見出し画像

これからの時代の必読書「13歳からのアート思考」 by エシモの備忘録

画像1

13歳からのアート思考
「自分だけの答え」が見つかる
末永幸歩

「アートの歴史は、常識という圧力からの解放の歴史であった」

◆この本から学びたいこと
❶アートの歴史
❷評価されるアーティストの偉業
❸アート思考

◆この本から学んだこと
❶アートの歴史
1.エジプト・オリエント

画像2

神や王に捧げる美術。永続的なデザインが求められた。
求めた人:王
目的:王の死後、王の魂に仕える家臣を描く
結果:対象物の特徴が明確になる向きで組み立て、永続性のある姿を描いた

2.ルネッサンス

画像3

中世までの神、キリスト教に捧げる絵から、貴族のステータスのための絵にシフト
求めた人:貴族
目的:貴族のステータス向上、教会のプロデュース
結果:遠近法を使い、リアルにそこにいるようないわゆる「上手い絵」が描かれた。

★1888年 コダック社がカメラを発明し販売

画像4

ここで芸術界は「よりリアルに描くのが正しく、それは芸術家にしかできない名誉ある仕事」という常識と権威が大きく揺らいだ。芸術家たちは生き残りをかけて、芸術とは何かを問い直す必要に迫られた。ここからアートの民主化の歴史が始まる。

3.20世紀アート

画像5

自分なりのものの見方を広める活動が始まる
求めた人:アーティスト自身(内発的関心)、コレクター
目的:今までの常識・価値観をアップデートする
結果:既得権益が崩れ、アートが民主化された。

4.21世紀アート

画像6

アートという枠組みが無くなり、自分のものの見方で興味関心あるものを探求し、新しい答えを生み出す行為
求める人:自分たち一人一人
目的:知的な刺激や知識社会に対する答えを求める
結果:アーティストのコモディティ化、アートの城壁の死。自ら問いを生み出し、探求することが、いつか誰かの心を満たすことにつながる。


❷アートを解放してきたアーティストたち
1.アンリ・マティス

画像7

目に映る通りに忠実に世界を描くと言う常識からアートを解放した。色の革命。「写真が誕生したならうまく描く意味ないやん、色で勝負や!」
代表作:緑のすじのあるマティス夫人の肖像 1954年

2.パブロ・ピカソ

画像8

遠近法を疑問視し、3次元の世界をより本質的に捉え直した。構図の革命。「カメラが誕生したし、もう遠近法を守るの古いわ。しかも人の目は遠近法の通りに見えるわけちゃうし、多角的からものを捉えとるんやから、それを絵に落とし込んだるわ!」
代表作:アビニョンの娘たち 1907年

3.ワリシー・カンディンスキー

画像9

人の心に直接響き、惹きつける絵を求め、具象を消した。抽象の誕生。「なんでわざわざ物をキャンバスに描き写さなきゃあかんねん、わいの心に流れる音楽のイメージを直接描いたる!」
代表作:コンポジションⅦ 1913年

4.マルセル・デュシャン

画像10

アートは美しいものという概念から、思考そのものだとして、視覚芸術からアートを解放した。文脈の誕生。「美術館に飾られたものをありがたく観るのがアートなら、わざわざ自分で作らんでも、そこらへんの物にわいのサインいれて飾ればええやん。自分の考えを示すのがアートやんな」
代表作:泉 1917年

番外編.千利休

画像11

画像12

「茶碗は視覚的に美しいもの」という概念を壊し、真っ黒な茶碗でお茶を立て、尚且つ茶室の空間全体を含めて一服とした。華やかな茶碗で飲むのが素晴らしいのではなく、空間全体から提供者のもてなしの思考を読むことが美だとして茶道を完成させた。「美とは華やかさではない、見立てである」
代表作:茶道、黒楽茶碗 安土桃山時代

5.ジャクソン・ポロック

画像13

「アート=何かのイメージを映し出すもの」という概念を「アート=キャンバスに絵の具が乗っている物質そのもの」へとアップデートした。
アメリカ時代の開拓者。「なんでみんな絵を見る時、何かが描いてあるはずだと信じるん?キャンバスに絵の具が乗っているだけで、それはもうアートやで」
代表作:No._1A 1948年

6.アンディ・ウォーホル

画像14

アートとアートではないものとの住み分けの秩序を撹乱させた。ポップアート革命。アートの民主化の完成。「なんで絵画と彫刻だけがアートなん?そもそもこの資本主義の時代に美術館に飾られたモノだけが、価値のあるモノってことはないやろ。俺にとっては街にあるモノも立派なアートや」
代表作:Brillo Boxes 1964年

7.MoMAがパックマンをコレクションに追加した 2013年

画像15

アートの城壁がなくなった平野では「自分たちのものの見方」によって私たちの生活に深く関わるものを作る、あるいは選出する時代へとシフトした。
パックマンが選ばれた理由
「デジタルと現実社会が混ざり合う現代で、1番純粋に人と関わるインタラクションの最もたる例である。時間、空間、美しさ、そして挙動というインタラクションデザインの要素と特徴のすべてを備えている。挙動は私たちの今後の生活に大きな影響を与えるだろう。パックマンは人類の生活の価値観を大きく変えたきっかけなのだ」

❸アート思考
1.アウトプット鑑賞
作品、モノ、商品、サービスを見るとき、気づいたことをとにかくメモる

2.深掘りする
「どこからそう思うのか?/そこからどう思うか?」の質問で気づいたことを掘り下げると自分なりの答えや本質、発見に行き着く

3.常識を破る
違う業界、異国、異なる時代から今の自分にないものを取り入れる。
アートの世界にアーティストたちが取り入れてきたものはアート以外の世界からヒントを得たものだった。

4.背景との結びつけ
物事の背景を理解するからこそ、その道につながるイノベーションが起こせる。
→まさに資本主義と同じ


◆エシモの所感
ぼくはこの本に救われた。

小さな頃からお絵描きが好きだったぼくは、高校生の時は美大に進学してデザイナーになって博報堂で働いてから佐藤可士和さんみたいな一流デザイナーになるのが夢だった。しかし、家庭内事情で美大進学を諦めてしまい、法政大学に入学する。

大学近くの美術館で「現代アートは実は世界の宝である展」を観て、現代アートの面白さにハマる。自分でも個展を開いたりグループ展に参加したりした。でも、この時代に絵を描いたり、コラージュを作ったりして「アートです、高いけど買ってください」というのは何か違うような気がしていた。

そんなモヤモヤを残したまま、何がやりたいかも決まらずに大手IT企業に就職してしまい、まったく興味のないSEのチームリーダーとして働くようになる。

趣味で毎日インスタグラムに自分の作品を投稿していた。興味を持った分野をテーマにして自分の視点で考えながら絵を描いていたが「これが何につながるのか、自分は絵は好きだけど、こんなものでお金は稼げないのだし、なんでこんな特技を持ってしまったんだろう…」と苦しんだ。

そして、抑うつになり、会社を辞めて、たまにワイヤーアートやシンボルマークで稼いだり、本を出版してみたりとふらふらして2年が経とうとしている。

でもこの本の著者は「自分の好奇心や内発的関心から探求の根を深く伸ばし、価値を創出する人が真のアーティストだ」と言っている。
ぼくは、毎日のスケッチを通して、自分なりに探求の根を伸ばしていたのだと気がづいた。いいね!を稼ぐために投稿しているのではない。ただ、思考の結果としてペンを走らせ、それが深い根っことなり、いつか自分にしか生み出せない価値が生まれるのだ。
だから思考はやめてはいけないんだ。

2013年にパックマンがMoMAのコレクションに選出されて大騒ぎになったのは、アートの価値観がまたアップデートされた証だ。

マティスが100年前に大批判されたのは、彼が当時の常識を打ち破った先駆者だったから。そして今では「デジタルと現実世界のインタラクションの象徴であるゲーム」までもがアートの歴史に刻まれた。つまり、21世紀に入り、絵画や彫刻の時代は終わりつつあるのかもしれない。確かに何百年も前に発明された油絵具を未だに使う理由がよくわからないし、デジタルの方が永久的に保存できるだろう。

アートの城壁が崩された現代は、「アートとはこれだと言えるものが無くなった」ということ。しかし、アーティストは消えないだろう。

何故なら、過去のアーティストたちの思考法を身につけた人々が、今の常識を打ち破る新たな価値感を生みだしていくからだ。

画像16

そして、この生き方こそが、先行き不明な現代を生きるただ一つの道なのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?