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何周年と謳われる所以"DESIGNART スツール60 90周年記念"

今年のDESIGNARTはほぼコロナ禍以前の人出に戻ったような気がする。
DESIGNARTは東京を舞台にデザイン、アート、インテリア、ファッションなど多彩なプレゼンテーションが繰り広げられる日本最大級のデザイン&アートフェスティバルだ。

Cassinaのレセプションは、パトリシア・ウルキオラ氏が来日することもあり、デザイナーやインテリア関係者800人ほどがショールームに集まった。ウルキオラさんは、もう巨匠の域にありながらも気さくでおしゃれだった。
その他表参道や外苑前エリアだけでもアルテック、アクタス、リッツウェルなど現代の時代背景や社会課題に向き合い、それぞれのクリエイティブな発想でガツっとアウトプットしたプロダクトが目を引いた。
さらには来年初上陸するという、デンマークの家具ブランドMUUTOのポップアップショップもあり、私の好きなデザイナーセシリエ・マンツのプロダクトもあり、充実のデザインウィークだった。
そして表参道の複合ビルGYREでHAY TOKYOが入る地階の一角では、アルヴァ・アアルトが手がけた代表作のひとつ、スツール60の90周年を記念して発売されるVILLIの展示と過去、現在、未来のプロダクトのあるべき姿についてのトークショーも行われた。

展示会の様子

ちなみに今年はアルヴァ・アアルトの生誕125周年。映画も公開もあり、最初の妻で仕事上のパートナーでもあったアイノ・アアルトとの手紙のやりとりが記された書簡集も刊行になり、アアルトに関するトークライブもあった。
こうして生誕とかプロダクトの何周年とか時間が経っても人々に多くの影響を与え、新た世代へと伝えていく意義があるとされるのは素晴らしいし、稀有なことだ。

そう長く作り続けられ、語り継がれる所以は何だろうか。


1.家具工業化の基盤L-レッグの誕生

展示の様子
スツール60の図面

1920年代フィンランドでも工業化の波が押し寄せ、アアルトは大量生産を可能とする合理的な家具部材のスタンダード化を目指し、国内の自然素材を使った曲げ木の技術「L-レッグ」を開発した。1933年特許取得後、初めてこの脚を使ったスツール60が誕生した。無垢材で直角に曲げる技術は、今は当たり前に見ているが、相当な苦労があっただろう。
この「L-レッグ」は後にテーブルや椅子など50を超えるプロダクトに使われている。

2.フィンランド資源の活用

展示の様子

今回アルテックとイアリアのデザインスタジオ、フォルマファンタズマ(formafantasma)は、フィンランドの木材を自然に近い状態で無駄なく大切に使うことを提唱した新たな木材選定基準を開発した。「VILLI」はフィンランド語で「野生」や「自然そのままの状態」を意味する。スツール60 VILLIは、これからの100年、200年続くスツール60の新たなスタンダードになるだろう。

3.カラーもシーンに合わせて楽しめる

展示の様子

スツール60の魅力のひとつが豊富なカラーバリエーションだ。「パイミオモデル」は、アアルトが設計したパイミオにあるサナトリウムのこと。結核患者の療養施設である空間を患者にとって心地よく過ごしてもらうために、内装の各所にはポップで温かみのある配色がなされている。それらの色が座面や脚部に施されている。
ペトロール(グリーンとブルーが混ざった色)などはフィンランドの大自然に馴染み、私たちが北欧を想起しやすい色みでもある。
このスツールは、シンプルなデザインでありコンパクトなので、教室のような所であれば空間のベースとなるし、住宅でちょっとした予備椅子であればアクセントにもなる。
シーンに合わせて見えてくるカラーのボリュームやインテリアとのマッチングを楽しむことができる。


今あるデザインや音楽、建築家などが100年経った時にどれだけ生誕何年、と回顧され語り継がれていくのだろうか。


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