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他人のちょっとした行動を変えるのも「超」がつくほど難しいという現実

私のように企業向けの人材育成を生業としているコンサルタントにとって仕事の目的は「人の行動変容」であり、お客様も自社の社員の行動が変わることを期待して私どもに社員研修を依頼します。

そうなると研修を提供する側にとっては「この研修を受講すれば行動は変わります!」と言いたくなりますが、残念ながら研修を受けたぐらいでは行動は殆ど変わらないのが現実です。

例えばAIを搭載したロボットが問題行動を取った場合はプログラムを修正すれば行動を修正することは可能ですが、人間はロボットじゃないのでそんな簡単には行きません。

人間の行動を変えることがどれぐらい難しいかと言いますと、1秒ぐらいで済むような簡単な行動ですら変わらないというのが私の経験です。

例えば、職場の上司が部下から話しかけられてもパソコンの画面を見たままで部下のほうを向かないということがあり、そのせいで部下が上司に話しづらくなっているという問題があったとします。

この場合、上司の方には「部下から話しかけられたらちゃんと相手のほうを向く」という極めて簡単な行動を取っていただくだけなんですが、この簡単な行動を取らせるためには相当工夫が必要です。

少なくとも研修で「部下から話しかけられたらちゃんと相手のほうを向きましょう」と伝えただけではほとんどの人は行動が変わりません。

仮に研修の場でもう少し踏み込んで「部下のほうを向かない上司は信頼されなくなりますよ!」と言ったところで結果はほぼ同じです。

この場合、本気で上司の行動を変えようと思ったら少なくとも次のようなことが必要です。

  • 上司自身に普段自分が部下に対してどのような態度を取っているのか自覚していただく

  • 自分が部下に取っている態度は自分としては理想的な態度ではないと思っていただく

  • 自分がついそのような態度を取ってしまう原因を自分の中に見つける

  • 自分自身の行動を変えたいという動機を持たせる

  • 自分自身の行動を変えられるという実感を持たせる

上記のことを様々な仕掛けを通じて研修の受講者に伝えていきますが、私の経験上、ここまでやってようやく2~3割ぐらいの人が変わります。

「その程度しか行動が変わらないのか」とガッカリされるかもしれませんが、人の行動を変えるのはそれほど難しいことですので、そこをご理解いただいたうえで、お客様のご期待をきちんとすり合わせることが私どもにとって必要な態度であると考えています。

そんなわけで、コンサルタントの仕事を通じて実際に人の行動を変えることが如何に難しいことか思い知らされたので、他人の問題行動には少しずつ寛容になれた気がします。

人間そんなに簡単に行動を変えられないので、大目に見たほうが互いに幸せかもしれません。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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