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東京街①サブカルじゃない中野

いつの間にか梅雨だ。相変わらず東京のアパートには戻れない日が続いているけれど、こんな時には東京の街を思い出して書いてみようとふと思った。
上京してから3年目、東京の町にもそれぞれに独特の個性があるのを知った。

まずはこの春まで住んでいた、中野の話をしようと思う。

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東京に、中野という街がある。
(写真は2月末、退寮した日の一枚)

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新宿駅から直通で5分くらい。地図を見ると東京の真ん中らへんにある。
今回は中でも有名なコンサートホール、中野サンプラザ(写真左)があるJR中野駅付近を書く。

JR中野駅は、全国の駅あるある、「北口と南口ではウソみたいに栄え方が違う駅」のひとつだと思う。
まず、帰宅ラッシュ時の人の混み具合が北と南ではウソみたいに違う。夕方の南口改札、もしや北口改札は閉じられているのですか?と振り返ってしまうくらいには混む。
たぶん改札を指定せずに「集合は中野駅」といわれれば、それは北口だと思う。そのくらいで北口は栄えている。

さて「サブカルの聖地」という中野の別名を受けて立つのが、駅の北口にある「中野ブロードウェイ」という商業施設だ。
1階はアメリカの本場ブロードウェイ感ゼロな薄暗い通路だが、主役は2階にいる。2階にはアニメのグッズや古本、中古のオーディオ屋さん、年季の入った昭和のプロマイド写真集がつまった何でも屋...とにかくカオスな空間が広がる。外国人観光客も多い。

このブロードウェイの魅力はいろんな雑誌やテレビで取り上げられているので、今回は割愛しようと思う。

私がいとおしく思うのはそれ以外、サブカルなほうではない中野だ。


意外と普通な街、中野

ブロードウェイに行くまでに必ず通る、サンモール商店街というものがある。でもこの商店街は、言ってしまえば普通だ。ブロードウェイがあるからサブカルかと言われればそうではないと言える。
サンモール商店街にノスタルジーを感じに行くのはちょっと違う。

住んでわかったことは、この商店街は薬局がとにかく多い。
これはもう、突然腹痛におそわれた人がいつでもどの位置でもすぐに正露丸を買えるようにする計らいがあるのかな?というレベル。
ちなみに、私の推し薬局は〇ツモトキヨシさんだった。風邪ひいたり鼻炎になったりでよくお世話になった。
だって、お薬を買おうとしたとき、優しい薬剤師さんたちが毎回絶妙なタイミングで訪ねてきてくれるんだもん。勧められて買ったお薬は全部よく効いた。

◯ツモトキヨシの向かい側に中野サンプラザがある。
ここにとってもいい花屋さんがあることを、たぶんメディアは知らない。

外からは見えにくいが、道路に面した地下にちいさな花屋がある。そこのお花はどれも花びらの色が濃く、きれいな状態のものが多かったと記憶している。
観葉植物の種類も豊富で、値札が一枚一枚手書きなところも何となく好きだった。値段がお手頃だったので、貧乏学生ながらたまに花を買っては部屋に飾ったり寮の洗面台に生けていた。

そして商店街のシャッターが閉まるころ、すこし道をそれたところで飲み屋群の明かりが点いていく。
中野駅北口には、実は一晩では回り切れないほどの飲み屋ゾーンがある。
たくさんのお店が所せましと並んだ、この迷宮みたいな飲み屋街に華金になるとサラリーマンがたくさんやってくる。
狭くて、人が多くて、ソースのようなおいしいにおいが至るところからしてきて。ここに芸能人がいてもきっと見つからないだろうなあ、と思いながら毎回通った。

昼間の商店街の活気を、夜は隣にある飲み屋街が受け継いでいた。

実は中野駅を降りて高円寺に向かって歩くと、大きな陸橋がある。
ここは中野の穴場だ。
犬を連れてお散歩する人たちや、小さい子供と一緒にあるくお父さん(この陸橋はなぜかお母さんよりも子連れのお父さんが多い)がよく通っていた。
何本もある路線を真上から見下ろす。まっすぐ東京の奥地につながっていく中央線を見る。

ここで朝日も夕日も見た。
新宿を過ぎると中央線沿いは高い建物がなくなって見晴らしもいい。

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中野が情緒あふれる下町かと聞かれれば、多分それは違う。どちらかというとチェーン店が多いので、見る人が見れば「よくあるそこらへんにある町」にすぎないのかもしれない。

けれど、そこが良いのだ。

上京したての頃、なんて中野は人が多くてうるさいんだ!と思った。通勤ラッシュの駅は改札で渋滞するし、(改札が滞るなんてはじめての経験だった)商店街にいる人が広島の3倍だし、毎晩高架橋の下で夢追い人が演奏したり歌ったりする風景は新鮮だった。

でも渋谷から中野に帰り、家路に向かう人たちを見ると、どこかホッとした気分になる。

家路に向かう彼らは渋谷とか新宿の、ザ・都心ではあんまり見かけない人たちだ。
お年寄りのおじいちゃん、親の手を引いて歩く小さい子ども、それと一緒に歩くおかあさんとか、おとうさんだったりする。
中野駅あたりは私のようにひとり暮らしの若者はむしろ少なく、世帯持ちや、家族がいるひとたちが圧倒的に多い。

東京=都会。日本の中心、お金持ち、上京、一人暮らし、若者多

というイメージが強かった自分にとって、東京にもあたりまえのようにいろんな「家族」というものが存在して、暮らしていることが、最初はなぜか不思議でたまらなかった。

空高く見えないところに住む家族でもなく、自分と似たような家族が暮らす町に越してきたんだと気づいたとき、どれほど安心したか。
じぶんの身の丈にあった町というものは、確実にあるのだ。

サブカルの町、と言われることが多々ある中野だが、私にとっての中野はきっとこれからも、離れた故郷を東京にいながらにして感じられる
「私の中のメインカルチャー」な町であり続けると思う。

東京に来て一番さいしょに暮らした町が中野で良かったと、こころから思う。

おしまい。

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