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Vol.09「ビートルズがパン投げてくるんだ」

Illustration&picture/text Shiratori Hiroki

 いつも目が覚めると思うことがいくつかある。例えば電柱の果てはどの向かっているんだろうとか、新しく替えたシーツの匂いとか、そういった取り止めのないことばかりが頭から浮かんできて、ゆっくりとぼんやりと形を変えて午後には忘れてしまう。そんな曖昧な記憶の断片みたいなものが、いくつかある。


 でも最近はいつも同じ夢を見ることが多くなった。カラカラとした砂漠のどこかに僕はいて、空から大砲が降ってきて、砂の上にドスンと落ちた。それはゆっくりと時間をかけて沈んでいった。空の見上げると太陽の位置がわからないくらいに晴れていて、眩しくて目を閉じていると体温が上がるのを感じる。夢の中では太陽に当てられた僕の影が時計の針のようにゆっくりの東に向かっている。妙にリアルな夢だった。すると、遠くからビートルズが「ペニー・レイン」を歌いながらこちらに近づいてくるのが聞こえる。パンを投げながら。だいたいにおいてここで夢から覚める。


 ほんとうはもう少し夢の続きかあるんだけど、記憶の断片みたいなものだから、これ以上はよく覚えていない。これは確かな夢の続きとして「ペニー・レイン」のトランペットがソロのところでビートルズが投げたパンから(確かアルコールの入ったクロワッサン)ひまわりのタネくらいの大きさのクルミが出てくる。それを拾ってポケットに入れてオアシスを探して砂漠をあてもなく歩く。 たぶんこの夢に実のところ続きなどない。実感というか典型的な夢のパターンのようなそんな気がしてる。もし続きが実際にあって結末があるのなら、知っておきたいと思うし、それが何年後かはわからないから形に残しておいた。夢の中でならビートルズに挨拶してみたいなと思っている。


INFORMATION

2001年生まれの巳年 

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