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すみれ観劇ノート 2014年

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宝塚歌劇をはじめとする観劇の感想。2014年版です。
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2014/12/27 「PUCK」

2014/12/27 「PUCK」

★2014年観劇納めは名作の再演で

 今年最後の宝塚観劇は月組「PUCK(パック)」。百周年の名作再演シリーズの目玉の一つである。初演は1992年、当時の月組トップスター涼風真世が主人公パックを演じた。私はかつて、テレビ放映された初演を偶然目にしたのだが、愛らしい姿でローラースケートを履いて舞台の上を走りまわるパックの姿に「宝塚はこんな作品もやるんだ」と驚いた覚えがある。若い人はご存知ないと思う

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2014/11/22 「風と共に去りぬ」(全国ツアー)

2014/11/22 「風と共に去りぬ」(全国ツアー)

 私の感想ノートを読んだ友人から、星組全国ツアー「風と共に去りぬ」の感想は書かないのか?とリクエストがあったので、今さらではあるけれども、思い出しつつ書いてみることにした。(2015/3/8)

★「風と共に去りぬ」が横浜にやって来た

 宝塚歌劇には「全国ツアー」と呼ばれる地方巡業公演がある。2014年秋の全国ツアーは星組「風と共に去りぬ」。私の地元である横浜市の神奈川県民ホールにも久しぶりに宝

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2014/11/6「エリザベート」(2)

2014/11/6「エリザベート」(2)

★今回のエリザベートはひと味違う?

 私にとっての2回目の観劇となる今回は、休演日の翌日ということもあって、全キャストとも休養十分な感じで前回よりもパワーがあった。だが、それ以上に驚いたのは、エリザベートがまったく可哀想な女性に見えなかったことだった。

 エリザベートは自己中心的な性格で、たとえ周囲をどれほど困らせようと、己を決して曲げることなく自分の意志を貫いて人生を終えた人、そんな風に思え

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2014/10/28「エリザベート」(1)

2014/10/28「エリザベート」(1)

★「エリザベート」が宝塚に帰って来た

 あの「エリザベート」が宝塚に帰って来た。

 「エリザベート」は宝塚の演目としては異色である。宝塚は男役のトップスターが主役を務めるので、女性がタイトルロールになることは珍しい。しかも、偶然の玉の輿、嫁姑問題、夫の浮気、子どもの反抗という女性が人生で遭遇するトラブルがフルセットで盛り込まれている演目なんて、まず他にはない。

 宝塚版「エリザベート」はヒロ

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2014/10/16「伯爵令嬢」

2014/10/16「伯爵令嬢」

★少女たちの夢とあこがれを宝塚の舞台で

 「ル・ミュージカル・ア・ラ・ベル・エポック『伯爵令嬢』−ジュ・テーム、きみを愛さずにはいられない−」というのが、この作品の正式なタイトルだ。なんだか新作のスイーツみたいな名前である。原作のコミック『伯爵令嬢』は「ひとみ」に1979〜84年に連載されていたという。その時代はすでに少女まんが誌との縁が切れていた私は、観劇前に原作まんが(全部でコミックス12巻

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2014/9/14「The Lost Glory −美しき幻影−」

2014/9/14「The Lost Glory −美しき幻影−」

★轟・柚希・夢咲の共演で「オセロー」が実現?

 星組で轟悠が主演するというのは、ちょっとした事件だ。星組は就任6年目のトップスター柚希礼音とトップ娘役夢咲ねねのコンビを擁する人気の組。いくら100周年とはいえ、宝塚大劇場・東京宝塚劇場での公演から長らく遠ざかっていた轟が主演することに興行的なメリットはありそうにない。どうやら柚希が「悪役をやってみたい」と希望したことから実現した企画らしい。

 

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2014/7/28 「THE KINGDOM」

2014/7/28 「THE KINGDOM」

★スピンオフは二度美味しい

 「THE KINGDOM」は2つの意味で珍しい作品である。1つめは、これが大劇場公演「ルパン−ARSENE LUPIN−」のスピンオフ作品であること。2つめは、凪七瑠海と美弥るりかという月組を代表するスターのダブル主演公演であることだ。これは見ないわけにはいかない。ささやかな期待を持って日本青年館に足を運んだが、予感通り「THE KINGDOM」は「当たり」だった。

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2014/7/4「ベルサイユのばら−オスカル編」

2014/7/4「ベルサイユのばら−オスカル編」

★昭和の香りの残る西洋時代劇

 ベルばらと言えば宝塚を代表する演目。さぞやファンには好評なのだろうと外野からは思われがちだが、ファンの間で再演を歓迎する声は少ない。ヅカ友達は「あぁベルばらかぁ」とため息をもらし、いつもなら観劇につきあってくれる夫も「ベルばらなら行かないよ」とつれない。

 無理もない。原作が発表されたのも、宝塚歌劇で舞台化されたのも昭和40年代後半のこと。有名な「愛あればこそ」

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2014/6/12 「オーシャンズ11」

2014/6/12 「オーシャンズ11」

★本物の男性が、宝塚ミュージカルに出るとどうなる?!

 宝塚歌劇のミュージカル「オーシャンズ11」を、SMAPの香取慎吾主演で渋谷・東急シアターオーブで上演、と聞いて私をはじめ多くの宝塚ファンは、「ああそうだったのか」と頷いた。しばらく前から、東京宝塚劇場で観劇する香取さんの姿が何度か目撃されていると、私も聞いていた。この作品の再演のためだというならそれも納得だ。だが、宝塚の演目は本来女性である

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2014/6/1 「太陽王−ル・ロワ・ソレイユ−」

2014/6/1 「太陽王−ル・ロワ・ソレイユ−」

★期待のフランスミュージカル、星組で日本初演

 星組トップスター柚希礼音がルイ14世を演じる。それだけでチケットを買う価値は十分にある、と思ったのは私一人ではあるまい。トップスターとしての長いキャリア、舞台上での存在感の大きさ、その身体能力を活かした伸びやかでダイナミックなダンスが持ち味の柚希ほど、太陽王ルイ14世にぴったりの男役スターはいない。

 さて、この「太陽王」は2005年パリ初演のフ

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2014/5/1 花組「ラスト・タイクーン」

2014/5/1 花組「ラスト・タイクーン」

◆蘭寿とむ最後の作品はこれでよかったのか?

 蘭寿とむの最後の主演作となった「ラスト・タイクーン」。この作品タイトルが発表された時「え?」と思った人ファンは少なくないハズだ。実は以前にも宝塚でミュージカル化されている。以前のタイトルは「失われた楽園〜ハリウッド・バビロン」。同じ花組で主演は芝居巧者の真矢みき。作・演出はいまや飛ぶ鳥を落とす勢いの演出家小池修一郎。私はCS放送のTAKARAZUKA

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2014/4/20「ラブ・チェイス」

2014/4/20「ラブ・チェイス」

◆天使と悪魔と男役

 私が「ラブ・チェイス」という作品を見ることにしたのは、ひとえにリカさん(宝塚歌劇団元月組トップスター紫吹淳)と水さん(同じく元雪組トップスター水夏希)のダブル主演を見るためである。二人共宝塚時代は本当に華やかでカッコいいスターであった。宝塚時代はお二人とも組替え(異動)の常連だったが、見事にすれ違っている。私は二人が同じ舞台に出ているのをほとんど見たことがない。しかも、今回

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2014/4/18 雪組「心中・恋の大和路」

2014/4/18 雪組「心中・恋の大和路」

◆宝塚ファンなら一度は見ている名場面

 宝塚百周年を迎え、昨年来過去の名作を再演する試みが続いている。この「心中・恋の大和路」も何度も再演を重ねている作品だ。今回が初見の私でさえ、この芝居のラストシーンだけはTCAスペシャルの名場面再現コーナーで見たことがある。白装束をまとった忠兵衛(彩輝直)と梅川(映美くらら)が雪の中をお互いをいたわりながら歩き、最後に息絶える。ここで歌の名手が主題歌「この世

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