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【鬱屈飯】#2 メンチカツ


うっくつ-めし【鬱屈飯】
意味: 素晴らしいご飯が精神状態により憂鬱になってしまった飯。「鬱屈飯を食べる」「鬱屈飯になる」

食とは見た目、匂い、音、触感、そして味と五感全てで楽しむ素晴らしい文化であるがガラスハートの著者はメンタル状態によってはその五感が全て0になる。そんな日々の鬱屈としてしまった飯の紹介をするメランコリー食ブログ


僕は浅草が好きだ。

レトロな文化がありつつも、すぐ近くには東京スカイツリーがあり浅草寺からでも見ることができる。

いい意味で情報過多な情景がたまらなく好きなんです。

左:東京スカイツリー 中央:アサヒビール本社 右:スーパードライホール

脳内ドーパミンがドバドバでる景色ですね。


春の日差しが心地よく、もうすぐ夏が顔を出しそうだな…なんてことを考えていた4月

たまたま予定が空き次の予定まで時間ができたので浅草散歩でもしようかと意気揚々の僕

下町の雰囲気、外国人観光客の多さにホクホクしながら

少し小腹が空いているのを感じた。

(ひさびさにあのメンチカツでも食うか…)

浅草メンチのメンチカツ…有名ですよね


衣の存在感もきちんとあり、サクッほろっといったようにジューシーな中身が口いっぱいに広がるあのメンチです。

いつもは列ができているのですがその日は3名ほどがならんでいるだけ

こんなにも運のいい日はあるものだろうか


さっと並び、待っていると揚げるのに少しお時間かかるというアナウンスが

いつもなら鬱屈飯になりえるところだが今日の僕は違う

(揚げたてが食べられるじゃないか…)

僕の後ろに体格のいい外国人観光客が並ぶ

4月なのに半袖をきている丸太のような腕には入れ墨が見え隠れしている


日本にいると入れ墨のイメージは怖いというイメージはあるが外国だとファッションなんだよな…

そんなことを考えつつ、僕の頭の中はメンチでいっぱいになっていた

(缶ビールでも買っちまうかあ?)

後ろでわいわい異国語で盛り上がる外国人のことなど完全に頭からなくなったその時

脳天に衝撃が走った


真後ろの外国人が大きなジェスチャーをした瞬間に肘が僕の脳天にふりそそいだのだ


身長が10cmは縮んだのではないかと思うほどの衝撃

外国人は

わーお だの ソーリーだの言っているが

人に迷惑をかけたなら ごめんなさい だろ…と思いつつも

「大丈夫です…」

と言ってそそくさとメンチを買って移動した。


もう既に鬱屈飯になりかけているが、今日の僕は違う

天気もいい、好きな浅草、そして揚げたてのメンチカツ

嬉しいことのストレートフラッシュで脳天の痛みを無理やり忘れメンチを食べることにした。


食べる場所を探していると、簡易的に座れそうな場所があった

石でできた椅子 下もきれいな石畳のようなもので浅草の雰囲気を十二分に味わうことができる。


(ここしかねえなあ?)

そこにふっと腰を落ち着け

メンチを食べていると急に声をかけられた


「すみません…こちらお店の椅子なので持ち込みはご遠慮ください。」


完全にお店の前だった


メンチに気をとられ、かつお店もあいているのか閉まっているのかわからないような雰囲気 しかしきちんと見れば営業中だ…

「ふっふみまへん!」

口いっぱいにメンチをほおばっている僕は謎の謝罪でその場を立ち去ろうとする

しかしその瞬間にきれいな石畳に落ちる メンチの衣!!!!

僕の服にでもひっかかっていたであろうメンチの衣は一斉に石畳に逃げ出した。

広がる衣、見つめる僕と店員さん


へへへ と愛想笑いをしながら

メンチの衣を拾いながらズボンのポッケにしまいだす僕


いたたまれない店員さんはお店の中に消えていく


となると【一人で落ちた衣をポッケにしまう妖怪】が完成する。


目に見える限りの衣を拾い集め、その場を立ち去り

歩きながら冷えたメンチを食べるが

まったく味がしない。

浅草寺の広場のゴミ箱にメンチのゴミとポッケに入った衣を捨て

人形のような顔で電車に乗りました。


皆さんは美味しく召し上がれるメンチとその環境で食事を楽しんでくださいね。

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