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赤ちゃんの言葉の勉強、おもちゃの名前の方が覚えやすい?

大学の専攻が心理学なため、三年目には昔から興味のあった小児心理のコースをとりました。

心理学ときいて、「無駄な学問」だと言われがちですが、100年足らずの歴史しかない分野とはいえ行動心理から脳の働きまで学ぶのが心理学です。その中でも、小児心理という分野はさまざまな偏見がありますが、何も優秀な人間を育てるための知識を得るための学問ではないです笑。

実際には、
母親の顔はなぜ父親よりも早く覚えられるのか。
子供の感情はいつから育ち、嫉妬や怒りを学ぶのか。
人格が出来上がるのはいつからなのか。etc…

といったような内容を学びます。
その中で最も私の中で興味を持つことになったのが、赤ちゃんはいつから言語を学び、そしてどうやって学ぶのかでした。

実は赤ちゃんは18週間頃から聴覚を持ち、生まれてくる時には大人と同じくらいの聴覚を持って生まれます。

生まれる前からさまざまな音を聞いて生まれてくる赤ちゃんですが、どうやって彼らは自分の母国語を判断できるのでしょうか。

とある実験で、さまざまな言語の音源を流し、それを聞かされている赤ん坊の注意力を測ることでいつから母国語を理解しているのか調べた研究があります。すると、母国語の音にのみ反応し、他の言語には反応しないようになる年齢がおよそ6ヶ月の赤ちゃんでした。

では彼らはどういったきっかけから”言葉”を理解するようになるのか?

さて、前置きが長くなりましたが、本題です。
「赤ちゃんはどういった経験から、言葉を理解できるようになるのでしょうか?」

赤ん坊はまず物に触れ、観察したり、母親がそれを使い何をするのかといったところから視覚的に物の認識を始めます。そこから母親が使っている物を認識しながら頻繁に出てくる音を学びます。

それから赤ん坊はまず言葉を発する練習を行います。Protophonesといって、日本語では原音といわれる「ばぁ」「だっ」といった発声が行われます。そして、その発声を繰り返すことで言葉を口にすることができるようになります。

ではそれはどんな時か?

石や、羽、棒切れといった自然物を提示されるとprotophonesが出ることが少なく、代わりにおもちゃ、コップ、靴といった人工物に反応することが多かったようです。この研究でわかるのが人工物を見せられたほうが言葉の発声をする機会が増え、早く言葉が喋れるようになることがわかります。

これにはいくつかの理由が考察されました。まず、なぜ人工物を提示された方が原音が口から出る回数が増えるのか。例えばおもちゃの場合、子供の注意を引き、興味を引き起こすように設計されています。そして、自然物を提示された時にはそれよりも、提示している親の顔を見ることが増えて、それをどう扱うのか注視していたということがわかりました。よって、赤ん坊は親と対話をするとき、視界の中に人工物があることで言葉を学ぶ頻度は高くなり、言葉理解を早め、喋れるようになるということです。

簡単にまとめると、おもちゃや視覚的な刺激がたくさんある環境でそれを使ったコミュニケーションをすることで早く喋れるようになります。

喋れるようになるまで言葉を理解し、学ぶプロセスが重要です。そして何より、聴覚が新しい言語を学ぶ上で深く関連性があります。

英語を勉強しなおしたい。
色んな言語を話せるようになりたい。
そういった方はまずは新しい言語を”聞く練習"から始めるといいかもしれませんね。

というわけで今回は少し難しい内容になってしまいましたが、
この記事を締めたいと思います。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


参考文献:

元論文:
Violet Gibson, Eszter Somogyi, Iris Nomikou, Derry Taylor, Beatriz López, Innocent Chitalu Mulenga, Marina Davila-Ross. Preverbal infants produce more protophones with artificial objects compared to natural objects. Scientific Reports, 2023; 13 (1) DOI: 10.1038/s41598-023-36734-9

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