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白上フブキの献身 ーーいまも続く海外への小さな発信 (月ノ美兎さんとにじさんじへの考察を添えて)


はじめに

この記事は、これから書こうと思っている海外とにじさんじの関係性を探る記事の前哨戦である。(ホロライブについて記事を書いてなかったのは、ホロライブが嫌いとかではなく、単純に追う体力がなかった…)

2020年、ホロライブはHololive ENや桐生ココさん、赤井はあとさんの躍進によって爆発的な成長を遂げた。中国との難しい問題や、怪しいタグの濫用などはあったが、それはベンチャー企業らしい思い切り、と取ることもできる。

しかし、私はホロライブの海外進出の成功は単に「かわいい女の子が世界で人気だったんだよ!萌えは世界を救うんだよ!」だけでは語れないと思う。そこには、決して英語のうまくない、でも頑張り屋のキツネの献身があった。今回はそういう記事である。

(注・ホロライブは一時期の著作権問題・センシティヴ問題により、動画が消えているものが多いです。そのため完璧な歴史にはなり得ないことをお許しください)

Scatmanのバズり

(この記事を書いている途中、なんと本家の白上scatmanが消えてしまったので、一旦こちらを貼ります。たしか白上さんは「ネコ」と呼ばれるのを嫌がっていたので、皆様お気を付けください…)

実はホロライブが英語圏に人気が出た最初の最初は、赤井はあとさん(当時オーストラリア留学中)と白上フブキさんの存在が大きかった。

2019年10月、アメリカのユーロビート界に革命を起こしたscatmanのカバーを投稿し、それが爆発的なバズを生むことになった。これが恐らくホロライブがはっきり世界に認知される契機となる(最後見た時に再生数は200万程度)。その直後に桐生ココさんの登場により、「Vtuberといえばホロライブ」という世界的認識が広がっていくことになる。


止まらなかった白上の発信 ーー海外のすこん部へ向けて

ENや桐生ココさんの活躍の中でも、白上さんは海外のファンへの呼びかけを止めなかった。最近は若干減り気味ではあるが、英語だけで話す生放送やタイトルに英語を入れる工夫を続けている。

ここでポイントは、彼女が一発のウケ狙いではなく、主にアメリカの文化・文脈を大切にしたうえでネタを狙いに行っていることである。

この曲は向こうの映画とか見てないと出てこないっすよ…

(追記)

ニコニコ動画のMADが元ネタと情報提供いただきました。こういう洋楽元ネタのMADも妙に多かったですよね…(懐古)

同時視聴の動画も、主に洋画が多い(実は自分の知識の一番薄いところなので深くはつっこめない…)。この形式ならば、日本のファンも海外のファンも同時に楽しむことが可能になる。

白上さんはかならずしも英語を流暢にしゃべることができるわけでもない。しかし、日本・海外問わずありとあらゆるmemeを駆使し、懸命にコミュニケーションを取ろうと努力し続けてきた。

UUUMの記事によると、最近では単純な動画再生数だけではなく、「いくらファンがそのクリエイターにコミットしてくれるか」も重要な指標になっているという。目先の数字や目標だけにこだわらず、丹念に努力を続けることも、こうして海外のファンの信頼となって、ホロライブの繁栄を築く礎になっていると私は考えている。

NHK副音声収録の楽屋で…

(清楚だと思ったらこれだよ!)

日本のにじさんじはひきこもりでいいのだろうか…? ーー「面白ければいい」の功罪 

届木 僕も海外に向けて表現していきたいです。僕も委員長も、言葉で勝負するタイプで、アイちゃんのようなリアクション芸は苦手なわけだけど、言葉に頼りすぎるとどうしてもドメスティックなものになってしまう。僕らの場合、視聴者はほぼ日本の方でしょう。そこをうまく海外向けに、言葉が伝わらない人にも届けたいなとは思う。                               月ノ わたくしの場合、海外ウケは端から諦めていますね(笑)。自分好みの作品がそもそも海外ウケしないものばかりなので…。いまはボーカロイドなどがかなり海外に行っている気がしますけど、わたくしは本来メジャーコンテンツにはなれない、むしろいまの状態がおかしいと思っているんです。       届木 自分はもっと水面下の人間であるはずだ、ということ?               月ノ そうですね。これはバンドのたまの石川浩司さんが自叙伝で書いていたことで、たまって要するにバズりだったわけですよね。「さよなら人類」一曲がバズって、その時代で言うとそれはつまりテレビにたくさん出るということだったと思うんですけど、たまは当時からバズりに疲弊して、一過性の人気に流されずにちゃんと自分でいようとみんなで言っていたらしいんです。実際ブームが終わったあともすごく精力的にライブ活動をしていたり、みんなのところでCMソングを歌ったりしていたんですよね。それまでわたくしは大衆に認知されることがいいことだと言っていたので、その自叙伝を読んだときはかなり衝撃で、でもそれをいまは自分も実感しているので……。             届木ウカ×月ノ美兎「委員長は美少年の夢を見るか?」『ユリイカ2018年7月 特集=バーチャルYouTuber』

これは三年前のインタビュー記事であり、とても今の委員長の考えと同じとは考えにくい。ただ、この文章から考えるべきことは多い。

実は、にじさんじ側の動画色々探っていた時に、日本のにじさんじの中に白上フブキさんほど長期間、英語圏の人に語りかけることを続けていたライバーがほとんどいないことに気づいた。(トリリンガルでKRと絡みの多い西園チグサさん、「正直英語を話すのは緊張する」としながら最近完全英語の動画を出した星川サラさんが例外的存在になるが、期間は圧倒的差がある)

100人いて、バラバラの興味もあって、英語が話せる人もいるのにである。やはり、英語で会話しにいくのはかなり緊張感があるのだろうか。考えるべき事項が多すぎて悩ましい問題である。今年のにじFes.内にて田角社長は「海外事業の展開」を目標に掲げた。しかし、さっそくNIJISANJI INが一時活動休止するなど、未だ海外の現地Vtuberたちほどの存在感は出ていない。これはよく頭を振り絞るときなのだろう。

冒頭の引用、月ノさんは「自分の好きな作品は海外ウケしない」と言っていた。ウケという言い方は、Vtuberへの興味の持たれ方がまだ新奇なもの、変な奴がいるなという扱いだったためである。ただ、三年経ち興味も変わっているだろうし、海外には根強いアニメファンがいる。なによりLainは明らかに海外でこそカルトな人気のある作品である。もしも何か他の国の人にも突き刺さる映像を作ることが出来れば、面白いことが起こせそうな気配はある。なんせ、にじさんじの人たちは本物のLainみたいなものだからだ。

(king gnuの常田さん率いるバンドは、攻殻機動隊の音楽を担当することに)

映画監督のポン・ジュノさんは『個人的なことは最もクリエイティヴなこと』であるとアカデミー賞受賞スピーチで述べた。この言葉ほどにじさんじライバー、そして月ノ美兎さんらしい言葉はない。月ノさんは「ひきこもり」であることを大事にする人でもある。

一方で、作品は受け取り手がいないと作品として成立しない面がある。そして経営目線で考えると、海外に進出できないのはこの不況時につらい部分があるだろう。そして何より、月ノさんの周りには三年前と違って、見えにくいけれども海外の「みんな」がいる。


果たしてこの海外旅行もしにくい時に、「海外進出」はどのように行うべきなのか。これについては、正直かなり時間がかかるだろうが、リアルでも必要になってきたため文章を少しずつ書き溜めている(まとまる気がしないけど)。海外進出は「自分」を見失わせることになるのか、新しい「自分」への発見になるか。良きライバルであるホロライブの白上さんは、ひとつのロールモデルになるだろう。


おまけ 音楽の場合

①日本で活動を続けて、年月が経った後に発掘される

(人間椅子は、たまと近いサブカル枠に入れられやすかったことにも注目)


②ルー語で突っ切る/活動に海外的なものを取り入れる/アニメ・映画とタイアップなどする




③日本で一番有名になることで海外で有名になる



④ストレートに海外進出する


(ロケ地はオーストラリア・紅白で演奏された曲)


洋楽アーティストの日本好き

(Avril Lavigneはハローキティが好きすぎて、Hello Kittyという曲を作った)

(海外トップクラスのR&B歌手も、このPVのカラフルさにご満悦。でもウィリアムスさん、小さい女の子を追い回すPVで良かったのか…w)

村上さんのアート観。やはり日本人は慎重すぎると感じているようだ。サブカルについての話も深いので、是非。


補足

中国についてはどうタッチすべきか… これもまた課題です。そしてbilibiliの活動は皆さんどうされてるんだろう…







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