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道楽 —地獄—


 この作品(『道楽 —地獄—』)は、私が初めて完成させた小説です。表紙を作り直してみたので、本編プロローグの一部を抜粋してこの記事に再掲しようと思います。

 僕の原点になっている作品ですので、もしよろしければ読んでいってやってください。僕の全部が詰まっています。




 

プロローグ


 癒えることのない傷が、胸の中に残っている。

 突然現れては消える渦潮のように、私の胸に黒い渦が巻き起こっては、私の心身をかき乱して去っていく。

 一度飲み込まれてしまうとどこへ連れていかれるか分からない渦潮ような——そんな黒い渦。

 私がどうなるのかなんて知らずに、そいつは私を中枢部分から粉々に破壊していく。

『痛み』というものは、一生自分の中に残っていく。

 どうにかして自分の中に巣食っている痛みを振り払おうとしても、痛みが自分の中から消えることはない。

 むしろ、振り払おうとすればするほど、自分の傷をどんどん抉っていくことになる。

 痛みは、癒すのではなく、自分の中に取り込んで、それを踏み台として成長していくためにある。もし、痛みが無くなることがあるのだとすれば、それは自分が一回り成長した証だろう。

 私はまだ、未熟なのかもしれない。

 私はずっと、この痛みを胸の真ん中に抱えたまま生きている。

 私の祖母は、「全ての痛みは成長痛なのだ」と言った。「痛みが人の美しさを作り上げている」と、幼い私に言ったのだ。

 本当にそうだろうか。
 私はずっと、考えている。

 何のために悲しい思いをしなければならないのか、何のために、傷つかなければならないのか——私には分からない。

 頭がジリジリと痛む。
 気圧のせいだろうか。

「そういえば、どうして気圧の影響で頭が痛くなるんだっけ」と思ったけれど、考えようとして止めた。面倒くさい。

 そんなことを考えてもこの痛みは引かない。

 窓の外から見える景色は、まるで世界の終わりが近づいてきているような、そういう不気味な雰囲気をまとっていた。



………….本編へと続く。



新表紙





制作過程&内容について


※若干ネタバレがあるかもしれません。


 この小説は、私が一年前に、初めて完成させたものになります。

 丁度二年前に物書きを始めて、簡単な日常のエッセイを書いてみるところから始まり、短い小説や少しテーマが深まった哲学的エッセイなど、少しずつ作品の幅を広げていた頃のことでした。

 この作品の特徴は『小説の中に、丸々大きな小説が一つ入っていること』です。かつて画家として生活していた人間が、若き日に作家生活の苦悩と家族を失う絶望に瀕し、死ぬ寸前までいくのですが、そこで『ただで死んじゃあ、気が済まない』と、遺書的に書いた文章『道楽—地獄—』を基に、その後小説を書きます。

 それを、その後一生のバイブルとして持ち歩き、50代に入って人生も後半戦に差し掛かってきた主人公が、自身のバイブルをもう一度読み返すというものです。

 私自身が近年二度経験した、大きな挫折の渦の中にいるときに、そこから抜け出すために書いたものになります。

 私のための作品、個人的な小説といえます。

 無理やりポジティブなことを書こうともせず、かといって変に悲観もせず、正直に思っていることを書きました。きっと、今後一生私はこの作品を読み返すことになります。

 あなたにも、もしかしたら響くものがあるかもしれません。

 使い捨ての文章じゃ意味がないから。バイブルになるようなものでなければ、私は書かないと決めています。文章は拙かったとしても、書くなら、一生残るものにする。

 作家を続けていきたいなら、言葉にそれぐらいのコダワリを持っていたい。

 これからも書き続け、いろんな作品を生み出すことになると思いますが、私の原点はこの作品になります。きっと、あなたにとっても、バイブルになってくれるはずです。



『道楽—地獄—』全編の目次

 
プロローグ
 
 道楽 —地獄—

 《はしがき》
  影の正体
  悪夢
 【地獄門】
  不思議な女の子
  絵の世界へ
 【地獄炎】
  現実世界
  希望の光
  不思議な男——『愛』と『生きる』——
  長い人生
 【地獄の底】
  不思議な夢
  どっちが地獄か
 【道楽—地獄—】
  『遺書』
   はしがき
   絶望論
   諸刃の剣——知恵を持つこと
   幸福論
   仕事論
   堕落論
   生物学的孤独論
   道楽論
   理想郷
   究極——楽天論
   あとがき
 《あとがき》
 
エピローグ


 
 本編全体としては7万2,000字程度になっています。丁度、中編小説と長編小説の境目位の長さの小説です。どちらかというと中編小説に当たると思います。読み切るのに、そこまで膨大な時間はかかりません。

 以下からプロローグ全編読むことが出来るので、是非。

 ※この記事の冒頭にあるものは、『道楽—地獄—』のプロローグの一部になります。



プロローグ全編を載せた記事へのリンク



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