これは正に社会的意義を持つ取り組みだと思います。
私が作業をしている地域では、休耕地がかなり増えており、その背景にはいわゆる“若手”がほとんどいないことが起因しています。
非農家の新規参入が少なく、休耕地や耕作放棄地が増えるのは、新しく農業を個人で始めるのにはハードルが高く感じられるからだと思います。
実際農業を個人で始める場合は、地域によってはそもそも土地の確保も困難でしょうし、農機具や資材を集めるのにも百万円単位でお金がかかります。
REPOCではITという柱があるため、農業に対する初期投資がある程度は可能です。これは新規参入するうえでかなりのアドバンテージだと思います。
しかしながら、我々には経験値が不足しています。これからは、知識だけでなく、経験を積むことで、総合的に物事を判断する力をつけていく必要があることは確かです。
文化を次世代に継承するためには、私で終わりではなく継承者が必要です。大げさかもしれませんが、これから我々が経験を積み、次世代を迎え、伝えることでREPOC FARMが“日本の文化の入口”の1つとなれるようになれたらいいなと考えています。

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本当はこんなことがしたい、に嘘のない人生を

教職の道から農業の道に移るのに迷いや葛藤、様々な思いがありました。
長く勤めることが正義という考え方が多い中で、道を変えるというのはかなりハードルの高いことだと思います。正直私も定年まで教員を続けていていたら、それなりに「頑張ってきてよかったな」と思えるだろうと思います。
一方で、“本当はこんな事がしたい”という思いを抱えたまま、日々を過ごすのは正しいことなのかな?とも思います。
不平不満だけを並べ、現状を変えないのは自分自身への言い訳で、豊かな人生だとは思えません。もちろん、変わらない日々を愛している人もいます。
人生の豊かさを求めて新しい道に踏み出すことも、また一つの人生のあり方だと考えています。

そんな偉そうなことを言いながらも、始めたばかりの農業で試行錯誤の日々です。
それに加えて、子供達の喧騒(?)や家事そしてコロナ禍などに日々の生活は追われて、大好きな魚釣りにも全然行けず、大好きなBBQもできず、悶々とした日々で、どこかで発散したいのですが、楽しみは後に取っておこうと思います。
長々と駄文にて失礼致しました。
未熟者ですが今後ともよろしくお願い致します。

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