Rei Matsumoto

にほんごボックスという会社の代表をしている日本語教師です。 主にかつてfacebook…

Rei Matsumoto

にほんごボックスという会社の代表をしている日本語教師です。 主にかつてfacebookに書いていた読書感想文の引っ越し先ですが、まれに日本語教育に関することも備忘録的に書きます。 基本的にただ書いたものをおいておくだけの場所ですが、見てもらえてると意外に喜びます。

最近の記事

企業側の言う「会話能力」は、日本語教師の考えるそれと同じではない

うちの会社が契約して日本語を教えにいっている企業の方や、知り合いの組合の方と話をする機会をもった今週、改めて思ったことは認識のずれを埋めていく作業が難しいということだ。 特に気になったことは、企業側の言う「会話頑張れ」というのが「ペラペラ話せるようになれ」という意味ではないということだった。 学習者は「会話頑張れ」と言われて、「とにかく話す練習をしないと!」と思う。 そして教師側も、自分の考えが表現できるようになることを目標として授業を進めていく。 しかし、「日本語が上

    • 【映画感想文】『ライフイズビューティフル』 監督・脚本 ロベルト・ベニーニ

      この映画を見るのは2回目だ。 1回目に見たのは、あまり映画が好きではなくテレビも含めて1年に1回も見ないのが普通で、見たとしても(何がいいのかわからん…)と思うばかりであった約20年前のことだ。 なぜ見たのかというと、1999年に『日経エンタテインメント!』で連載が始まった松本人志の『シネマ坊主』で絶賛されていたからだ。 「そんなにいいと言うなら見てみよう。映画もいいものだと思えるようになるかもしれない。」 そんなことを考えながら見てみた。 が、ダメだった。 いつどう

      • 【読書感想文】技術評論社『上手な教え方の教科書 入門インストラクショナルデザイン』向後千春

        「はじめに」を読んだ時点ですぐに思ったのは、行動分析学なんだということ、方向性やその手法はどうあれ、既に自分で取り入れていたということだ。 子どもの自転車の練習はまさにこうしてデザインしながら付き合っていた。そしてそんな話を養成講座の授業でしてきていた。 これまでも講座の中でインストラクショナルデザインの話をしていたことになる。 なんとこの新書は本書の参考文献に入っていた。 教え手がリソースの一つであるということは塾講師をしていた時から強く感じていた。授業がうまければす

        • 【読書感想文】 集英社新書『行動分析学入門』杉山尚子

          まずこの点はこれから強く意識していきたい。 禁煙しようと思ってもたばこを吸ってしまう人は「意志が弱いから禁煙ができない」のではなく、「禁煙ができないから意志が弱いと言われてしまう」だけで、他の点では粘り強く物事ができたりする。 ただ一つの行動を取り上げてラベルを貼って「個人攻撃の罠」に陥らないようにしたい。ラベルは単なる行動の言い換えにすぎず、大事な物を見失わせる。 「罰によってコントロールするのではなく、好子によって制御される社会システム」というのは相当に難しいだろう

        企業側の言う「会話能力」は、日本語教師の考えるそれと同じではない

        • 【映画感想文】『ライフイズビューティフル』 監督・脚本 ロベルト・ベニーニ

        • 【読書感想文】技術評論社『上手な教え方の教科書 入門インストラクショナルデザイン』向後千春

        • 【読書感想文】 集英社新書『行動分析学入門』杉山尚子

          槇原敬之と『青い鳥』

          今年に入ってからフジファブリックの「若者のすべて」を槇原敬之がカバーしている動画をヘビロテで聞いていた。 そこからいくらか懐かしい曲も聞いていた。 そしてニュースを騒がせた後で、改めてかつてとにかく聞いて聞いて聞きまくった10枚ぐらいのアルバムの曲を聞き直した。 とにかくテレビとゲームと、そして音楽とともに過ごしていた子どもの頃を思い返す。 懐メロも洋楽もいろいろ聞いていたが、その中でもマッキーは大きな存在で、自分の青春を作った一人であるのは間違いなかった。 そして気が

          槇原敬之と『青い鳥』

          【読書感想文】新潮文庫 『青い鳥』 メーテルリンク(堀口大學訳)

          中高の頃は、小説など全く興味もなかったし、読んでもなんとも思わなかった。 ましてや童話を手に取るなど考えられないことだったが、変わるものだ。 結果的に2017年に読んだものだけでなく、今まで読んだすべての本の中でも一番にあげられるかもしれない、大きな存在の本になった。 これを読んだのは、三浦綾子の『光あるうちに』を読んだからであり、そのように出会わせてくださったことに、何としてもこたえていかなければならない。 いろいろなものを感じ取り、そこから想像を膨らませ自分の身の回り

          【読書感想文】新潮文庫 『青い鳥』 メーテルリンク(堀口大學訳)

          自称「クラッシェン派」の日本語教師

          2019年12月の初めにクラッシェンが日本に来て、講演を行った。情報を知ってシェアしていたら、養成講座で教えていた方が聞きに行っていた。 その話を聞いていて、前の日本語学校のときから自分なりに考えて変えていった教え方の方向性が、実はクラッシェンに近づいていたということがわかった。 こういう言い方(~派)をする日本語教師に会ったことはないが、これからは自称「クラッシェン派」の日本語教師としていこうかと思っている。 〈自分の考えていたこと〉 ・文型導入、語彙導入における例文作成

          自称「クラッシェン派」の日本語教師

          【感想文】TBSドラマ『カルテット』脚本坂本裕二

          ドラマの感想のかなりの部分を『塩狩峠』の感想文に書いているが、そこからもれた部分をこちらに書き残しておくことにする。 生まれて初めて第一話から見始めて、ハマって、次はまだかと楽しみにして見続けたドラマ。 最終話、最後の食事シーンでレモンをかけ始めた時に、「あ、これパセリだな」「こういう話が来るな」と思って、その通りの話が続いたことで、受け取り方は間違ってなかったのかなと思えた。 前回のノート『塩狩峠』と同じくセリフを引用しつつ振り返りたい。 「みんなのおもしろいところ

          【感想文】TBSドラマ『カルテット』脚本坂本裕二

          【読書感想文】新潮文庫『塩狩峠』三浦綾子 feat.カルテット

          「義人はいない ひとりもいない」 (ローマ人への手紙 3:10) おそらく世界中探しても他にしている人はいないだろうw TBSドラマ『カルテット 』のセリフを交えつつ、『塩狩峠 』を振り返る。 『カルテット』を見たことがない人はぜひ見てほしい。 (聖書は『塩狩峠』の本文中の訳ではなく新改訳聖書より引用している。) 「人間関係って、どれもズボン履いてるけどノーパンみたいなことじゃないですか。私はズボンを履いてれば、ノーパンでいいと思います。」(5話 来杉有朱) そう、義人

          【読書感想文】新潮文庫『塩狩峠』三浦綾子 feat.カルテット

          【読書感想文】ブルーバックス『科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで』三田一郎

          科学はどこまで進んでいるのか。インフレーション理論が証明されれば、それで本当に「宇宙のはじまりの次の瞬間」がわかるのだろうか。 自分が思っているのは、「私たちがはじまりの次の瞬間だと思っているそのごく短い時間が、実はそれほど短くなくて、その中で人間にとっては永遠とも呼べるような長い時間を必要とすることが起こっているのではないか」ということだ。 つまり、人はまた新たな無知を知るだろうという予想である。 科学と信仰は決して対立するものではない。 種々の事件から対立するもので

          【読書感想文】ブルーバックス『科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで』三田一郎

          【読書感想文】講談社『上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門』上馬キリスト教会

          「本当に読んでほしいところ」というのは、すなわち「なかなか読まれないところ」である。 そしてそれはつまり、「最初に興味をひかれるところ」ではないということでもある。 そういったことを伝えるためには、まず相手が知りたいと思っているニーズに応え、そこから興味をひいてハードルを下げていけばいい。「よく耳にするこのことは、実はこうなんです」というほうが、興味もひけるし思い違いをなくせる。実は伝えたいことを伝えるのには近道であると思う。 最初からすれ違いを続けてもしかたない。 浅い

          【読書感想文】講談社『上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門』上馬キリスト教会

          【読書感想文】二宮寿朗『鉄人の思考法 1980年生まれ、戦い続けるアスリート』集英社

          SMAPの『夜空ノムコウ』ほどエモい歌はないと最近思っている。 「あの頃」をいつと考えるのかによって、「あの頃の未来」も「僕ら」も思い浮かべるものが変わってくる。 5年前なのか、10年前なのか、20年前なのか、30年前なのか…。 同い年の彼らの当時を聞くと、どうしても「あの頃」の自分と比較をしてしまう。 そう、彼らが4年生だった時、自分も同じ4年生を過ごしていたのだ。「その頃」ではなく、同じ時代を生きた彼らと共通の話題となりうる「あの頃」なのだ。 だからこそ、その時その時の

          【読書感想文】二宮寿朗『鉄人の思考法 1980年生まれ、戦い続けるアスリート』集英社