【映画感想文】『ライフイズビューティフル』 監督・脚本 ロベルト・ベニーニ

この映画を見るのは2回目だ。

1回目に見たのは、あまり映画が好きではなくテレビも含めて1年に1回も見ないのが普通で、見たとしても(何がいいのかわからん…)と思うばかりであった約20年前のことだ。

なぜ見たのかというと、1999年に『日経エンタテインメント!』で連載が始まった松本人志の『シネマ坊主』で絶賛されていたからだ。

「そんなにいいと言うなら見てみよう。映画もいいものだと思えるようになるかもしれない。」

そんなことを考えながら見てみた。
が、ダメだった。
いつどうやって見たのか、さっぱり覚えていない。「きっとどこかでいいと思えるポイントがくるに違いない」と考えながら見ていたことだけ覚えている。
「松ちゃんがああ言うんだから面白いんだろう」と無理に思い込もうとしていただけだった。感動も何もなかった。

時は流れて2020年5月。
映画と同じく「何が面白いかわからん」と思っていた読書が楽しみながらできるようになり、「そんな時間があるなら他のことするわ」と思っていたドラマも続けて見れるようになった。

「今なら理解できるはずだ。」

そう思ってDVDを購入したのが一年前。
ようやく時間を作って見ることができた。

人生は美しい。

素晴らしいタイトルだと思う。
個人的には、最後のゴミ箱?の中から見つめるジョズエにグイドがウインクして行進するシーンは、この映画の中の最も美しいシーンだと思っている。

殺されて、なお人生は美しいと思えて、このタイトルが映画にぴったりだと思えるのは、ここまでの経験がなければ無理だったろう。

パーフェクトな人生とは何だろう。
一つの失敗もなく、一つの不幸もない人生はパーフェクトなんだろうか。
それはあり得ないということもあるが、たとえそうだったとしてそれがパーフェクトなんだろうか。
様々ないいこと悪いことがあって、それらが人生を彩るのだと思う。

今の自分にとってはあらゆるものが美しく見える。
身の回りにある何気ない風景が、すべてのものが美しく見えるのは、主の軌跡への感謝があるからだ。

体調は万全ではなく、昔のように思い通りに話せない、起きていられない、仕事ができないという日々が続いているのだが、それがあって今人生は楽しい。

かつての自分は、他の人に共感する力がなかった、その術を知らなった。

しかし、そこから20年、健康を失った代わりに、そうして人生を楽しむ力を手に入れた。
今になってやっと松ちゃんの言っていたことが理解できるようになった。
いい映画だった。

人生は美しい。

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