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目指したのは、気軽に寄れて、お菓子も美味しいコーヒースタンド|KANNON COFFEE 道川 慎一さん・道川 はなさん(前編)

KANNON COFFEEは、『美味しいコーヒーと美味しいお菓子』をコンセプトとしたコーヒースタンドです。2014年、名古屋の大須に1号店をオープンし、名古屋の本山、神奈川の鎌倉、東京の世田谷に店舗を広げました。

KANNON COFFEEを経営しているのは、道川 慎一さんと道川 はなさん。前編ではKANNON COFFEEを始めた経緯と、提供する“食”へのこだわりを伺いました。

海外や自らの経験から学び、気軽さを大事にしたお店を開こうと決意

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ーKANNON COFFEEを始めた経緯を教えてください。

道川 慎一(以下表記:慎一):イギリスのロンドンで暮らしていた経験もあり、気軽に立ち寄れる「コーヒースタンド」スタイルのお店が、当時の日本にはあまりないことに気づきました。そこで、自分たちでつくろうかと。

道川 はな(以下表記:はな):それまで私たちは、食事も提供するようなカフェをやっていました。そのときは、お客さんが来ても予約がいっぱいで帰ってもらったり、1時間待ってもらったりすることが多く、違和感を感じていたんです。

そこで、気軽にさっとコーヒーを買えるお店があったらいいなと思いました。「喫茶店に入る時間はないけど、コンビニよりも美味しいコーヒーが飲みたい」タイミングも、結構ありますよね。

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ーKANNON COFFEEで提供される“食”は、どのようなところにこだわっていますか?

はな:コーヒーはKANNON COFFEEオリジナルブレンドで、提携している会社に何種類かつくってもらっています。必ずスペシャリティコーヒーがいいわけではなく、いかにお菓子と合うかをメインに考えていますね。

慎一:自家焙煎だとiPadでの管理が多いですが、KANNON COFFEEで提供するコーヒーはすべて手作業で管理してもらってます。また、自家焙煎だと15キロのロースターで挽くところを、うちだけのために30キロのもので挽いてもらうので、ムラが出ない美味しいコーヒーになっています。

「自家焙煎の方がいい」イメージはありますが、提携している会社の方はその道何十年という人たちなので、僕たちはお任せしています。

はな:お菓子やドリンクで意識しているのは、季節感。また、できるだけ添加物や香料を使わずに自然のものから味を出すようにしています。たとえば、シロップはフルーツを煮るところから、キャラメルはグラニュー糖を焦がすところからつくっています。

ーたしかに、KANNON COFFEEの公式HPにも『美味しいコーヒーと美味しいお菓子』とあり、お菓子を大事にされていることが伺えます。

はな:KANNON COFFEEを開くときに「コーヒーだけではなくて、お菓子も提供したい」と思っていました。当時のコーヒー屋さんはコーヒーしか置いてないところが多くて、それが寂しく感じたんです。

コーヒーがメインではありながら、お菓子も仕入れるのではなくて自分たちでつくったものを提供することにしました。

慎一:コーヒー屋さんはコーヒーがあれば誰でも始められます。その中で手づくりのお菓子があるのは、KANNON COFFEEの強みだと思います。

はな:また、カフェに行ってケーキを買うのに抵抗がある男性って多いと思います。でも、KANNON COFFEEでお菓子を買うお客さんを見ていると、男性も意外に多くて。気軽に立ち寄れるコーヒースタンドだからこそ、買いやすく感じてもらえるのではないでしょうか。

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「日本のお茶の魅力を国内外に発信したい」そんな想いからお茶販売も

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ーKANNON COFFEEではお茶も販売していますよね?なぜお茶に注目したのでしょうか。

はな:理由は2つあって、1つは「日本国内でお茶の良さを伝えたい」という想いからです。ペットボトルよりもっと味も香りも良いお茶を、いまの若い人たちにも飲んでほしくて。

ーなぜそう思ったのでしょうか?

はな:日本のお茶農業は、「若い世代にどう繋いでいくか」という課題が深刻化しています。

私の母は静岡県出身で、妹も静岡県の川根に住んでいます。母や妹の周りにはお茶農家さんがたくさんいて、お茶摘みをやらせてもらうなど接する機会も多いです。

そんな中でお茶農家さんに話を聞くと、「お茶農業は年々厳しくなっている」とのこと。収穫した茶葉は大量に安くでしか買ってもらえないし、気候の関係で静岡県は西の方より出荷が遅れて低値で取引されてしまいます。

そういう経緯もあり、KANNON COFFEEでは静岡県の川根茶を取り扱っています。

ーお茶販売を始めた背景には、お茶農家を後世に繋いでいくための『サスティナブル』や『フェアトレード』のような考え方もあるのですね。

はな:そうですね。いまお茶農家さんには70歳くらいの方が多いのですが、「大変だから」「儲からないから」などの理由で、継ぐのはごく一部です。とても美味しいのに、このままなくなってしまうのはもったいないと思います。

みんながお茶にそれ相応の値段を払えば改善するかもしれないし、若い人たちがたまにはペットボトルではなくてお茶を淹れて飲むのもいいのではないでしょうか。KANNON COFFEEのお茶販売で、そういうのをうまくアピールしていきたいです。

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ーお茶販売を始めたもう一つの理由はなんですか?

慎一:海外戦略です。いま海外では、健康志向のために「日本のお茶が欲しい」という流れがあるんです。また、僕たちはずっと「お店をロンドンで展開したい」と思っているので。

ー海外戦略の進捗はいかがですか?

慎一:いろいろチャレンジしていますが、なかなか実っていないのが現状です。

有名なイギリスのグラフィック集団「TOMATO」にパッケージをお願いして、コストをかけてでもデザインにこだわるところから入りました。いま、そこからどう踏み出そうかなという状況です。

はな:ヨーロッパの農薬の規制はとても厳しく、私たちが個人で頑張っても莫大なお金と時間がかかってします。そのため、現段階では海外でのお茶販売は一旦ストップで、国内から日本茶の良さを発信しています。

お店づくりとスタッフの働きがいも大切に

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ー今まで“食”に関して伺いましたが、ほかのこだわりはありますか? たとえば内装とか。

慎一:内装はそれほど。僕は内装って意外とみんな見てないと思っているので、高い家具などは置きません。ディスプレイやスタッフの制服などに、総じて“まとまり”があればいいと思っています。

イベント出店では2メートル画とかの狭い範囲でお店を開きますが、その中でめちゃくちゃオシャレを表現している他店舗さんもいます。それができるのは、結局“まとまり”があるからなのかなと。

はな:また、KANNON COFFEEの内装は自然体だと思います。オシャレなお店の中には壁が真っ白だったり、生活感のあるものが一切なかったりするところもありますよね。私はそれをあまり落ち着かなく感じてしまうので、KANNON COFFEEの自然な感じが好きです。

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ー実際にお店をつくるときはどのように進めていくのですか?

慎一:設計士さんの色と僕らの色と、半々を擦り合わせていく感じです。たとえば、壁のテクスチャーに合う木の知識は僕にはないので、そこは設計士さんにお任せします。一方、ざっとしたアイデアは僕が決めていろいろ提案します。

ー結果的に、4店舗で共通したことはありますか?

慎一:間口を広くすることは意識しています。やはり間口が広い方が、気軽に入れる雰囲気が出ると思って。本山の店舗は例外ですが、ほかの店舗は奥行きをとるよりは横に広くて、入ったときにぱっとお店の全体像が見えるようになっています。

また、基本的に席を多く取ろうとはしないですね。「何坪あれば何席」というセオリーは無視して、席の配置は見たときのバランスで決めます。KANNON COFFEEはあくまでコーヒースタンドであって、気軽さを重視しているので。

はな:それから、松陰神社と鎌倉の店舗は席がベンチみたいになっています。お客さんが、隣同士で居合わせた人やスタッフの子たちと喋りやすいようにしているんです。スタッフの子との会話を楽しみに来てくれるお客さんも多いです。

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ーほかにお店のこだわりがあれば教えてください。

はな:スタッフの働きがいもそうですね。たとえば、年に数回はスタッフの子がコーヒー豆のブレンド提案や考案をしてくれますし、イベント出店にはスタッフの子も連れて行きます。

ただのアルバイトではなくお店の一員として、「いかにやりがいや楽しさを感じさせてあげるか」を大事にしています。そういう気持ちでいると接客も変わってくると思うので。お店に愛着が湧いている子は多いと思います。

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KANNON COFFEEが人気店になった理由は、コーヒーブームやインスタブームに乗ることができただけではないでしょう。

コーヒー・お菓子・お茶などの“食”や、お店づくり、スタッフとのかかわりまで、さまざまなところにこだわりを持っているからではないでしょうか。

次回・後編はKANNON COFFEEが強く意識している「エコ意識」について伺います。お楽しみに。

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▼KANNON COFFEE(大須観音店)
住所:
〒460-0011 愛知県名古屋市中区大須2丁目6-22
電話番号:052-201-2588
営業時間:11:00~19:00(年中無休)
HP:http://www.kannoncoffee.com/
Facebook:https://www.facebook.com/kannon.coffee/
Instagram:https://www.instagram.com/kannoncoffee/?hl=ja

▼(本山店)
住所:
〒464-0821 愛知県名古屋市千種区末盛通5丁目18サンライズ本山2F
電話番号:052-753-3703
営業時間:9:00〜19:00(年中無休)
Instagram:https://www.instagram.com/kannon_motoyama/?hl=ja

▼(鎌倉店)
住所:
〒248-0016 神奈川県鎌倉市長谷3丁目10−29
電話番号:052-753-3703
営業時間:10:00~18:00(年中無休)
Instagram:https://www.instagram.com/kannon_kamakura/?hl=ja

▼(松陰神社店)
住所:
〒154-0023 東京都世田谷区若林3丁目17−4
電話番号:03-6805-2083
営業時間:9:00~19:00(年中無休)
Instagram:https://www.instagram.com/kannon_shoinjinja/?hl=ja

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撮影・執筆=中原 愛海