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桃から生まれた鬼太郎!?

――川で拾われるはずの桃が海まで流れて、長い時間漂い、鬼ヶ島に漂着し、鬼に拾われるところから物語が始まります。


人生は物語。
どうも横山黎です。

大学生作家として本を書いたり、本を届けたり、本を届けるためにイベントを開催したりしています。

最近は音声配信も始めました。毎週金曜日22:00から僕のお気に入りの本を紹介するライブ「FAVORITE!!」を開催しています。興味を持たれた方は是非遊びに来てください。



今回は「桃から生まれた鬼太郎⁉」というテーマで話していこうと思います。



📚『ももからうまれたおにたろう』

昨日、本屋さんに立ち寄る機会があり、ふらっと絵本コーナーに行ってみたら、思わず手に取ってしまう1冊を見つけました。お笑い芸人「見取り図」のリリーさんの処女作『ももからうまれたおにたろう』という絵本です。



見取り図のリリーさんが書かれたという点にも興味を惹かれたんですが、何よりも今の時代の「桃太郎」の絵本であることに大きく惹かれました。というのも、僕は大学の卒業論文を桃太郎にするくらいの桃太郎オタク。「桃太郎」を目にすれば反応してしまうのも仕方ありません。

僕がどうしてそこまで「桃太郎」にはまっているかというと、時代によって物語が変わってきた物語に面白みを感じているからです。

娯楽が栄えた江戸時代には、桃太郎のパロディが量産されました。アフターストーリーがつくられたり、柿太郎なんてものもつくられました。

富国挙兵という言葉の通り強い国造りが求められた明治時代には、たくましく勇ましい国の象徴として桃太郎が扱われました。戦争中の昭和初期、国民全員で一致団結して勝利するために、敵国を鬼ヶ島とし、敵を鬼とし、戦に挑む桃太郎が描かれました。

物語は時代を映す鏡とはよくいったもので、日本人なら誰もが知っているあの桃太郎ですら、分かりやすく変容を遂げているのです。

それでは、今の時代の桃太郎はどんな物語でしょうか。どんな人物がヒーローで、物語を通してどんなメッセージを伝えるのでしょうか。答えのかけらは、『ももからうまれたおにたろう』の中にありました。


📚血を超える絆の強さ

『ももからうまれたおにたろう』は、川で拾われるはずの桃が海まで流れて、長い時間漂い、鬼ヶ島に漂着し、鬼に拾われるところから物語が始まります。金棒で割ったところ、中から出てきたのは人間の子ども。

鬼は戸惑いましたが、放っておくわけにもいかず、その子どもを「おにたろう」として育てることにしました。そこから鬼とおにたろうは共に生きていったわけですが、ある日、桃太郎がやってきて、おにたろうを返せと言ってきます。

桃太郎いわくおにたろうは桃太郎の子どもなので、やっと本当の親が見つかったと鬼は安心し、惜しみながら送り出そうとします。しかし、おにたろうは鬼と共に生きることを選ぶという結末でした。


まさに現代の「桃太郎」だなと思います。

従来の鬼を退治する勧善懲悪の物語ではなくて、鬼と共生する物語である点がまずそうで、多様性やコミュニティに属する意義がうたわれる今の時代にふさわしいと考えます。

よく分からない、なんか怪しい、噂レベルの情報を鵜呑みにして、得体の知れない相手を排除するのではなくて、そんな相手にも寄り添い、対話し、認め合って、共に生きる道を選ぶべきですし、それが今の時代のヒーローといえるのではないでしょうか。

『ももからうまれたおにたろう』は英雄譚ではないけれど、物語のメッセージとして、寄り添うことの大切さ、偏った見方、考え方をする危険性、一緒に過ごすことで生まれる血を超える絆の強さなど、この令和の時代を生き抜く姿勢が描かれていました。

やっぱり、「共生」の物語が求められているんだと思います。


📚『桃太郎』の打ち合わせvol.2

僕は一年半前に自分でも『桃太郎』という作品をつくっていて、そこでも鬼と共に生きる物語を追求しました。で、今それを絵本にしようと考えていて、絵本をつくりたい知り合いがいたので一緒に共同創作することにしました。

実は、偶然にも昨日その打ち合わせがありました。打ち合わせの日に、『ももからうまれたおにたろう』を見つけるなんて、追い風が吹いているなあとにんまりしていました。

打ち合わせでは僕の相棒が描いてきてくれたいくつかの絵をもとに、思ったこと、感じたことを言語化しながら、イメージを膨らませていきました。ちょっとずつではありますが、これからも進めていこうと思います。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20230923 横山黎



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