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Virtual State Of Mind ――バーチャルユーチューバーの想いⅡ にじさんじ6周年に向けての手紙


このnoteは、前のnote「Virtual State Of Mind ――バーチャルユーチューバーの想いⅠ すべてががれきになった後に」の続きですが、独立した文章として読めるようにしています。また一部、二次創作でR-18を描く作家さんの話を書きます。ご了承ください。



拝啓 
月ノ美兎さま

楽しく毎日を過ごされていますか。
おいしいごはんは、食べることができていますか。

デビュー6周年おめでとうございます。いつのまにかにじさんじという集団も大きくなって、最近ではGIGOとかバンダイのゲームセンターとか、デュエルマスターズのカードでもよく姿をお見かけします。

この文章を書こうと思ったのは、この半年ほどクリエイターの方やVtuberのファンの方と話して、固まってきた考えをお渡ししたいと思ったからです。
お願いのような形になりますので、これまで書いてきた文章より、なるべくわかりやすくしようと心がけてます(というか、これまで変な文章ばっか書いてすいません… オタクは恥ずかしがりやなのです)


1つ目 「クリエイターたちを弔ってほしい」

1つ目は「クリエイターたちを弔ってほしい」ということです。

剣持刀也の『虚空教典』によれば、Vtuberの歴史には4つの段階があったそうです。
①バーチャル紀元前(2017年11月ごろまで)
②バーチャル黎明期(2017年11月から2018年初頭・個人クリエイターの時代)
③バーチャル発展期(2018年前期・にじさんじの台頭)
④バーチャルタレント時代(2018年中期~ 収益化、Vtuberが仕事になる時代の到来)

だいたいこんな形になります。そして、剣持くんから見れば、2018年中期から、いくらコンテンツが増えても時代は変わっていないといいます。
彼がVtuberに魅了されたのは「文化の初期衝動」であり、おじさんが少女になって、あっくん大魔王くんみたいなよくわからん存在がいて、そういうカオスでどんな表現でも受け入れる魔界のような世界でした。
しかし、それを奪ってしまったのは、高頻度配信をメインコンテンツにしたにじさんじであるとも彼は言います。

私がここで話したいのは、バーチャルユーチューバーの栄枯盛衰ではありません。むしろ、『虚空教典』で剣持くんが書ききれなかったことについてです。
にじさんじができてから、クリエイターではなく長時間の配信が主になったと剣持くんは書きました。ただ、その一方でVtuberの発展に特別に関与していた、無視できないクリエイターたちがいます。それは二次創作者と、facerigやにじさんじアプリを作った技術者たちです。
バーチャルユーチューバーは、それまでの文化ではなかった芸人や音楽家とイラストレーターとの結びつきを作り出しました。人々が書くファンアートは愛の結晶です。それが気になってにじさんじを見始めた人も多いことでしょう。聞くところによると、Vtuberの世界ではよくママさんが書いた絵や技術者の作った3Dを「写真撮影」(空星きらめさんの例)という風に形容することもあるみたいです。
剣持くんの意味する「クリエイター」はどちらかというとYouTubeで人前に出て、怪しいところをガンガン見せる演者的な意味合いが強いと思います。ただ、にじさんじが発展してきたなかには、必ずしも外に出るのが得意ではなかったり、裏方として支えてきたような人たちが間違いなくいるはずです
実は、私の周りではすでににじさんじやホロライブの二次創作をしていたイラストレーターの方や、Vtuberを初期から見ていた方がすでに4人ほど、この世を去っています。ひとりは以前書いた焦茶さんです。
今回は違う一人を紹介します。

2022年に、イラストレーターの七Gさんが亡くなりました。
彼は元々どっちかというとえっちな方のイラストレーターの方で、pixivを見に行くと、もろに美兎さんのR-18な作品がでてきちゃったりします。

ご本人がなくなった理由については深くは触れません。それより、気になったのは、彼が生前にあまりTwitterでは発信していなかったものの、にじさんじを中心にライバーの絵をずーっと書いていたことです。
それも単推しではなく、みことさまとかしいしいとか、ほとんどにじさんじ全体を見ていたんじゃないかと思うくらいにじさんじのみんな、をです。
キャラクターの魅力は表情とか文脈に宿るといいますが、七Gさんの絵は、森中さんがくまさんを大事にしていたり、郡道美玲先生や未来人さん、夏色まつりさんが魔改造(?)されていたりしていて、間違いなく配信を丁寧に見ていないと、こういう絵を描けないだろうと思います。
彼ほど、にじさんじが好きだった絵描きさんはそういないと思います。

にじさんじのキャラクターたちの表情は、こうした絵師さんたちがひとつひとつそれこそ写真を撮るように思い出を継ぎ足してくれたものです。
だから、いつもじゃなくてもいいから、この方たちの絵を見て少しだけ、思い出してあげてほしいのです。6年たてばこの世からいなくなる人も、出てくるから。
Vtuberが絵描きさんにとって素敵なのは、絵を渡す相手がいるということです。Vtuberには転生や卒業があり得ても、基本的には絵描きさんにはありません。だから、覚えていてあげてほしいのです。

人間は死ぬときはひとりです。
ただ、その最期に少しぐらい花束が手向けられていい。


2つ目 Vtuberたちの行く先

そしてもうひとつ・・・
ここからは少しだけネガティヴなことを書いてしまうかもしれません。

去年はVtuberの中でも、これまで
KMNZのLIZさん、BOOGEY VOXX(解散)、ミライアカリさん、キズナアイさん、キズナアイさん、にじさんじなら郡道美玲先生、相羽ういはさん、安土桃さん、勇気ちひろさん、NIJISANJI EN…とVtuberの世界を去る人がいました。
さらに舞元や緑仙が休んでいくのを見た時に、結構私も参ってしまった時期がありました。私の周りにはVtuberファンの方たちがいるのですが、Vtuberの場合はアーカイブごと消してしまう場合も少なくないため、単にアイドルの卒業のようにとらえられず潰れてしまうファンの方も見ました。
そのあたり(特に今年の1月頭)で、結構私もファンの人たちに巻き込まれて参ってしまってました。

6年が経ってえにからも上場企業になって。
ライバーの方たちも誹謗中傷の事や、コメントとの付き合い方、採算のこと、再生数のこと、新しいプロとの出会い色んな私たち一ファンには見えないものに巻き込まれて、てんてこ舞いじゃないかなと推察します。
それでつぶれたライバーさんも見てきました。

その中で、少なくないライバーがやりたいことを選んで卒業を選んだ時に、活動している人みんなが「Vtuber」である意味を問われる時期が来たのかなと感じていました。XでもVtuberの概念について、いまもひっきりなしに議論がばずったりしています。

誰も確定した答えは持ってないと思います。
でも私個人としてはその話の中に、本人たちであるところのVtuber達がいなかった。

Vtuberはそれぞれの人がそれぞれにやりたい形があってやっていいものだと思います。しかし、今の時代、ファンは数字が取れなければ自分の推しがいなくなる恐怖があって、その恐怖を隠そうとして色んなことを言ってしまうこともある。


Official髭男dismが売れる直前、『異端なスター』という曲を出しました。この曲はボーカルの藤原さんが、「なんで歌うの?楽器だけやればいいのに」と言われたのがきっかけで作った曲です。
この曲で藤原さんは、非難の声を恐れすぎて、自分らしさを見失った人に対して、「炎上ばっかりするスターになることを恐れるな」と、おびえた人たちを応援する曲です。
実はOfficial髭男dismは、メジャーで人気になってからも『SOULSOUP』、『TATOO』『Laughter』という曲で繰り返し「人の制止を振り切ってでも、非難の声を受けてでもやりたいことを貫くこと」の大事さを歌い続けています。

「とがったことをしろ」とは思いません。ただ、もしも自分の心の中から、どうしてもやりたいことが――それがVtuberの範囲であっても、そうでなくても――突き抜けてしまっていいのだと思います。それくらい、にじさんじの子たちはこれまで周りの人の事を思い、大事にしてきました。その殻は突き破ってもいいと、思います。

(私の個人的な欲望丸出しだと美兎さんの映画がどうしてもみたいのですが・・・それはわがままでしょう)

このnoteを書いたのは、美兎さんが6周年配信でのある言葉を聞いたからでした。たぶんそちらからは、普通にぽろっとこぼした言葉だと思います。
ただ、こんなに普通に人を信頼できる人がいる場所を見れていることは、有難いことだと感じます。

同じ時代に生まれ、美兎委員長やにじさんじの子たちが活躍する様子を見れたことを、感謝します。
これから、どんな姿かたちで、どんな場所ににじさんじの皆さんが行くことになろうとも、静かに応援し続けます。


敬具


Vtuberに関する情報の一部は、特に風とバーチャル編集部『風とバーチャル 第一集』を参考にしています。この同人誌の編集者だった大森弘昭さんは昨年末若くして亡くなられました。
彼はクラブをはじめ数々のサブカルチャーを裏で支えてきた功労者だったと言います。彼がジャーナリストとして最後に見守ったのは、バーチャルユーチューバーでした。改めて故人のご冥福をお祈りいたします。


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